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もう、四日経っていた。おかげで、一人と二匹になってしまっていた。
根島国の傭兵は、二月の二十八日に、塑山と星老の国境沿いに派遣されたはずである。そろそろ何か動きがあってもいい頃なのだ。
むしろ、向こうに着いたと同時に動き出すぐらいのものと真結は思っていたため、既に大分待っているつもりである。
西の国境沿いの動きが活発になれば、ここから南への道が開けると思っていた。街に入っている軍が、より東へ詰め、守りを固めるはずなのである。
いつもそうだった。西で星老が動けば、東で壬海が隙をうかがう。
塑山は東西に長い。軍の移動が間に合う距離ではない。そのため、右へ左へと、時期を見て先に人を動かす。
今回のは塑山が自ら選んだことだった。だが、真結は鉈欧が堕ちることはないと確信していた。いくら塑山が追月地区を広げようとしても、それは無理だ。
鉈欧にはもう、後ろがないのだ。今だって、きわどいぐらいなんだ。
そして、塑山に対する暗い恨みがあった。ゆえに民の結束は強く、朗読者は自ら軍に入ろうとする。やることはとても明確だ。南からの侵攻から国を守る。単純だ。
昨日の夜から、犬とふくろうは元の姿に戻っていた。共に街の中を抜け、平地が多くなったところで、死体を処理した。
土を掘って、首から下全てを埋め、顔だけ出るようにしてやった。と言っても、真結はただ見ていただけで、穴を掘ってそこへ入ったのは男自身であった。
どうせ、街のならず者か盗賊だ。
犬とふくろうは男の口から大きな水滴のような形で、滑るように出てきた。
血生臭くて仕方なく、川か沼で洗おうとしたが農業用の細い水路しかなかったため、表面を練成で削ぎ落としてやった。
新しくその分を足すのがめんどうだったが、皮を着せると表情がゆがみ、おかしくなってしまったため、その場で増やしてやった。
宿に戻って二匹を見てみると、ちょっとてきとうにやりすぎたせいか、皮が突っ張ってしまっていた。
二匹とも太って見えるのであった。
南の海辺にまで伸びている塑山の軍を、もっと東へ寄せる必要があった。
真結はその背後を抜け、根島国へと渡るつもりだった。
少なくとも、追月地区が騒がしいうちに行く必要がある。あと三日だけ待とうと思う。
壬海には、久光がいた。
三日で駄目なら少しばかり、手を借りることにしよう。




