39話ー潜入開始
城の回りは30cmほどの厚い壁に囲まれていて、入り口は1つ。当たり前だけどその入り口には警備兵がいるので使えない。騒ぎになるような事は極力避けたいし。
となると、やっぱり壁を登っての侵入しかない。
「…と、言ってもねぇ」
壁の上に登った私は回りを見渡す。そこには、まるで誰かが侵入してくるとでも分かっているように、警備兵の数がいつもより増員されていた。
「偶然じゃないでしょうね、これは」
誰かが侵入してくるじゃない、私達の誰かが侵入してくる事がわかっているからこそ、警備兵が増員している。だけど、それと同時にわかることもある。
「…やっぱりユウはここにいる」
ユウを捕らえているからこそ、ここまでの警備兵が増員されているはずだ。でも、ユウはどこに…?
「…定番は、地下牢かしら」
どこかの部屋というのもわかるけれど…。
「…あまり時間はかけたくはないのだけど」
仕方ない。とりあえず地下牢に行きましょうか。
何十人といる警備兵に見つからず、城の中に侵入することができた。
王都の警備兵といってもこんなものね。城内で訓練ばかりしてないで、外出て魔物と戦ってもっと強くなりなさい。
「…えっと、たしかこっちだったわね」
暗闇の中は冒険者生活でなれているので、私の目には薄暗い感じで見えている。
以前、あのクソ勇者の鍛えに行ったときに城の構造はあるていど把握しているので、迷うことはないはずだ。
「…それにしてもいつみても無駄に豪華な通路よね。城って」
回りを見ながらちいさく呟く。本当どうしてこんなにもお金をかけるのかしら。
……そういえば私のアイテムボックスには大量のお金が入ってるのよね。これが終わったらユウにかわいい服とか買ってあげましょう。
「…ん。ここね」
そんなことを考えながら、通路を進むと下へと続く階段を発見する。
ここは、一本道で隠れるところもない。牢屋には、誰かしら見張りがいるはずだし、慎重にいかなくちゃ。
「これを……ここ」
私はアイテムボックスから転移札を階段の入り口に張り付ける。これは、以前私がまだソロで活動していたときに、旅人を守ったらお礼にとくれた魔道具だ。
その札に私の魔力を込めておけば、いざというときにこの札の所に転移することができる。転移の仕方は、普通に思えば大丈夫だ。
「…ふぅ」
階段をゆっくりと足音をたてずに降りる。ここは入ったことないから一体どのくらい降りれば良いのかわからない。油断しないようにしなくちゃ。
体感で5分くらいだろうか。下の方に頑丈そうな扉が見えた。
「…開かないか」
ためしに軽く押してみたけどビクともしない。…壊したらバレそうだし。どうするか。
…カツ…カツ…カツ……
「…っ!?」
後ろから誰かが降りてくる音が聞こえた。…やばい。非常にやばい。隠れるところがない
「…使い捨てなのに……!」
アイテムボックスから一つの札を取り出す。これは5分間透明になれる札と旅人は言っていた。これはあの転移の札と同じく貰ったやつだ。…2枚しかないけど。
でも、ここで見つかるわけにはいかないし、ここで1枚使うしかない。…あとであの旅人でも探そうかしら。
札に魔力を流すと、札が一瞬薄く光、すぐに消えていく。
「…これで消えたのかしら」
自分だとよくわからない。でも、祈るしかない。
…カツ…カツ…カツ……
上から灯りをもってやって来たのは兵士の1人だった。わたしはその兵士に当たらないよう壁に張り付く。
…壁が冷たい。でも我慢。ここで見つかったら駄目だもの。
なんとか兵士に当たらず、後ろに移動する。その兵士は扉の前でガサゴソと何かを探すとカギを取り出した
…よし! これで入れる!
ガチャリと兵士は扉のカギをあけと、中に入っていく。
「……扉開けっぱなしなのね」
なんとも不用心なと思いながら、ありがたく中に入らせて貰った
次投稿遅いです
もしよろしければ、「無自覚少女の異世界大冒険」というのも書いているので、見ていってください。
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