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電話自体、どうやって声を遠くへ飛ばしているのかよくわからないが、新世界には線をまったく使わなくとも通じる電話が街にあふれていた。
しかも、その小さな電話にはダイヤルやボタンの類がない。画面に触れることで操作するのだ。
ミラモの知っている限り、その電話はスマートフォンと呼ばれている。
その旧型にあたるものは、ボタンがあり、携帯電話と呼ばれていた。
ミラモや他の朗読者たちの知る新世界は、新暦二千十四年であり、現在、旧世界は新暦千十六年であった。
つまり、スマートフォンや携帯電話は、この世界から千年ほど先の技術ということになる。
確か、新世界で電話が作られたのは、新暦千八百五十四年だったな。
いや、電話らしい電話ができたのは、それから二十年ほど後だったか。
グラハムという男が作ったはずだ。
ほとんどの人間がこの世界のことを旧世界と呼ぶが、進歩しているか否かではなく、決定的な違いがあるため、ミラモはその響きには違和感を覚えていた。
おそらく、この先も慣れることはない。