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あなたに(改正版)  作者: 宮原叶映
17/21

出会えたこと

 あなたに出会えたことは、いつの間にか俺の生きる証になった。

 

 叶翔は、すくすく成長した。生まれてから一年たっても、二年たっても、五年たっても、何一つ病気をしなかった。体が、俺に似ず丈夫で安心した。

 これは絶対さなえちゃんの遺伝だ。彼女に似て笑顔がとても可愛い。


「おとうさん?えほんよんで! 」


「いいよ、どれ読もうかな? 」


「これ、これがいい! 」


「これ?うん、いいよ」


 俺の日課は、叶翔が夜寝るときと喫茶店の休みの日に絵本を読むことだ。その間に、さなえちゃんが家事をする。俺は絵本を読み終わると、叶翔と遊ぶ。

 前までは叶翔に絵本を読んだ後は、家事の手伝いをしていたけど。今は、叶翔とたくさん遊んであげて欲しいとさなえちゃんから言われた。彼女は、俺の体力がだんだん落ちて来ているのがなんとなく分かっていたのかもしれないな。


 俺が、叶翔の記憶に残るかを心配しているからだ。二十歳を越えてから五年以上立つ。前までは、公園で一緒に遊んでいたのに。それは、今では出来てない。

 

 叶翔を寝かし付けた後に、こんなお父さんでごめんなと辛くなって泣いてしまうことがあった。さなえちゃんは、大丈夫だよと励ましてくれる。

 


 ここ最近、体に違和感を感じて来てる。体がだるく、高熱と咳が出てきた。


 さなえちゃんは、俺のことを心配した。俺はただの風邪かと思ったから、病院に行くことを断った。もうそこに行けば、帰ってこれない気がしたから。

  さなえちゃんはお義父さん達に叶翔を預け、隼咲を呼んで病院に連れていってくれた。



  医者は、肺炎だと言った。俺には免疫力が少なく、ウィルス感染した可能性が高く、進行も速い。手術するのは難しく、薬で症状を落ち着けるしかない。発作がきたときは、どうにかすると思う。自分のことなのに、よく分からなかった。


 次に発作が出たら、今度こそ死ぬ可能性がある。もし発作が出なくても一年後は、生きていない可能性だという。いや、一年後じゃない。もっと短い間しか生きられない。俺の身体は、ポロポロだった。


 元々、体が弱いこともあるので、今すぐ、入院して詳しい検査をした方がいい。何が起こるか分からない俺の身体だから緊急入院をすることになった。


 たくさんの言葉が、俺に降り注ぐ。俺は、だんだん頭が真っ白になった。さなえちゃんの声がかすかに聞こえた気がした。


 

 いつの間にか、俺は病院のベットで寝ていた。


 さなえちゃんと隼咲は、たぶんお義父さんとお義母さん、じいちゃんとばあちゃん達に連絡しに行ったのだろう。

 

 ますます心配と迷惑をかけて、申し訳ないな。さなえちゃんは、きっと俺が体調を崩して、すぐに病院に連れていけばと後悔しているんじゃないかな。そんなことは、全然しなくていいよ。


 突然、今までよりもひどい咳が出てきた。


 赤い血が、俺の手を濡らした。


 パニックになっていると、さなえちゃん達がちょうど戻ってきて、すぐにナースコールを押す。吐血した。息がしにくくて、辛くて。


 発作が、出た。


「さなえちゃん、隼咲どうしよう?!俺、死ぬの?あの夢みたいに」


 俺は、咳をしながら二人に訴えるように言った。


「遼さん、落ち着いて!」


 さなえちゃんは、今にも泣き出しそうな目で俺を見た。そして、手を握る。大丈夫と言うように。


「遼、落ち着け!」


 隼咲は、自分にも言い聞かすように言った。落ち着こうとした俺は、なぜか二人がぼんやりする感じがした。


「遼さん、しっかりして。目を閉じないで!」


 その言葉を最後に俺は、意識を手放した。

 

 後から、聞いた話だ。俺が手術室で、手術を受けているときに、家族のみんなが病院に来た。


 彼らは、辛い顔をしていた。それを見た、叶翔は、今にも泣き出しそうな顔でさなえちゃんに聞いた。


「おかあさん。おとうさんだいじょうぶ? 」


「お父さんなら大丈夫! 」


 さなえちゃんは、笑顔で叶翔やみんなに言ったらしい。


 数時間後、手術室を出た。俺は、まだ意識が戻らないままだった。



 俺は二日後に目を覚ました。さなえちゃんは、俺の手を握っていた。

 

「遼さん、良かった……」


 と、涙を流しながら、でも笑顔で俺に何度も何度も繰り返した。さなえちゃんに心配かけることになってごめんね。

 さなえちゃんは、みんなに電話するために病室を出ていった。

 


 その後、隼咲と叶翔が病室にお見舞いにやって来た。


 隼咲は、手に持っていた何かをバサッと落とした。でも、素早くそれを拾い上げた。


「おとうさん! 」


 と、叶翔はベットに駆けてきた。

 

「遼!やっと目を覚ましたのか?良かった! 」


 俺達は、嬉し涙を流していた。

 

 みんなに、出会えたことは奇跡で運命だと思うんだ。ありがとう。

読んでいただきありがとうございます!

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