表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/80


 ミラモは、一度も塑山の人間と言葉を交わすことなく、ただ翼竜を飛ばせ、再び竜廓島まで戻ってきた。


 城門は開いていて、首相が警護の者たちと共に立っていた。

 地上に降り立ってから、ミラモは考えた。この草履や服はどこに置いたらいいのだろう。このまま任務に就くのか。朝、部屋に置いてくれば良かった。


 どうしよう。


 考えている間にも、首相たちは一言、二言挨拶を交わし、門の方へと歩き始める。

 城の敷地内にはいくつか建物がある。


 吹き抜けで、天井が二階ぐらいの高さまである平屋に、首相たちは入った。


 壁の一面は大きな窓で中がよく見える。

 洋風で、真ん中に大きな食卓と椅子がいくつか置かれている。


 人の数が減った。

 塑山の人間もこちらの警護の者も、ほとんどが建物の外にいて、囲っている。


 こちらの人間は首相を除くと、自分と護衛の者一人である。


 それは塑山の方も同じで、三対三で向き合っている。


 首相と塑山の男だけが椅子に座り、ミラモたちは立っていた。


 ミラモは草履や服を丸めて足元に置いた。


 もう一人の護衛の者は朝、ミラモのボタンのことを注意した男だった。


 目が合い、向こうは自分の足元に一瞬目線を落とし、嫌そうな顔をした。むしろ、あきれてしまっているようで、ミラモは口元だけで笑みを作り、軽く頭を下げた。


 三十分ほどで話は終わった。


 同じように、三十頭の翼竜で北風島の北部まで、塑山の人間を送り届けた。


「お前、もう戻ってこなくていいぞ。何だ、あの態度は。根島国の恥だ」


 城に戻ってから、ミラモは怒鳴られた。

 また、あの男である。

 男は首相付き護衛課の課長であった。


「いや、本当にすいません」


 慣れない靴のせいで指が痒いし、もう腹も減っている。


 ミラモは何度も頭を下げながら、足の指同士をなんとか動かし、掻こうとしていた。


 昼前の中庭だった。


 くそ。

 いつまで怒鳴ってやがる、おっさん。続きは飯の後でいいだろう、おっさんよ。


 首相が自分を呼んでいる、と人が言い、とりあえず男は口を閉じた。


 ずっと外にいたため、頭が熱を持っている。


 ミラモは、一人で執務室へ向かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