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あなたに(改正版)  作者: 宮原叶映
13/21

生活

 結婚してから、早くも一年立った。本当にさなえちゃんと一緒にいると時があっという間に過ぎていく。


 俺達の生活は、結婚してからもあまり変化はない。隼咲からは、相変わらずお前らって仲が良いなと言ってくる。それぐらい仲良しだ。


 それらしい変化は……いや、やっぱりあった。さなえちゃんのお腹に新しい生命が生まれたことだ。


 さなえちゃんは、すごく喜んだ。もちろん俺も喜んだ。自分たちに、子供が出来たのが奇跡に感じれた。


 俺は赤ちゃんが産まれて大きくなっても、ずっと生きるんだと決意している。


 店は、お互いの体が負担にならないように気を付けながら営んでいる。俺は、結婚してからもたまに熱を出し休んでしまうし、さなえちゃんのお腹には生命があるから。

 

 ときどき、隼咲が店の手伝いをしてくれる。さすがに、料理の手伝いはさせられないので、それ以外の注文を取ったり皿洗いをしたりで、素早く丁寧な働きぶりだ。とても助かっている。隼咲には、ちゃんとバイト代として給料を払っている。

 最初は断られたけど、店としては手伝いだとしても働いてくれているから払わないといけない。それに、彼にはお世話になっているし、俺への誕生日プレゼントで一時金欠になったから。

 

 俺も実感しているけど。さなえちゃん曰く隼咲は、特に俺に対してかなりの過保護だ。それは、小学校から変わらない隼咲の良いところでもある。


 俺が言うのも怒られるかも知れないけど、いつも自分以外の人を気遣っている。俺も、よく相手のことばかり気にしてしまうから同じだって感じるんだ。


 隼咲が店の手伝いをしてくれるのは、俺の身体のことやさなえちゃんのお腹の子供のことで、心配しているからだ。


 喫茶店の休憩時間になって、三人でお昼ご飯を食べながら話をした。

 

「隼咲、大学とバイトが大変って聞いたけど。店の手伝いに来て大丈夫? 」


「大丈夫だ。両方とも休みの時に、手伝いに来ているからな」


「両方とも休みだからって、手伝いに来なくても良いのに。せっかくの休みなら、無理せずに休めよ」


「お前に無理せずに休めって、言われたくないな。いくら、体調を気遣って店をやっても、身体に負担がかかる。それに、さなえのお腹に子供がいるんだ。お前らは、すぐに無理をするから、俺が一緒にいないと安心できないんだ」


「隼兄って、本当に過保護だよね。隼兄の方こそ、私達を心配するよりも、自分の身体を心配してよ。それに、妊娠しても少しは動かないと、身体に悪いってお医者さんに言われたの」


「そうは、言っても。俺は心配なんだ」


 ガチャっと、店と自宅に通じるドアが開いた。そして、じいちゃん達が出てきた。


「店の奥まで話が聞こえたんじゃ。二人とも、私達に気をつかわなくていいんじゃよ」


「遼。少しの間、店をお休みしてもいいんだよ。働きすぎは、良くないからね。隼咲君の言う通り、さなえちゃんはお腹に子供がいるんだから。無理はしてはいけないよ」


「じいちゃん、ばあちゃん……」


 少し考え込む俺に、さなえちゃんは話しかけた。

 

「遼さん、おじいさんとおばあさんの言葉に甘えましょ? 」


「そうだね」


 さなえちゃんにまで、そう言われると断れるはずもない。

 

「隼咲君も、少しの間でも休みなさい。二人の心配をして、ゆっくり休めてないんじゃないのかい? 」


「分かりました。ありがとうございます」


 さすがの隼咲も、おじいちゃんに言われたら何も反論することは出来ない。

 

「早速、明日から休もうかな」


「そうだね。久しぶりに実家に帰ってみる? 」


「遼、そうしろ!久しぶりに、俺の部屋でゲームしようぜ! 」


「じゃあ、二人の実家に帰るよ」


「私達の実家でもあり、遼さんの実家でもあるよ」


「そうだぞ!俺は、明日は夜に帰ってくるからな」


「分かった!楽しみにしてる」

 

