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光と音。火と煙。
場所は、比酎と隣り街を隔てる、山の中。大木の太い枝に腰を下ろし、久光はそれを見ていた。
殺った。久光はそう思った。リムを呼び、川岸まで一気に降りていく。
川もそのまま渡った。石がやたらと転がっている。そこで久光は着地した。
煙は久光の左側の方で上がっている。辺りは暗いが、空は明るい。
しばらく水の流れを聞いていた。すると、走ってくる足音がした。重そうな足音である。
銀色の犬。
「静かに、静かに。うるさいから、もう走らないの」
小さな声で久光は言った。石と金属のぶつかる音に変わっていた。久光は立ち上がり、犬の方へ寄った。犬は何も言わない。
「おお、頭良い。さすが、真結様のわんこだな、お前」
見ると、犬は口にそれをくわえていた。人の腕だった。その先の薬指には指輪があった。
目印になるかもしれない。
久光は屈み、その腕から指輪を外した。何でもないような感じで、腕を川の流れの中へ放り込む。
目をこらして、指輪の内側を見る。すると、そこには文字と数字が刻まれていた。
多分、人の名前だろう。本人かそれとも結婚相手か。こっちは銀の比率だ。
久光はほとんど字が読めない。それでもさすがに数字ぐらいはわかる。それと街の看板なども。字というよりも記号の羅列、塊。そんなふうに見えた。そして、うまく覚えられない。字の細かな特徴を忘れてしまうのであった。
犬の顔に鼻や耳、目がない。全体的に小さくなっている。
「顔、吹っ飛んじゃったんだね。でもお前乗せて飛ぶの大変だから、しばらく小さいままでいてね」
久光は犬の頭に手を添えた。連れてくる時は、もう手の平に乗るぐらいの大きさしかなく、肩に掛けた物入れに押し込んでいた。
同じような感じで、犬を小さくしようとしていた。久光は、それをやめた。
風の塊が向かってくる。街の空から。
「なんで生きてんだろ?」
犬は久光の方を見上げていた。
「なんでだろうね」
練成。
犬の体の表面を線が走る。
線は、隆起している。すぐに一体と化し、犬の体は大きくなった。
練成。まだ、まだ、練成。
犬が膨らんでいく。久光は立っている。
犬はもう、久光の背丈ぐらいになっていた。
ちょっとやりすぎてしまった。
犬の顔を見上げながら、久光はそう思った。




