第36話ークレーター
次の日。
「ええ!? 指名依頼!?」
「はい。リリィさんのパーティーに指名依頼が入っています」
今日もユウのため依頼を受けようとギルドに来たけど、指名依頼が入っていると言われた。……昨日あんなことがあったのに、これはちょっとやばいわね。
「内容は?」
「来週貴族パーティーがあるので、その時に使うパーティー料理の材料を集めてもらいたい。材料は、コカトリスの卵、ジャイアントブァッファローの肉の2つです」
…コカトリスの卵とジャイアントブァッファローですって。AランクとSランクじゃない……! しかも、
「コカトリスとジャイアントブァッファロー生息地は真逆よ。1週間で持ってくるのは無理ね。そのどこぞのお貴族様には、他の人に当たるよう言いなさい」
どう考えてもそんなことは、その貴族もわかっているはずなのに、どうしてそんな無茶な依頼を。…やっぱり勇者が関わってきそうね。
目的は、ユウとの分断…かしら。ユウの力を知っているのは私達だけだから、高ランクの依頼をだせば、ユウを置いていくとでも思ったのかしら。
「そうなのですが……その……どうやら、移動手段は貴族様の方で準備してるので、受けてほしいと……」
ちらちらと、私を見る受付嬢。
「言い方を変えましょう。…依頼は受けない。そうその貴族には伝えなさい」
慌てる受付嬢を無視して、みんながいるボードの所に向かう。
「…どう思う?」
「やめた方が良いでしょうね」
「うん。完璧にユウ狙い」
「そ…そうなんですか…!?」
私の問い2人は思った通りの答えを出してくれる。
そうこれはどう考えても勇者が手を引いている可能性しかない。それにもし勇者との関係がなくて、本当にただの偶然なのだとしたら、運が悪かったとしか言えないわね。
「ユウが強いのはわかるんだけど、だからといって1人にしていい理由にはならないからね」
「リリィ…!」
ユウが感極まった声をあげる。
ふふ、これで私に対する好感度が上昇したわ。これなら少しくらい変なことをしても、
「リリィ……」
「…ん? どうしたの?」
みんなが私を見つめてくる。ユウにいたってはジト目だ。本当にどうしたのかしら?
「心の声漏れてるわよ」
「変なことはしちゃだめ…!」
……結局下がった。
今日の依頼はウルフの討伐。
ウルフは前にユウが時魔法で倒したやつね。今回は時魔法はなしだけれど、まぁユウにとってはなくても余裕でしょ。
「こっちにくる」
リュミナがウルフが来ることを教えてくれる。さて、ユウがバスターソードをどう使うか見ものね。
「グルゥゥゥ!」
数は3体。どれも普通のウルフだ。
「いきます! …りゃあぁぁぁぁぁ!」
ユウが高速でウルフに近づきバスターソードを振り落とす。
ドオォォォォォォォォ…ン……
……クレーターができた。
…何をいってんだと思ってる人がいると思うからもう一度言うわ。
クレーターができた。
「リリィ! ウルフがどっかいった!?」
クレーターの中心でユウが後ろを振り向き、焦ったように言う。
ウルフがどっかいった…ねぇ。ゆっくりとユウに近づき肩をつかむ。
「…ユウが、消し飛ばしたんだからね?」
「…え?」
やっぱり、ユウのステータス聞いた方がいいかもしれない。
そう思う私であった