結婚
俺は、長くて遠い叶いっこないと思っていた二十歳になった。さなえちゃんと一緒に暮らしていると、時間が思ったより早くに進んだように感じた。
喫茶店で、俺の誕生日パーティーをした。それには、俺のじいちゃんとばあちゃんとさなえちゃんとさなえちゃんのご両親と隼咲が参加してくれた。
さなえちゃんが誕生日パーティーをしようと言ってくれたけど、最初はしなくていいと断った。その後、さなえちゃんがじいちゃん達に話をして、みんなにやろうと言われ、俺は断れなくなった。つまり、外堀を埋めるというさなえちゃんの計画にまんまとはめられた。
本当は、誕生日パーティーをしてくれると聞いて、嬉しかった。でも、なぜか断ってしまった。
たぶんそれは、昔から誕生日を祝われるのが、あと何回で死ぬとか、これが最期かもしれない。俺を捨てた親だった人は、こんないつ死ぬか分からない俺の誕生日なんて祝ってくれるのか。そんなことばかり考える子どもだったから。
けれど、今は違う。俺は、二十歳の大人で、さなえちゃんと一緒に生きた時に何もかもが変わった。
自分自身で、やっと自分の生まれた日を喜べる。
そう、思えるようになった。さなえちゃんと出会って一年たったときは、少しバタバタしてたからしなくてすんだ。恥ずかしいのもあってしなくて良かったと思う。
今年こそはって、みんなが張り切っていた。そのかいがあってか、とても楽しい一時を過ごした。定番となったオムライスとオレンジジュースやバニラアイスに、唐揚げやサラダ等々誕生日の料理がテーブルに並ぶ。
忘れてならないのが、誕生日ケーキだ。それは、さなえちゃんがおばあちゃんやお義母さんから教えてもらいながら焼いた手作りケーキだ。人数も多いからなんと二つのケーキを作ったのだ。とてもおいしかった。
隼咲からは、新しい時を刻めといいブランドの腕時計をくれた。珍しくキザなことをする隼咲をさなえちゃんはカッコいいねと褒めるた。すると、隼咲はほっぺを赤くして照れていた。
さなえちゃんは、手作りケーキ以外にも誕生日プレゼントをくれた。さなえちゃんの味のある俺の似顔絵だ。絵のなかで俺は、楽しそうに笑っていた。彼女からの目では、俺はこんなにも笑っているんだと思った。
パーティーが、終わりをむかえた。
みんなには、帰ってもらった。さなえちゃんだけ、内緒にしていたことがあるからだ。
自分の誕生日なのに、彼女へサプライズを用意していたものがある。なんだか不思議だな。
そして俺たちは、結婚するんだ。それは、二十歳になったらすると決めていたから。
さっきまでこの喫茶店には、たくさんの人がいたのに、今は俺達の貸し切り状態になった。
「さなえちゃん、来て」
「うん、いいよ」
俺は、さなえちゃんとあの席に座った。それは、さなえちゃんの特等席だ。
「何だか、この席に座ると思い出すね」
「どんなのこと?」
「それはね。遼さんが倒れて驚いたこととかね。遼さんが、あの事で気まずくなってわざと仕事を休んで寂しかったこと。それと遼さんが……」
「も、もういい……。それ以上いいから」
「聞かれたから、答えたのに。そんなに慌てなくっていいのに。じゃあ、遼さんは? 」
俺は聞くんじゃなかったと後悔した。だから、ある意味仕返しをしようと決めた。
「俺はね、隼咲とさなえちゃんが兄妹だったってことに驚いたよ」
「そうだね。まさか、隼兄と遼さんが親友だったなんて。私も驚いたよ。でも、なんとなくは遼さんも気づいてたでしょ? 」
「うん、なんとなくはね」
「他には? 」
「さなえちゃんと初めて出逢って、どんどん好きになって恋をしたことかな」
「えっ」
「さなえちゃん、俺と結婚して一緒にどこまでも生きてくれませんか?」
「はい!よろしくお願いします!」
さなえちゃんは、泣きながら指輪を受け取って指にはめてくれた。その指輪はとてもキラキラとしていて、それとともに彼女の表情はとてもきれいで幸せそうだった。
俺は、今日の出来事を一生忘れない。
『一緒にどこまでも生きていく』と、いう言葉は、俺とさなえちゃんにとってのとても大切な言葉だ。それは、『大好きだ』や『愛している』よりも素敵な言葉で誓いでもあり、意味合い言葉に近いかもしれないな。
流れるようなプロポーズに驚いたかな?
嬉しかったかな?
俺は、あなたを幸せにするからね。
隼咲が遼にあげたプレゼントの時計は、バイトでためたお金をほとんど使っているんですよ。彼は、とてもいい子です。
前に投稿した内容を編集して、加筆しました。わかりましたか?
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