5
草履を脱ぎ、ミラモは長い廊下を歩いていく。日の光が入ってくるため、暗くはない。
本来の城なら、窓は木の板や格子がはめ込まれているため、もっと暗いはずだ。
だが、この城の窓には、無色で透明なガラスがはめ込まれている。
灯かりも、ろうそくなどではない。
花の形をしたリムが間隔をあけて置かれている。
すぐに消えないリムもいる。
小型のものが多く、この花の形をしたリムは一ヶ月以上存在することができる。
時間が経つと花びらや葉が消えていく。それであとどれほど使えるのかわかるのだ。このリムは、夜になると明るくなる。
光を放つのである。
正面に、二人いた。
「上へ」
ミラモは先ほどと同じように身分を示した。
一人は係の者ではなく、自分を待っていたらしい。
銀色の扉が開く。
材質は、やはりリム由来の金属。
ミラモとその男が乗り込んだ。
エレベーターである。
新世界なら内側に操作をする部分があるが、こっちでは外にしかない。
「やっぱり城にエレベーターってのは、どこかおかしいと思いますよ、俺は」
「しかし、便利でしょう」
男は扉の方を向いたまま、静かにそう言った。箱が上がっていく。
あとそのスーツ、ワイシャツ、ネクタイ、ベルトの姿も。
暑そうだ。今日でも二五度はあるだろう。
五階だったか。まだ上はあるが、箱はそこで止まった。
「このまま、執務室へ」
男が先に降り、ミラモも続く。
城は縦だけでなく、横にも長い。
「どうぞ」
男はすぐそばに立てて置かれていた靴を二足持ち、ミラモの前に置いた。
床は同じ木の板だが、ここからは洋風になる。
ミラモは黙ってそれを履いた。
いつも草履で、しかも裸足なので慣れないことであった。
歩き、一度右へ角を曲がり、その左の扉。
「ミラモ・アキシアル様をお連れ致しました」
執務室と書かれた扉に向かって、男はそう言った。
扉は前後に開閉する洋風のものだ。
少し離れたところから、入れ、という声が返ってきた。
首相以外にも何人かいるようだ。