一緒に
今日からさなえちゃんと一緒に暮らす。さなえちゃんと二人で住むことに、喜びを感じている。
引っ越しをするときは、隼咲が張り切っていてよく働いてくれた。成瀬家の働きによって引っ越しは予定よりも早く終わった。
それに対しておじいちゃんたちは、年も年だから手伝えないのから感謝はしていたけど申し訳なそうにもしていた。
さなえちゃんと朝ごはんを食べて一緒に仕事に行く。毎日が、新鮮な気持ちで朝を迎えることが楽しみになった。
俺は、今でも時々体調を崩す。でも、さなえちゃんがいるから大丈夫、生きていると思うようになった。さなえちゃんと出会える前までより体調は、安定している。
さなえちゃんは、早くも店の人気看板娘になった。俺は、じいちゃん達に店の味を教えてもらって、喫茶店の二代目マスターになるための修行をしている。
じいちゃんとばあちゃんのように、お互いを支えながら、店を営んで生きたいと思う。俺の思いを家族に伝えると喜んでくれた。
そして、自分達でも出来ることは協力してくれると言ってくれた。
時々、思うことがある。俺のせいでさなえちゃんの人生を変えてしまったのだろうか。
俺に出会わなかったら、行きたい大学に行っていたかもしれない。覚悟をさせてしまうような男を選ぶことなんてなかったと思う。
さなえちゃんがいなければ、俺は今も生きているのだろうか。たぶん、生きていないと思う。生きる希望ってものがなかったから。
さなえちゃんとは、まだ結婚はしていない。婚約をしている。
それは、俺が二十歳になるまで待って欲しいとお願いしたからだ。二十歳まで生きられないと言われたのを越えたい。
その記念といってもいいのか分からないけど、記念として結婚をしたいのだ。
さなえちゃんに伝えたら、笑顔で「分かったよ。そうしよう!」と、言ってくれた。
本当は、今すぐに結婚したいと思う。一度だけ思っていることを、聞いてみたことがある。
そうすると、さなえちゃんはこう言った。
「これは、私が自分で決めた道で、後悔なんてしてない。遼さんが焦る必要なんてないよ。大丈夫だからね。それは、遼さんにとって大切なことでしょ?だから私も遼さんの考えに賛成だよ。私は、結婚するなら何歳でもいいよ。一緒にどこまでも生きるんだから」
「ありがとう。そう言ってもらって、なんだか嬉しいよ。俺は、二十歳まで生きられないって言われたけど。生きたいのに生きられないのかと思ったら、すごく不安になって。何か目標がないと、何事も前に進まないかもしれないって思って。その目標が俺とさなえちゃんとの結婚なんだ。でも、もしそれが叶ったら、俺は次に何を目標にして生きたらいいか、分からなくなって焦ってたんだ。そうだよね。俺達は、一緒にどこまでも生きようって誓いあったんだ」
さなえちゃんは、涙を流しながら俺の手を握った。
「遼さん、焦らなくていいんだよ。不安に感じたら、教えて。遼さんは、独りでその不安と戦わなくていいんだよ。私が一緒に、その不安と立ち向かって戦うから。私達のどこまでも生きようって誓いには、生きていくなかで嬉しいや不安なことだったり、悩んでいることだったりを一緒に共有しあって生きたいっていう思いがあるの。だから、独りで悩まずにこれからも教えて」
「うん、分かった。さなえちゃんも隠さずに教えてね」
「うん。私も約束するね」
これからもずっと、一緒に笑顔になったり、泣いたりしたい。
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