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あなたに(改正版)  作者: 宮原叶映
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俺のことについて

 俺について。


 俺の母親も体が弱く、俺を生んで死んだ。父親は俺の母親を、自分の奥さんを異常に溺愛してた。


 だから、自分の奥さんが死んだのがシックだった。俺を育てる自信がなく、母方のじいちゃん達に預けた。じいちゃんたちの話しか、父親のことは知らない。

 俺は、父親に捨てられたと思った。だって、父親の写真を一度も見ていない。俺を預けたあと会っていないし、行方が分からないから。

 もしかしたら、もうこの世にいないかもしれない。


 じいちゃん達には、本当に感謝してる。病気がちな俺に、家族のぬくもりを教えくれた。

 体が弱いを理由にして何もしない、出来ないを言い訳をしてはいけないと教えくれた。


 人は一人では、生きていないから、周りに助けられながら生きていく。


 自分が助けられたら、今度は、自分が助ける。

 

 人としてどうあるべきかを教えくれた。


 俺のじいちゃん達は元々喫茶店を営んでいて、よくお手伝いをさせてくれた。人との交流をして欲しいと、じいちゃんが考えたからだ。


 俺はよく入退院を繰り返していて、あまり学校に行けてなかった。小学校の時には、クラスの男子に、俺の家庭環境や病気のことを馬鹿にされた。

 

「お前は父親に、捨てられたんだ」


「お前の母親が死んだんだのは、お前のせいだ」


「その罰でお前は体が弱いんだ」


 と、好き勝手に言われてた。


  当時の俺は、とても辛かった。何で、言われるのが意味が分からなかった。

 そして、自分も思っていることも言われたからだ。


 俺は泣きながら家に帰った。じいちゃんは最後まで黙って俺の話を聞くとこう言った。


「だからって、それがどうした?お前は、悪くないんだよ。お母さんとお父さんがいなくても、じいちゃんとばあちゃんがいるんだ。それじゃ、ダメなのかい?」


「ううん。そんなことない。俺は、じいちゃんとばあちゃんがいい」


 じいちゃんは、嬉しそうな顔をした。


「また言われたら、じいちゃんに言いなさい。じいちゃんが、怒ってやるからな」


「分かった。ありがとう、じいちゃん!」


 次の日になると、悪口を言った男子が謝って来た。


 どうやら、後で先生と俺のことを心配してくれた男子がそいつらを怒ってくれたらしい。


 その男子がその後の俺の唯一の心友の隼咲(しゅんさく)だ。その日をきっかけに友達ができた。


 中学校になっても、隼咲は仲良くしてくれた。隼咲は、過保護な気がする。


 俺は、高校に進学しなかった。よく入退院を繰り返していてから、勉強に追い付けなかったのと、じいちゃん達にこれ以上苦労かけたくなかった。

 ただでさえ、俺の病院代で大変なのに高校に行くのは申し訳がなかった。

 高校を行かないと決めたときに、じいちゃんは真面目な顔をしてこう言ってくれた。


「高校に進学しないのだったら、店で働きなさい。他の子達も高校にいかないのなら働いている。遼もそうしなさい。体に無理がない程度で構わないからね」


 その約束のもと、俺はここで働いているわけだ。


 今でも、心友の隼咲と会っている。

 隼咲にもまだいっていない。俺がもうすぐ逝ってしまうことを。

読んでいただきありがとうございます。

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