18
辺りは暗くなった。
そして、夜中。全ては月の下である。
防御陣地のところまで戻ってきた。
星老や塑山の都合など、知ったことではない。目的があった。
ミラモは翼竜を召喚した。極端に小さい。ミラモよりも小さいか、同じぐらいだ。
塑山の軍から支給された武器を肩にかける。いわゆる、機関銃。毎度持たされるが、あまり使うことがない。
一人の朗読者が木箱を一つ渡してくる。ミラモはそれを脇にはさんだ。
「ミラモ、中身ぐらい確認しろ」
「了解」
ひもでしっかりと閉じられている蓋を少しだけ開ける。
内枠が動かないように支えてある。こちらは手榴弾の類であった。
それが、三つ。
下手をすれば、一人も殺せない。
星老を煽るのが目的であるため、それぐらいでも十分であった。
「使い方は、わかっているな。輪をつかんで引き抜き、ここを起こすんだ」
「はい。で、時間じゃなくて、地面にぶつかった衝撃で爆発するんですよね。わかってます」
翼竜の背に乗り、練成で足を固定する。翼竜は羽ばたき、地を軽く蹴る。
浮き、そして舞い、空の中へ飛んだ。木のない上の方が明るい。方向は、東。敵に背を向ける格好である。しばらく、低く飛んでいた。
風が、冷たくなっていく。
瞬時に、いつもの大きさの翼竜を呼び出し、ミラモはそちらへ飛び移った。小さい方は、音もなく消える。大きな翼はやはり頼りになる。
高く、高く、上を目指す。
まだ、進路は東。できるだけ、姿を隠したかったのだ。
西の山の頂辺りに、多分いる。
星老の見張りは、少数での奇襲を警戒しているはずなのだ。
見張りは東西に数段分かれているが、星老の軍は、まだ一つに集まったままだった。朗読者でなくとも、兵器さえあれば、それなりの数の人間を殺すことはできる。