表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
6/13

6話 名前で呼んでください

「そろそろ帰る気になったか?」

「あら、この紅茶おいしいですね。産地はどこなんですか?」

「魔界の北部のガルン産だよ。お姉さまのために、がんばってとってきたの。他のお茶はとてもまずいから、わざわざ北部まで行ってきたの」

「ありがとう、ユニちゃん。なら、大切に味わいますね」

「えへへ~♪ クッキーも焼いたんだよ。よかったらどうぞ」

「あらまあ。これは素敵ですね。ありがとう」

「話を聞けやぁああああああああああぁぁぁっ!!!!!」

「ぴゃあっ!?」


 サタンが絶叫して、ユニちゃんが驚いて、その場で飛び跳ねました。


 まったく、騒がしいですね。

 おやつの時間は静かにしろと、両親から教わらなかったんでしょうか?


 サタンには品性が足りませんね。

 品性欠乏症です。

 お薬を処方した方がいいでしょうか?

 でも、サタンのことだから、薬が苦いとか文句を言いそうですね。

 めんどくさい人ですね。


「めんどくさいのはお前だぁあああああっ!!!」

「どうして、私の考えていることを?」

「普通に口にしてたからな!? お前がいつもしてることだろ!? 天丼はもういいんだよっ」

「これは天丼ではなくて、定番ネタですよ? なので、これからもどんどん実行していきますね。やりましたね、うれしいでしょう?」

「ケンカ売ってんのか、お前……?」

「特売中です♪」

「よーし、買った。そのケンカ、買ったぞ? ボコボコにしてやるからな」

「女の子相手に本気になるなんて、器の小さい男……だからダメなんですよ。ダメダメ魔王の称号をさしあげますね」

「お・ま・え・はぁああああああああああっ!!!!!」


 ガリガリとサタンが頭をかきむしり、叫びます。


 この人、出会った時から叫んでばかりですね。

 喉を痛めたりしないんでしょうか?

 自分を誘拐した相手ですが、ついつい心配になってしまいます。


「えっと、えっと……お姉さま?」

「そこの変な人は気にしないでいいですよ。それよりも、紅茶とクッキー、ありがとう。おいしくいただきますね」

「あ、はい♪」


 にっこりと笑うユニちゃん。

 サタンと違い、かわいらしさ100%です。


「じゃあ、ユニは訓練をしてくるね。お姉さまを守るために、ユニ、強くなるのっ。お姉さまはひ弱な人間だから、ユニが守ってあげないといけないの。仕方ないの」

「あらまあ。頼りにしていますね」

「うんっ!」


 牢屋を後にするユニちゃんを笑顔で見送ります。

 それから、サタンに向き直ります。


「サタンも、もう戻っていいですよ」

「あ、そうか? 悪いな」


 くるりと踵を返して、


「って、なんで俺が帰ることになってやがるっ!!!」


 ぐぐっと詰め寄ってきて、再び絶叫。


「うーん、なかなかやりますね。今のタイミング、今のツッコミの仕方……さてはあなた、名のある芸人ですね?」

「お前というヤツは……!!!」

「あっ、それ」

「なに?」

「それ、どうにかなりませんか? 『お前』じゃなくて、私には『リーゼ』という名前があるのですが」

「んなこと知るか。いちいち人間なんぞの名前を呼んでられるわけないだろ」

「そういうの、よくありませんよ? まずは、相手の名前をきちんと覚えて、きちんと口にすること。それが、お互いを知る第一歩になるのですから」

「お前を知るつもりなんてない」

「共に和平を誓った仲じゃないですか」

「いつの間にそうなった!? お前っ、記憶の捏造も激しいな!」

「そんなに褒めないでください」

「褒めてねぇよっ!!!」

「そんなわけで、名前で呼んでくれませんか?」

「断る」


 私のお願いを断るなんて……

 もしかして、この魔王、ツンデレでしょうか?

 内心で、『お、お前の願いなんて聞いてたまるもんか! でも、ちょっとなら……』とか思っているんでしょうか?


