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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

先輩と後輩の私

作者: 一二三回

時刻は朝。いつもと感触が違う、知らないベットの上で目が覚めた。ボーッとする頭を無理矢理起こして状況確認をする。


ここは……ホテルのようだ。荷物は二人分置いてあり、それらは私服だった。色々見て思い出した。やけ酒して誰かに介抱されたんだっけか……。それで―――それで?


「頭痛い……顔洗お」


起きた直後に頭を使うなんて無理。シャキッとするためにベットを出ようとしたとき、気付いた。


(えっ!? 何で今まで気付かなかったの? 私全裸じゃん……は? ちょ、え???)


自分が全裸である、しかもここはホテル。もしかして記憶が欠けている部分で私は何かやらかしているのか…? そう思うと血の気がサーッと引いていくのが分かった。


(まさか私は赤の他人とやってしまったのか? 自ら誘って、あんなことやこんなことを??)


二十三年生きてきて、初めてのことに激しく動揺していると、毛布が動き、隣から声が聞こえた。今は一人しかいないと思っていたので吃驚してその勢いのまま振り向く。


「美月……先輩?」

「おはよう、茜。いい朝ね」

「おは、ようございます……?」


爽やかな笑顔で、両者が裸であることを気にしないかのように挨拶をする、黒髪美人の仕事の先輩、美月さん。そして私が密かに、密かに想いを寄せている女性だ。って挨拶返す場合なのか!? 急いで毛布で体を隠す。


顔を真っ赤にさせている自分を、可愛いものを見ているように微笑んで、どこかの部屋へ行ってしまった。後に聞こえてくる水音でシャワー浴びに行ったみたいだった。


(先輩が行っている間に服着よ。あれ、畳まれてる?)


私はがさつな性格で、さらに記憶を飛ばすほど酔っていた時に畳む何てあり得ない。先輩が畳んでくれたんだろう。ありがたい。




服を着て裸よりはましになった頃、美月先輩が帰ってきた。赤みを帯びた頬、さらさらの長い黒髪、吸い込まれそうな程綺麗な瞳。つい、見惚れてしまうけど、じっと見つめるのはいけないと、チラッと見る程度にしておいた。


「上がったから、入っていいわよ」

「ありがとうございます」


一回シャワー浴びてリフレッシュしよう。私はさっき先輩が入った場所へ向かった。着替えている時にふわっと先輩のほんのりと甘い残り香が漂っていた。って変態みたいじゃないか。邪念を振り払うようにシャワーを浴びに行く。



とってもさっぱりした。しっかりと髪を乾かして先輩の元へ急ぐ。先輩は椅子に座ってスマホをいじっていた。何をしているか非常に気になったが、私が来た途端勢いよく止めてしまったので分からないまま。


先輩と向い合わせの席に座って、目を反らし続けていた問題に手をつける。


「先輩、昨日私を介抱してくれたのは美月先輩ですよね? ありがとうございます。とても助かりました」

「どういたしまして。次からは酔い潰れないようにするのよ」

「はい…。ところで美月先輩。私何かしましたか?」

「えっと、それはどうしてそう思うの?」

「それは、その、起きたときに二人とも、ぜ、全裸だったわけじゃないですか。片方だけなら、私が酔ったら露出する酔い方なら説明がつきますよね、なのに両者全裸。何かあったと思わない方がアレじゃないですか?」


