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ミラモは、いわゆる傭兵であった。
根島国が時々塑山に貸し出す臨時の戦力である。
当然、塑山だけでなく、星老や壬海、極南のフォート大陸にある羅亜南などからも引き抜きの声はあった。だが、望めば今よりももっと贅沢な暮らしがこの根島国にいてもできるのであった。
食べ物、そして住む場所に困らず、シイカが読みたい本を好きなだけ買うことができる。
それでミラモは十分だった。
それに島は防御に優れている。
かつては攻撃を受けたこともあったが、塑山についていれば、それなりに安全であった。
東西は必然的に敵国となるが、こちらが何かしない限りは、向こうも何もしてこない。
塑山も、この根島国を他の国に奪われると困るので、兵を出してくる。
「長くても二週間だ。すぐ、戻ってくる」
受け取った布の袋をそのまま玄関に置き、ミラモはシイカの頭を二、三度軽く叩いた。
目に入った前髪を手の甲で払いながら、シイカは不安そうな目で見てくる。
「困ったことがあったら、おっさんにすぐに電話しろよ」
「ミラモはあのおじさんに迷惑掛けすぎなんだよ、いつも。そのせいで僕は気を使わなくちゃいけないんだよ。あのおじさんも、僕に気を使うし」
「いいんだよ。俺は稼ぎ頭なんだから、多少のわがままは許されるってもんさ」
あのおっさんがシイカに気を使う理由は、なんとなくだがわかる。
首相付き護衛課の課長。
ロイ・トルスト。
初めて会った時、ふざけて新世界のロシア人みたいな名前ですねと言うと、途端におっさんは不機嫌になった。
あれからもう、五年が経っているのか。