 ……普通に考えて、それはキモいですね。


 男のツンデレは流行りません。

 やっぱりツンデレは、ユニちゃんみたいなかわいい子に限りますね。


「お前、また変なことを考えてないか?」

「またお前言いましたね。名前で呼ぶ気ゼロですね」

「ふん。人間などを名前で呼ぶなんて、ありえないな」

「頑固ですねえ」


 基本的に、サタンは人を下に見ているんでしょうね。

 対等な相手と認めていない。

 だから、名前で呼ばない。


 これは問題ですね。

 サタンがこんな調子では、私の目的である、人と魔族の和平を成立させることができません。

 和平のため、サタンを改心させるため、まずは名前を呼び合うところから始めたいと思ったのですが……


 さてはて。

 どうしたものやら。


 ……よし、決めました。

 まずは、言質を取るところから始めましょう。


「私を名前で呼んでくれないのは、私が人間だからですか?」

「そうだな」

「ツンデレというわけではなくて?」

「どうしてそういう発想に繋がる!?」

「なるほどなるほど。では、なぜ人間だとダメなんでしょうか? そこのところ、詳しく教えてくれませんか?」

「そんなことを教える義務も義理もないな」

「教えてくれたら、少しはおとなしくしますよ?」

「よしっ、いいだろう!」


 いきなり態度を180度変えました。

 私、そこまで迷惑かけていたんでしょうか……?


 だとしたら、申し訳ない……なんてこと、欠片も思いませんけどね!

 むしろ、それだけサタンをおちょくることができていたんだ、と喜びますね!


「人間は愚かな生き物だ、そう思わないか?」

「突然ですね」


 私は自虐趣味はないので、サタンの意見に同意はしません。

 自分で自分のことをバカにして、何が楽しいんでしょうか?

 むしろ、私はこれ以上ないほどに立派な人だ、と胸を張りますね。


「他社を妬み、恨み、憎み……それしかできることがない。その上、同族で殺し合う……その刃は多種族にも向けられて、多数の種族が絶滅した。これほど愚かな種を、俺は見たことがない」


 魔族も、ついこの前、内乱を起こしていましたよね?

 あと、普通に動物などを乱獲していますよね?

 それと、ハイエルフは、確か魔族に滅ぼされたような?


 そんなことを思いましたが、サタンが自分に酔っている感じで演説しているので、とりあえず黙っておきます。


「愚行を繰り返しながら、己を省みることなく、未だにつまらない行為を繰り返す……そのような種族を、どうして尊敬できる? できるわけがない。そう思わないか?」

「なるほど、なるほど」

「我ら魔族と人間は対等ではない。人間のような野蛮人と対等であってたまるものか」

「そうですか、そうですか」

「人間は未熟な種族だ。ならば、より上位で完成された存在……俺たち魔族が管理してやるべきだろう。そうすることで、人間は真に正しい平和を手に入れることができる」

「ほうほう……ぷっ……くくく」

「……なんで笑っている?」

「いえ、だって……あまりにテンプレなことを言うものだから、逆におもしろくて……」

「俺の意見が間違っているとでも?」

「さあ、どうでしょう?」


 サタンの言葉の全てを否定するつもりはありません。

 世の中、どうしようもない人間がいることは事実ですからね。

 王宮なんかで過ごしていたものだから、そういう人間は多数見てきました。


 ですが、それは人の一面でしかありません。


 サタンが、人間の全てを理解した上で、今の台詞を口にしていたのならば、和平は諦めないといけませんが……

 どうやら、そういうわけではなさそうですね。

 彼は、人間の一面しか知りません。

 ならば、考えを変えることはできるでしょう。


 そのための一歩として、私のことを名前で呼んでもらいましょう。


「勝負をしませんか?」

「なんだと?」

「サタンが人のことをどう見ているのか、それはよくわかりました。中二っぽ……とてもよく考えていたのですね。見た目に反して」

「色々と余計な言葉が多いよなぁ!?」

「ですが、私もここで退くつもりはありません。というか、これから先、ずっと『お前』と呼ばれるのはちょっと不快です。なので、ちょっとした勝負をしませんか? 私が勝ったら、サタンはちゃんと名前を呼ぶ。私が負けたら、そうですね……おとなしく人間界に帰りましょう」

「その勝負受けた!!!」


 即答でした。

 どれだけ私に帰ってほしいんでしょうか。

 人間の小娘一人、手に負えないなんて……


 やれやれ、情けない魔王ですね。

 今度から、心の中では『駄王』と呼ぶことにしましょう。


「だからそういうことは心の中だけにしておけやぁあああああっ!!!?」

「あらまあ」

ブクマや評価が、更新を続けるモチベーションになります。

少しでも「面白い」「続きが気になる」と思っていただけたら、

ブクマや評価をしていただけるとうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ものの新作を始めてみました。
↓のリンクから飛べます。
勇者パーティーを追放されたビーストテイマー、最強種の猫耳少女と出会う
よかったらどうぞ。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