話す内容が内容なので、美月先輩の目を見ることができず横の壁を見ながら話す。先輩の反応がなく、沈黙が一分程続いた。沈黙に耐えきれず先輩を見つめた。


そこには頬を赤く染めて、両手で顔を隠している先輩がいた。この反応で確信した。


――――確信してしまった……


私、やらかした。人生で最大の失敗だ、失態だ。だけどまだ、そうと決まったわけではない。直接聞いてみなければ。


「美月先輩、私何かしました…よね?」

「そ、そんなこと、無いよ?」

「嘘ですよね!? 嘘ですって絶対。ならどうして顔を赤らめているんですか、顔を隠しているんですか!?」


ああ、やらかした。どうしてこうなった。必死に脳をフル回転させ原因を探る。思い出せ、思い出せ、何があってここまで酒に飲まれたのか。


□□□□□

時は遡り、五年前のこと。


私は学校が終わり、待ち合わせをしている場所へ向かう。それは告白のため。


待ち合わせ場所には、夕日に照らされて風に髪をなびかせる、千春がいた。千春は、女性である。彼女は中学から仲良く、ずっとずっと片想いをしてきた。だが、今日で終わりだ。


振られるだろうと分かっている。でも、告白せずに終わったら絶対に後悔する。なら当たって砕ける。


「お待たせ! 待った?」

「ううん、今来たとこ……って恋人みたいだね」

「そ、そうだね。あはは」


恋人という単語に過剰反応してしまい、ひきつった笑みが出てしまった。


「それで、大事な話って?」

「ああ、えっと」


今ここになって、言うのを躊躇う自分がいる。この想いを心の内に留めてこの平和な時を過ごすべきだ、今のこの距離感がいいじゃないかと。


うじうじ悩んでも仕方ない。言う。


「ぇと。ずっと前から好きでした。付き合ってください!」

「え?」


思いっきり頭を下げて告げた。千春の困惑した声が聞こえ、表情が見えないことへの不安が時間が経つごとに大きくなっていく。返答の間は数秒も無かっただろう。でも私にはとても長く、長く感じた。


「えっと」


声が聞こえた瞬間顔を上げる。千春の表情は困惑と照れと迷いと申し訳無さ、色々混じっていた。拒絶や嫌悪の表情が無かっただけよかった。


「私には好きな人が別にいるからごめんね…?」


やっぱり、駄目だった。女だから駄目だったのかな、それとも私だから? 後悔の言葉がどんどん出てくるが、今はそんなことをしている場合じゃない。このままでは気まずいままで、さよならを

してしまうから


「……ドッキリ大成功! 驚いた?」


断られたショックを隠すため、本気で好きだったと分かられないため、悲しい気持ちを悟られないため、笑顔で別れるために、ドッキリと告げた。そのとき千春が安堵の表情を浮かべたのは、今は見ないフリをすることにした。


「ねえねえ今どんな気持ち? どう?」

「本気かと思ったよ、演技上手すぎだろ。本当に役者目指した方がいんじゃね?」

「お褒めいただきありがたき、恐悦至極にごさいます」

「うむ、くるしゅうない」


このあと適当に過ごした、と思う。記憶がないのだ。とてもショックで家に帰ったあと、一人でわんわんと泣いた。声をあげて枕濡らして、鼻水が止まらなくなった。


そして後悔した。もっと前に自分が女の人が恋愛対象だと言っておけば、とか誤魔化さずに積極的にいくべきだったとか。


この日は食事が喉を通らず家族に心配をかけた。私も早く立ち直ろうと頑張っていた。


そして、表面上では傷ついていないように見えたが、内面はぼろぼろだった。特に千春のと話すときは、一人でに気まずさを感じた。そのうち避けるようになって、高校卒業したら会わなくなった。


□□□□□


思い出した。今もその失恋を引きずって昨日もやけ酒してたんだっけな。でも三年前に先輩と出会って忘れかけてたけど、昨日の告白した日になると決まって思い出す。そしてお酒を飲んでしまう。


居酒屋の大将に止められて、友人に送られる。それがいつもだった。だけど記憶を飛ばすほど酔うことは中々ないんだが、何故だろう。


更に思い出さなきゃ、昨日何があったのか、先輩に何かしたのか。手を出したのか。


□□□□□

日はすっかり落ち、月が街を照らしていた。


人が数えられるほど少くなった居酒屋のカウンターの隅に一人やけ酒をしている女性がいた。それが私、門崎茜である。


茜の回りには空になったジョッキがいくつも並んでいる。顔は赤く紅潮し、人に見えないように頬杖をつき泣いていた。失恋で負った傷は深く、心に残っていた。それほど千春が好きだったのだ。


