はじめまして
今日、俺達の子供が産まれた。
俺達は、あえて子供が男の子か女の子かを医者に教えてもらわないように頼んだ。
元気に生まれてくれるなら、それだけで嬉しいから。
男の子、女の子なんて関係ない。むしろ楽しみが増える。
なので、たくさん名前を考えた。
最終的に決まったのは、男の子なら叶翔で、女の子なら、かえでだ。
生まれてきた子供は、男の子だったら叶翔と名付けた。
「叶翔、はじめまして。お母さんよ」
「叶翔、はじめまして。お父さんだよ」
「お父さん、叶翔小さいね」
「そうだね。お母さん。俺……いや、お父さんは、二人を守っていくから」
俺は言葉と裏腹に、心の中は心配だった。
自分がさなえちゃんと叶翔といつまで一緒にいれるのか、叶翔を育てることが出来るのかを考えたら喜びより不安だった。
俺の不安な気持ちに気づいたのか、さなえちゃんが俺の顔を見て、微笑みながら言ってくれた。
「遼さん、大丈夫だよ。私がいる。ひとりじゃないから。一緒に叶翔を育ていくんだよ。私と遼さん、二人で親なんだよ。お互いを支えながら叶翔を育てていこう」
さなえちゃんの言葉を聞いて、安心した。
さなえちゃんは、いつも俺の欲しい言葉を言ってくれる。こういうときは、男がカッコつけるものなのだ。さなえちゃんも不安な気持ちがあるはずなのに、いつも俺のことを気遣ってくれる。そんな優しくて強い君が好きだな。
「うん、そうだね。さなえちゃんがいるから安心するんだ」
俺のこともあったので、医者に念入りに叶翔の検査をしてもらった。今のところ、障害や病気もないそうだ。とても、安心した。
「さなえちゃん、見て。叶翔、俺のを指つかんだよ! 」
「本当だ、かわいい。私ね。叶翔の顔は、遼さんに似てると思うの」
「そう?俺は、さなえちゃんに似てると思うけど」
「まだ、分からないな。生まれたての赤ちゃんってみんな顔が同じじゃないか?これから、成長しないと分からないと思うけどな俺は」
と、その声に二人で驚いた。その正体は、いつの間にか病室に訪れた隼咲だった。
「隼咲、ビックリさすなよ! 」
俺は、出来るだけ小声で話した。
「ビックリさせたつもりはない。いくら、ノックしても返事しない、お前らが悪い」
隼咲も、小声で話した。
「そうだったのか、ごめん」
「いいぞ」
「隼兄。いつから、聞いてたの? 」
「『叶翔、はじめまして。お母さんよ』って、さなが、いってるとこから」
「はじめから聞いてたの。恥ずかしい……」
「俺だって、恥ずかしかったんだぞ!ノックして、入ろうとしたけど。そういう雰囲気じゃなかったから。ドアのところで耳を澄まして、入っていいかタイミングを見計らってるのを、何人に見られたんだぞ! 」
「それは、ごめんね。入ってきても良かったのに」
「でも、ありがとう」
「別に、気にするな。それよりも、叶翔が生まれて、おめでとう」
「「ありがとう」」
「お前ら、叶翔の成長が楽しみじゃないか」
「うん!これからの成長が、楽しみだよ! 」
「お前らは、叶翔にどんな子になって欲しい? 」
「私は、遼さんに似て優しい子になって欲しいね」
「俺は、さなえちゃんに似てよく笑う、笑顔の素敵な子になって欲しいな」
「それは、お前らの教育次第だな」
「「そうだね」」
二人同時で言った。そして、笑った。
「隼咲は、きっと叶翔にも、過保護じゃないかな? 」
「隼兄なら、ありえるね」
「うるさい」
と、隼咲は、ふてくされる。いつものことだ。
隼咲が、しばらくしてから、帰ると言うので、俺は車に乗せてもらうことにした。
本当は、まだいたかったが……。さなえちゃんと叶翔も寝るので、結局帰ることにした。
それにしても叶翔が、無事に生まれて来てくれて、本当によかった。
じいちゃんとばあちゃん、そしてお義父さんとお義母さんは、隼咲よりも先に来て叶翔が無事に生まれたことを喜んでくれた。
じいちゃん達は、自分達がひいじいちゃんとひいばあちゃんになったんだ。年をとったって言っていた。その表情は、とても嬉しそうだった。
お義父さんとお義母さんは、孫が出来たと喜んでくれた。
はじめての子供で、大変だけど俺達なら育てると思うんだ。周りに支えられながらもあるのでそれに甘えすぎずに幸せな家庭を築きたいな。
読んでいただきありがとうございます。