1-11 あるギルド長の、華麗なる脱出劇?
‥‥‥辺境の地にあるこの街、エルモスタウン。
そこに配置されたギルドを収めるわたし、ギルド長のゴラムリアは今、脱走の時をうかがっていた。
長年ギルド長として働いてきているからこそ、感じ取る冒険者関連から来るすっごい面倒そうな予感。
このままいれば確実に巻き添えになるのが目に見えており、そしてその原因として自分が関わっていることもよく理解しており、いなくなったほうが良いと判断をする。
「だからこそ、今度はベギドラムかボルドロの方にできた迷宮へ視察目的で逃れたいのだが、駄目だろうか?」
「駄目です、ギルド長。あなたが逃亡をしようとする時は大抵、とんでもないことが起こるのは皆理解していますからね。しかも、このパターンはギルド長が確実にやらかした時のものです」
「いやいや、そんな分析されてもなぁ。見逃してくれないかなぁミリアム君。そのお堅い性格のせいで、まだまだ独し、」
ドシュン!!
「‥‥‥‥誰のせいで、お堅くなったと思いますかね」
一瞬、何かが物凄い速度で横切り、壁に突き刺さった。
見れば、ちょうど近くにあった羽ペンが焦げている状態でびぃぃんっと突き刺さっている。
うわぁ、羽ペンってあんな簡単に刺さるんだぁ…‥‥からかうのは怖いけど、これはこれでぞくぞくとするからやめられないよね。
「まぁまぁ落ち着いて。今はまだ朝早いから、そんなに人も来ないよね。だったら今自分がいても意味がないだろう?かるーく遊びに行くだけでいいんだよ」
「駄目といったら駄目です。ああ、ここで力ずくで訴えても意味を成しませんよ。万が一に備え、ギルド長の捕縛が可能な職員たちが配備されており、アリの子一匹に逃げられないようにしてますからね」
「準備周到すぎないかなぁ!?」
ちっ、ここまで徹底的に固めているとは、どうやら相当お怒りのようだ。この副ギルド長は。
でもまぁ、それでもこの空気の中で逃げ出す隙は作りだせるはずだろう…‥‥やって来る嫌な予感というのは、逆に言えば逃げるための良い目くらましの機会に変えることが出来るからね。
ひしひしと勘が警報を鳴らし、その時が来ることを理解する。
早朝、こんな時間に空いたギルドに人はそう来ないだろうと油断している職員は多いだろうが、だからこそ来たら確実に隙が出来るだろう。
ーーーうわぁぁ!なんだあれ?
何かきたぞーーーー
「おや?何か騒がしいような‥‥‥」
待っていると、ギルドの外の方で何か騒ぐような声が聞こえてきて、ミリアム君の気が一瞬向く。
そう、この時こそが待ちわびていた一番の脱出の機会だ。
「はははははは!!油断したねミリアム君、さらばだぁぁぁぁぁ!!」
「っ、ああああああ!?」
だぁぁんっと無理やり身体能力を生かした蹴りで勢いをつけ、扉をぶっ飛ばして廊下へ躍り出る。
そのまますぐさま壁を蹴り上げて跳ね飛び、適当に近くにあったギルドの窓からぽぉぉんっと大空へ舞う。
これこそ、華麗なる脱出劇!!かつてウルトラスライムと激闘する中で体の動きを真似て作り上げた反発脱出方法!!
誰にもこのわたしの足を止めることはできず、大空を羽ばたくような小鳥のごとく、自由の翼を得て今この大空へわたし自身の体がはばた、
シュルルルルルルギュゥ!!
「ほへん?」
何かが足に絡みつき、びしっと空中で動きが止められる。
ほんのわずかな膠着時間だが、何事かと思い足元を見れば糸が巻き付いており、その糸の先を見ると‥‥‥蜘蛛の頭に腰を掛けているような美しい女性の姿を目にした。
それと同時に、何事かという事も瞬時に理解できたが、時すでに遅かったようだ。
ひゅるるる、ぐいっ!
【シュル!!】
地面に弾きつけられようとしたとき、糸を惹かれて手繰り寄せられる。
このまま彼女の胸元に引き寄せられるのかと思ったが、どうも違う方向へ寄せられているようだ。
その先を見れば、そこにはいつの間にか先まわりをしていたミリアム君が受け止める体制になっており、鬼の形相で立っていた。
「ふふふふ、さぁ、いらっしゃいギルド長ぉぉぉぉ!!
「ぎ、ぎゃぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああ!!」
「‥‥‥ハクロ、よく瞬時にあの人を目にして、糸を投げつけて捕縛出来たね」
【シュルル、シュルルル】
「え?昨日の捕縛劇で、捕まえたほうがいい人ってすぐに判断したから、捕まえたの?」
そんな会話が聞こえてきたが、どうやら捕縛劇が思わぬ方向で影響したようであった…‥‥がふっ。
華麗に逃げるつもりが、失敗したらしい。
彼女によって、あれは逃がして駄目なものだと認識されていたのだろう。
そこは計算外だったが・・・・・仕方がない、受け入れるしかないのかこの状況。
次回に続く!!
‥‥‥運が悪かったというか何と言うか。自業自得?