「あ~あ。忘れたいなぁ、前に進みたい、過去の私に決別を……」


机の上に突っ伏して涙を拭き取り、深く長く溜め息を吐く。この台詞は何度目だろう。ずっと言ってきた、きっと来年も言うだろう。長く吐いた息を吸い、大将に頼む。


「大将ー!! ビールくださーい!」

「大丈夫かい、茜ちゃん。ここらで止めといた方がいいんじゃないの?」


茜を心配しているのは居酒屋の大将だ。いかつい見た目だが、その外見に似合わずとても優しい。


大将に止められてもなお、お酒をせがむ茜に渋々といった様子でビールを取りに行った大将。戻って来たときには右手にビールを持ってきていた。ああ、美味しそうだ。


「ほどほどにしておくんだよ、迎えは来ないんだろう?」

「はい、そうです! あと一杯飲んだらやめにしまーす」


大将の忠告など気にもせずグビッと喉を鳴らして飲む。飲んだ後に吐く息がたまらない。微かに残っている酒のつまみを味わうように食べていると、新たな客がやって来た音がした。


足音からして一人だろうなー、とふわふわした頭でぼーっと考えていると、自分の隣にその人は腰かけた。


その人はすごくいい香りがした。花の香り。女性が一人で来るなんて珍しいと、思いつつビールを飲み干そうとすると、声をかけられた。


「こんばんは」


透き通るような、聞き覚えのある女性の声。まさかと思い隣を見ると、会社の先輩の美月先輩だった。同じ部署で交流がある、仲のいい人。そして私の想い人。


美月先輩はきれいでカッコよくて、優しい。皆の憧れだった。私も憧れてた。だけど交流を重ねるうちに、それは憧れから恋心に変わっていったんだ。


仕事のとき見せる笑みと、プライベートのときに見せる笑みがどちらとも好きで、好きなキャラにはしゃぐ先輩が好きで、酔ったときに見せるギャップが好きで、声が、姿が、性格が、先輩の全てが好きになった。


