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 別の世界に来たという感じがする。


 ほとんど全ての建物が石でなく、木で造られているのである。


 最も雨が多く降るのは八月と九月らしいが、昨日からずっと降ったり、晴れたりを繰り返している。


 湿度がとても高い。皆、素肌の上に一枚、薄い服を羽織るように着ている。

 雨に濡れても傘はささない。


 真結は、城の敷地内にいた。昨日、無事にこの竜廓にやってきた。


 いくつもの建物が堀と塀に囲まれていた。

 それらを全て含めて城と呼ぶらしい。


 真結が城と思っていた高い建物は、一の丸、二の丸などと呼ばれ、他の背の低い建物は城下などと呼ばれていた。


 敷地の南側が城下で、広場などもあり、国の人間が住んでいた。

 小さな街のようなものだった。

 そして、本当の街はその外側に広がっている。


 まだ、敷地内から出ることは禁じられていた。だが、自分を見張る者は一人もいない。まったく、自由な人質もいたものだと思い、なんだかおかしかった。


 しばらく、自分の出番はない。この国に慣れる。

 それくらい時がかかるだろうと思う。


 なにせ、塑山とやり合うのだ。時だけで、足りないだろう。

 他にも、様々なものが必要になってくるはずだ。


 根島国、鉈欧、壬海、星老。

 この四国が力を合わせるためには、鉄が重要になってくる。

 鉈欧が旧塑山から独立した際も、そうだった。


 鉄は、貨幣の役割を果たす。どの国でも共通し、鉄の売買は国が支配している。売買だけでなく、炉の運営なども国が人を雇い、動かしていた。


 鉄は力になり、人を動かす。少なくともグルー大陸ではそれが全てであった。


 このグルー大陸に大量の鉄をもたらすのが、極南のフォート大陸を統べる羅亜南だった。羅亜南は鉄を各国に売り、その国の貨幣を集める。その金で朗読者を買うのであった。


 そして、朗読者はフォート大陸のすぐ西にあるウィーク大陸へと派遣される。


 戦争である。土地が広すぎて、いくつかの小さな抗争の集まりのように、事態は複雑になってしまっているが、間違いなく、ウィーク大陸北部の布馬ふばと羅亜南の戦争である。


 おもしろいことに、羅亜南が北に売った鉄は、最終的に布馬へ流れていくのだった。


 布馬と星老はかなり細いが、地続きとなっていて、星老は自国で製造した銃や弾などを布馬に売り、大量の穀物、果物、奴隷などを手にしている。


 この三つの大陸は、そうやってぐるぐると回り続けているのである。



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