表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【長編ダークファンタジー・完結済み】朗読者の戦記  作者: 佐藤さくや
立ち上がる者
35/80

35

 天空とまでは行かないが、低い雲よりも高い空だった。

 一人の男を追っていた。

 トルストも、一人だった。


 自分の部下が、やっとたどり着いた情報だった。


 ゆえに、ほぼ疑いはないと判断した。

 

 捕えるつもりだった。生きた状態で。

 だが、失敗した。逃げるだろうとは思ったが、自ら命を絶つとは思わなかった。

 つまり、本当の意味では裏切り者ではなかったのである。


 塑山の間者だった。


 そんな危険な男が首相の秘書だったのは、本当に驚いた。素性は調べてあったが、全て嘘だったということだ。


 どの国であっても、表の軍とは別に、隠密行動を主とする裏の軍を持っている。


 自分はおそらく、その中間に属した性質を持つ動きをする軍の一員であろう。


 だが、あの男は違った。完全に闇に包まれ、存在すら知られていない塑山の裏の軍の人間であった。


 そこまでわかったのは、あの男が死んだ後で、追っている時はただの間者と考えていた。そういう意味では、間者ですらないのかもしれない。


 トルストは、今年で四十八になる。


 練成における、リムの金属をやわらかなままにしておくことに、長けていた。


 通常なら、リムの金属で体を覆えば、それは堅い鎧となる。だが、自分は自らを素早く動かすために使った。


 他の朗読者でもやろうと思えばできるのだろうが、自在に操ることはできない。


 リムの金属はあらゆる方向に伸び、縮み、しかも下には軽いというおかしな性質を持つ。


 それを纏い、激しく動くと頭がついていかなくなる。体に染みついた感覚に全てをゆだね、練成し続けていることを意識すらせず、扱う。


 それで、やっと動けるようになるのである。

 長い年月をかけて、そうするしかない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