そんな人が隣にいる。それだけで私は自然と笑みがこぼれてしまう。


「こんばんは、みつきせんぱい。珍しいですねせんぱいがここに来るの」

「えっと……今日は久しぶりに飲みたい気分だったの」

「そうなんですねぇ」


美月が小声で「茜ちゃんを見かけたからつい寄ってしまった」と言ったのは、人の声にかき消されて茜の耳には届かなかった。


美月が茜の回りを見た。幾つもあるジョッキの空。心配になり声をかける。


「茜、大丈夫? 飲みすぎないようにね」

「これで終わるよていでした。心配してくれたんですね。ありがとうございます」


満面の笑みを浮かべて、お礼を言われた美月。それならよかったと返しつつ、赤くなる顔を隠すように、照れを隠すように、大将に度数の低いお酒を頼んだ。


一方茜は夢見心地だった。しかもお酒のせいで嬉しさが全面に出ている。


「そういえば、茜は何かあったの? こんなに飲めなかったでしょう?」

「……失恋です。昔のきょう、ふられちゃって未だに立ち直れてないんです」

「そう、なのね。どんな人だったか聞いてもいい?」

「明るくて、やさしくて、私のなやみとかを全部ふきとばしてくれるひとでした。だから好きになった。でもふられました。やっぱり女性どうしってダメなんでしょうか……」


うつむき、ジョッキを握りしめる茜。美月は茜を慰めつつ、気になったことを率直に聞いた。


「女性同士って、相手は女性なの?」

「あっ……はい、そうです。………同性をすきになるって気持ちわるいですか、軽蔑しますか、それとも距離をおこうとおもいますか?」

「そんなことないわ!」


今までの辛い経験を思い出しながら、問いかけた茜の言葉に勢いよく否定する美月。その目には強い決意が見えた。


「だって私も同性が恋愛対象だから」

「え……?」


突然の告白に目を丸くする茜。美月は茜を見つめながら話を続ける。


「だから茜を軽蔑したり、気持ち悪いと思ったり、距離を置こうなんて思ったり考えたりはしないわ」

「ほんとうですか?」

「ええ。絶対に」


真剣にこちらを見つめる美月先輩。その態度に嘘偽りなんてなかった。話していたことは全て本当なんだ、と分かった途端に涙が目から流れ出した。


突然の泣き出した私に吃驚してハンカチを貸してくれる先輩。急いで泣き止もうとしても、止まらない。理由なんて分かりきってた。


私を肯定してくれた。同性が好きと言っても嫌悪の目で見なかった、気持ち悪いなんて言わなかった。たったそれだけ。でも私にはそれがとても、とても嬉しかった。


泣いているうちに先輩に抱き締められた。ちょっと吃驚したけど、今は人の温もりが欲しかったのかもしれない、優しく包み込まれて、さらに泣いてしまった。


泣いて、泣いて、泣いた。先輩はその間ずっと背中を擦ってくれた。ようやく泣き止み、少し温くなったビールを飲み干した。


「たいしょー。おかんじょー」

「あいよ。迎え、来たようでよかったな」

「はい。よかったです」


先輩に支えられるようにして居酒屋を後にした。たくさんお酒を飲み、酔っ払った私は歩くことさえままならなかった。しかも眠気が襲ってきたために、支えてもらっているにも関わらず私は眠りに落ちた。


そんな茜をしょうがないな、といった感じに微笑み、愛しそうに頭を撫でて茜を休めるところまで運んだ美月だった。


□□□□□


「よいしょっと」


すやすやと夢の世界へ旅立っている茜をベットに優しく降ろす。いい夢を見ているみたいで、口角が上がっていた。


幸せそうに眠っている茜を起こしたくはないので、化粧を落としておく。丁重に拭き取り、横に腰を下ろして茜を眺める。


茜は可愛い後輩だ。私によく懐いてくれている。


私は人見知りで、引っ込み思案だ。仕事の時は隠していると言うか、偽っているけれど、人と関わるのが苦手だった。


偽りの仮面を身につけて、架空の自分を築き上げて、人と話す。それが癖になってしまって、本当の自分を出せる人は家族以外にいなくなっていた。


だから私と関わった人はどこか壁を感じて、私から一歩下がった距離に落ち着く人がほとんどだった。そのことにはもう、慣れていた。


だけど茜は、口下手で不器用でカッコ悪いところを見せても、引かなかったし、私から一歩下がることはなかった。むしろ歩み寄ってくれたのだ。それがどんなによかったことか、どんなに嬉しかったことか。


半年も経たないうちに私は茜に、可愛い後輩と思う気持ちとはまた違った感情を持つようになった。


目で追うようになり、話しかけてくれたらすごく嬉しくなったり、茜が話す一言一言に一喜一憂した。


茜は私の大切な人。家族以外に唯一自分を出せる存在、私を受け入れてくれる人。大好きな人。


昔のことを思い出していた美月の耳に、茜の声が届いた。


「みつき、しぇんぱーい。すきです~」

「っ」


寝言で、私の名前を呟いてくれた。それだけで心臓が跳ね上がり、顔は赤くなる。本当にずるい。


仕返しをしたく、なってしまった。基本的に茜はお酒を許容量以上飲むと記憶が飛ぶ。だからちょっと仕掛けよう。


服を脱ぎ、ベットに入る。茜のもなるべく見ないようにして脱がす。変態? 頭おかしい? 何とでも言えばいい。ただ私は顔を真っ赤にして慌てふためく茜が見たいだけ。


スーツを畳み、明かりを消して眠りに入る。茜より早く起きたいな……と思いながら。


□□□□□


そうだ、失恋の傷を癒せなくてやけ酒して、そこに美月先輩がやって来て介抱してくれたんだ。


……しかし気になったことがある。


先輩は同性が好きだって言っていたような気がした。直接尋ねてみようか。


「美月先輩」

「何?」

「先輩は同性の子が好きなんですか?」

「ええ。そうよ。茜のような可愛い子がね」

「か、からかわないでくださいよ」

「ほんとよ?」


真っ直ぐに見つめられて、つい目を反らしてしまう。本気で言ってるのか、それとも冗談か。この人の冗談は分かりにくい。だって私は先輩に言われるほど可愛いわけではないから。


