第27話ー王都
王都アレクドリア。
中央に白を基調とした大きなお城が建ちその中には国王がいる。その城の回りには、何百個という店や、民家がいくつも建っている。
そしてそのいくつもある中の1つ。冒険者ギルドに私達はいた。
「だーかーらー! これよ! これにしましょ!」
「だから駄目に決まってるでしょう! ユウちゃんを連れていけないでしょうが!」
「ユウはどれが良い?」
「え、えっとぉ…この…薬草採取…とか……」
…薬草採取……ですってぇ……!
「むしろそれを受けたら私は何をすればいいのよ!」
「薬草採取なんだから薬草採取しなさい!」
「リリィばか」
「…あ…あの……あのあの……」
…ばっ!? …こ…こいつらぁ……!!
「私は! 天才! なんだからぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
依頼名:薬草採取(常設依頼)
内容:薬草の採取。
報酬:薬草10本で銅貨1枚。
ギルドでユウがやりたいといった薬草採取の依頼を受け、ユウ達と共に森を散策中。私はユウに後ろから抱きつき、頭の上に顔をのせる
「はぁ…疲れたわ」
ユウの身長が私より低く、なおかつ、ちょうど良い高さなので、ついついのせてしまう。
「うぇ!? まだ出たばかりですよ!? …そ、それと…頭を、のせないで……」
ユウは、恥ずかしいのか少し顔を赤くしている。そこで私はふとひらめいた。…耳に息を吹き掛けられたらどんな可愛らしい反応をしてくれるだろうか。と。
「…ふふ、ユーウぅぅぅぅぅ!?」
「疲れたら私が抱っこしてあげるわ。…もちろん、お姫様だっこでね?」
「ちょ…下ろしなさい!?」
ユウに息を吹き掛けようとしたら、その前にシエルに捕まった。シエルめ、私がやろうとしてる事に気づいたわね。さすがは、エルフ。…いや、エルフは関係ないか。
「ユウ、いいこいいこ」
「…えへへ」
リュミナは私がシエルに捕まったことをいい事に、ユウの頭を撫でている。おかしいわね。ユウの反応が私と違う。というか、ユウにそんな顔されたことないのだけれど。
「…っリュミナぁぁ……!」
リュミナを睨む。
「リリィは、やることがいちいちおかしい。こうやって撫でるだけなら、ユウは喜ぶ」
確かに、リュミナに撫でられているユウは天使といっても良いほどかわいい。私だって撫でるだけならできるわよ。でも…でもねぇ……
「…その顔を見ると、ついつい……ね。2人は私の性格知ってるでしょ」
「ええ。もちろん」
「うん」
2人して私の言葉に頷く。はぁ…昔から我慢が苦手な性格なのよね。欲しいものがあったら何としてでも手にいれたいし、助けたいと思ったら、みんなの言葉無視して助けにいきたいし。
今だって、ユウのこんな天使みたいな顔を見たら、ついつい抱き締めたくなっちゃうのよね。
「「だから、嫌がられる」」
「ぐっ…!」
シエルとリュミナの容赦ない言葉が私の心にグサッとくる。
「あ、あの!」
ユウがリュミナのなでなで攻撃から逃げ出し私のところにやってくる。
「どうしたの?」
「その、私はリリィ…さんのこと、す、好きですよ? …ただ、抱きつかれると、恥ずかしいだけで…嫌じゃ…ないです」
……………
「…シエル」
「なによ」
「ユウが可愛すぎてやばい」
「そうね。やばいわね」
顔を赤らめさせながらもじもじしてるユウ。
「…シエル」
「なによ」
「これが萌えというやつかしら」
「…そう。お望みとあらば燃やしてあげるわ」
ボッと、リュミナの持っている杖から炎が現れる。
「そっちの燃えじゃないわよ! 萌えよ! 萌え! 前に来たクソ勇者が言ってたじゃない!」
「知ってるわよ。冗談よ。冗談」
クスクスとシエルは笑う。…本当に冗談なのかしら。まったく。
「…勇者ですか?」
「…ん? うん。そうよ」
ユウが勇者の事について気になるらしく、聞いてくる。
「1ヶ月前かしら。王都の城で勇者召喚が行われたのよ。勇者召喚というのはね、こことは別の世界、異世界からこの世界に勇者を召喚んすることね」
「…異世界」
「それでね、その召喚した勇者を育成するために1週間だけ、色々と戦闘に関することを教えてあげてくれって頼まれたのよ。王様に」
「す、すごいですね」
「王様のお願いだから聞いたんだけど、その勇者ってのがムカつくやつでね。俺が勇者なんだから、俺のいうことを聞けだとか。俺の女になれとか。とにかくそんなクソなやつでね」
ユウの頭が良い位置にあったので撫でる。
「…ん。その人は何かよくわからない言葉とかって使っていましたか?」
「んー、萌える、の他だと、こめが食いたいとか、げーむとまんがって言葉も使ってたはね。たぶん、元の世界の道具かなにかだと思うけど」
あー、思い出すとイライラしてくるわね。
「ユウ。私の上にこない?」
「…へ? …い、行きません……!」
ササッとユウは顔を赤くしリュミナの後ろに隠れてしまった。
「どうしてあなたはそこで…」
「よしよし」
シエルは呆れた声をだしリュミナはユウを撫でている。しまった。ほぼ無意識にやってしまった。
「…まぁ、とにかく依頼やりましょうか」
「リリィは、変なことを言わないこと」
「はいはい」