 

 

 そして、翌日実家に帰った。


 お義父さんとお義母さんは変わらず元気で、そして過保護だ。さすが、隼咲の両親で血は争えない。


 家族五人でご飯を食べた。前と同じで、さなえちゃんがお義母さんと料理を作り、バイトから帰ってきた隼咲とゲームをした。


 お義父さんは、俺に気遣ってなのか分からないが、お酒を飲まなかった。


 元々、お酒が大好きっていうのは聞いていた。お義父さん曰く、禁酒をしているらしい。元々お義母さんと隼咲も酒を飲んでいない。

 お義父さんは、「炭酸飲料で充分だ。そろそろ年だから、健康を考えないとな」と真面目な顔で言っていた。

 

 さなえちゃんが、お風呂に入っているときに、お義父さんとお義母さんと隼咲と話をした。


「この間、病院で検査をしました。今のところ身体に異常はなく、病気の発見はされてません。でも、身体は確実に弱っていて、永くは生きられない可能性があると言われました」


「そうか……」


 と、お義父さんは静かに言った。


「だけど、先生が『遼君が、今、生きているのが奇跡だか、このまま奇跡が続く訳じゃない。でも、遼君が、彼女と出会ったことがきっかけで、生きるが生まれて力になったたんだ。そして、奇跡が起こった。で、今生きている。今度は、彼女に子供が産まれたら奇跡が起こるとは限らない』と言っていました。俺は、またまだ生きたいです。さなえちゃんと自分達の子供を、幸せにしたいです」


「そうだな。遼君に、娘を嫁に出したんだ。お腹にいる子供もが産まれてからも幸せにして欲しい。親になったら、子供に誇れる父親にならないといけない。それは、分かっているね」


「はい、分かっています。子供に、誇れる父親になります」


「いい返事だ」


 お義父さんは、とても嬉しそうだった。

 

「生きることを諦めないで、不安なことがあれば遠慮せずに私達に必ず話すこと。自分の中に不安なことや疲れをためていたら身体に悪いからね」


 お義母さんは、真っ直ぐ俺の目を見て話してくれた。

 

「はい、ありがとうございます」


「遼、このことについて、さなは、知っているのか?」


「うん。知っているから大丈夫」


「なら、安心だ。俺達に話すのは、これ以外にもあるだろう? 」


「さすがだな、隼咲。そうだよ」


「私達に話したいのは、どんなことかな」


「最近になって店に少し出るのが辛いと、思うことがありました。もし、子供が生まれてまだ小さいときに俺が死んだら、父親の存在が分からないまま成長していくと思うんです。俺が生まれてすぐにお母さんが亡くなって、母親の存在を知らないままだったら寂しいかったです。周りには、お母さんがいるのに、自分にはいない。俺の場合は、父親もいなかったので、余計にそう思うんです。だから、俺が死んだあと子供に自分の父親はこんな人だって聞かせて欲しいです。そして、俺の変わりに、さなえちゃんと子供に寄り添って欲しいです」


「遼、何当たり前のことを言ってるんだ!言われなくたって、俺達家族はするぞ! 」


「そうだよ。もしも遼君が亡くなっても、君が頑張って生きた証を消しはしないよ」


「遼君は無理はせずに、今の自分に合うように、生きていけばいいのよ」


「ありがとうございます。あと、もうひとつお願いがあります」


「なんだ? 」


「それは……」

 

 俺のもうひとつの頼みごとを聞くと、みんなは快く引き受けてくれた。俺はまた家族の温もりを知った。


 生活をしていくなかで、今までと違う変化で戸惑ったこともある。でも、さなえちゃんと出会ってから生きる活力が出てきたんだ。

 今がとても楽しいんだ。これがずっと続けば良いのにね。

遼にとっての生きる活力は、さなえちゃん。

では、あなたの生きる活力ってなんですか?


読んでいただき、ありがとうございます!

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