照れを隠すために、咄嗟に話題を変えることにした。


「そ、そういえばここの代金って先輩が払ってくれたんですか?」

「そうよ」

「ありがとうございます。でも申し訳ないので何円だったか教えてもらえませんか?」

「返さなくていいのよ。その値段以上の価値があったから」


ふふふ、とどこか含みのある笑いをする先輩。このあと何回か聞いてみても答えてくれなかった。




私たちはホテルから別れ、家に帰った。私はこの日のことを一生忘れないと思う。いろんな意味で衝撃的すぎて、私の記憶に濃く残ると思う。


□□□□□

ある日の休日。昨日は給料日だったので少しだけいいところへ飲みに行こうと考えて、川沿いの飲めるところを探していた最中に、見覚えのある背中を見つけた。


声を掛けようと、近づいてみると先輩は結構飲んでいるみたいだった。何かあったのか。


「こんばんは、美月先輩」

「こんばんは……茜?」


意外と意識はハッキリしていた。先輩がお酒に強いことを今さら知った。ってそれよりこんなに飲むなんて見たことがない。何があったのか聞いてみないと。


「先輩、何かあったんですか? 普段こんなに飲まないでしょう」

「ちょっと決意を固めるためにね」


また含みのある言い方。この様子では聞いたって教えてくれないだろう。先輩は残っていたお酒を飲み干して、私に向き合った。


「明日、予定とかある?」

「いえ、別に何もありませんが…どうしたんですか?」

「仕事が終わったらちょっと付き合ってくれない? 少しだけでもいいから」

「大丈夫です」


私の返事を聞いて、先輩はにっこりと微笑んで私にお酒を奢ってくれた。明日何があるのかは分からないが、今は知らなくていいや。


□□□□□

仕事終わり。先輩が案内してくれて着いた先には、桜が川沿いに満開に咲いている綺麗な場所だった。


先輩は無言で花を眺めていたので、それに倣って私も花を見る。風に吹かれて散る桜の花びらが川に落ちて流されていき、それを月明かりが照らす、とても幻想的な景色だった。


しばらく桜を眺めていると、先輩が真剣な表情をして話しかけてきた。


「ねえ、茜。私ね好きな人がいるの」

「そうなんですか?」

「うん。その人は私に歩み寄ってくれて、女性が好きだって言っても引かないかったり、いつも笑顔で私の心を照らしてくれたり、私を好いてくれる、大好きな後輩」

「えっと、それって」

「茜」

「は、はい」


緊張感をもった声に、自然と背筋が伸びる。


「茜が好きです。付き合ってください」


答えなんて決まっていた。私を初めて肯定してくれた、辛いとき支えてくれた、一緒にいて楽しくて、嬉しくて、大好きな先輩だから。


「はい。不束者ですがよろしくお願いします」

「っいいの?」

「はい。美月先輩じゃないと駄目なんです」


その返事を聞いた先輩は私に抱きついて、泣いた。ありがとう、ありがとうと繰り返し呟いて。先輩がこんなに喜んでくれるのが嬉しかった。


先輩が泣き止むまで背中を擦り続けた。その間に本当に先輩と付き合えたということを、ハッキリと感じた。


世間に何と言われたっていい。私は好きな人と過ごしていくんだ。


私が微笑むと、彼女は笑ってくれた。


「ずっと側に居てくださいね、葵先輩」


どうでしょうか?

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