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翼竜の召喚。
昨日は、城の敷地内にある建物の一室を借り、泊まった。
早朝だった。空は淡い青色をしている。
ミラモは呼び出した翼竜によじ登った。
まだ朝飯を食っていない。
敷地内から、城門の前まで翼竜を飛ばせた。
雨上がりで遠くまではっきりと物が見える。
敷地の周りには堀があり、橋は二箇所にしかない。
堀は敷地をぐるりと囲っているが、水は引かれていない。
大雨の日が続いたりすると、膝ぐらいまでは水がたまるらしいが、あふれる心配は多分ない。
ここら一帯は海に向けての坂になっている。また、街も全体が高い場所にあるため、洪水には強い。
もう、翼竜は消えていた。
しばらくすると門が開いた。
男たちが歩いてくる。
皆、黒いスーツに身を包んでいる。自分を足して、これで三十人か。
「どうも」
誰か一人にというわけではなく、男たちの方向にただそう言った。
ミラモは昨日着ていた服を丸めて脇に挟んでいた。草履も手にぶらさげている。
慣れない皮の靴を履いている。そして、この男たちと同じように黒いスーツを着ていた。
昨日、係の者が渡してきたのだった。
先頭を歩いていた中年の男は、足元からミラモの顔まで調べるような感じで見た。
「一番上のボタンを留めろ」
無表情のまま、男はそう言った。
ミラモは右手でネクタイの辺りを触った。
「ああ、本当だ。すいません。つい、うっかり」
そう言ってボタンを留めた。
男は自身の腕時計に視線を落とす。
時間らしい。
男たちはそれぞれの翼竜を呼び出し、乗った。多少の差異はあるが、全て翼竜の形をしたリムである。
ミラモも同じように召喚し、乗った。
ミラモの翼竜だけ、二回りかそれ以上の大きさがあった。
先ほどミラモに注意をした男の翼竜が舞い上がり、他の者たちもそれに続いた。
ミラモは最後尾についた。