4話 男の人の意地ってくだらないですね
決まりました。
今の私、かっこいい!
ピンチに颯爽と現れるヒーロー。
一度、やってみたかったんですよね。
これでサタンも私のことを見直して……
「こんな時に邪魔するつもりか!?」
あれ?
「くそっ、今はお前の相手をしてるヒマはないんだ! どいてろっ」
あれ? あれ?
「おいっ、ユニ! こいつのおもりをしてろ!」
あれ? あれ? あれれれ?
私、邪魔者扱いされています?
「お、お姉ちゃん……雑魚一般人だとここは危ないから、私の後ろに……びくびくと震えていてもいいですよ?」
「いえ、あの……私は援軍に……」
「あっ……ま、魔王さまが戦いに……早く離れましょうっ。魔王さま、周りを気にするほど繊細な方じゃないから、普通に巻き込まれるよ」
「えぇ」
反論する間を与えてもらず、私は後ろに連れて行かれます。
代わりに、サタンが前に出ます。
イフリートと対峙して……
次の瞬間、二人の姿が消えました。
いえ。
姿が消えたと錯覚してしまうほどのスピードで動いて、剣で切り結びました。
ゴォッ!!!
刃と刃が激突して、それだけで衝撃波が生まれます。
周囲にいた魔物が吹き飛ばされました。
巻き込まれたらたまらないと、敵味方共に、慌てて避難します。
「このクソガキがぁあああああっ!!!!!」
「おとなしく魔王の座を明け渡せっ!!!!!」
二人の闘気が激突して、嵐のように吹き荒れます。
その中心で、苛烈な攻防を繰り広げるサタンとイフリート。
その光景に、私は違和感を覚えました。
「うーん?」
なんで、魔王と四天王の一人が互角なんでしょうね?
普通に考えて、圧倒的な力の差があると思うんですが……
その差がないから、反逆されたんでしょうか?
やれやれ、情けない人ですね、サタンは。
「ぐあっ!!!?」
力比べに負けて、ついに、サタンが撃ち落とされた。
ドゴッ、と地面に叩きつけられます。
まるで隕石ですね。
「おーい、生きてますか?」
「ぐっ……や、やかましい。っていうか、お前、まだこんなところにいたのか」
「いますよ。助けてあげますよ、って言ったじゃないですか」
「いらんっ、帰れ!」
「なんでそんなに拒むんですか? 私が人間だから? 関係ないから?」
「男が女にすがりつけるわけがないだろう!」
「……はぁ?」
え? この人、マジで言っているんですか?
今時、そんな全時代的なことを真面目に言っているんですか?
「アホですか?」
「んなっ!?」
サタンが何か言おうとするが、私はそれを許さずに、さらに畳み掛けます。
「あなたが名も地位もない、ただの雑魚なら、それも構わないでしょう。好きに生きて、好きに死ぬといいです。ですが、今のあなたは魔王なんですよ? 勝手に死ぬことは許されません。あなたが死んだら、付き従う魔族はどうなるんですか? イフリートが王座についたら、どんな目に遭わされると思っているんですか? わかっているんですか? わかっていませんよね。だから、そんな適当なことを言えるんです。いいですか? ズバリ言いますよ? あなたのしていることは、ただの自己満足ですっ!!! 魔王失格ですねっ、今すぐ田舎に帰って畑を耕してきてはどうですか!?」
「むぐっ……うが……ぬぐぐぐ……!?」
小娘が生意気なことを、というような顔をしていますが、でも、私の言っていることは正しいことです。
現に、サタンは反論できません。
はい、論破。
やれやれ。
魔界の王さまも大したことありませんね。
これじゃあ、魔界の未来が心配になってしまいますね。
いっそのこそ、イフリートに代替えしてもらった方がいいんじゃないでしょうか?
「だから、全部聞こえてるんだよぉおおおおおっ!!!?」
「あらまあ」
「あらまあ、じゃねぇえええええぇぇぇっ!!!!!」
「あらまあ」
「ぶっとばす! イフリートより先に、お前をぶっとばしてやるっ!!!」
「はい、それはまた後で。とりあえず、うるさいので黙ってくださいね」
「はぐっ!?」
サタンのみぞおちに一撃。
完全に不意をつかれたらしく、サタンは空気を求めるようにパクパクと口を動かして……そのまま気絶した。
「ユニちゃん、でしたっけ?」
「……ふぇ!?」
一連のやりとりを唖然と眺めていたユニちゃんが、ビクッと震えて我に返りました。
「この人、お願いしますね。すぐに終わらせてきますから」
「え? え? え? すぐに……えぇえええ???」
説明している時間はなさそうなので、強引にユニちゃんにサタンを預けました。
イフリートに向き直ります。
「そこのあなた! 今度は、私が相手になりますっ」
「……なんだ、お前は?」
「魔王サタンの娘です!」
「ほう……サタンに娘がいたか。それは知らなかったな。ふむ……言われてみると、どことなく面影が……」
「なわけないじゃないですか。ウソですよ、ウソ。ぷーくすくす、簡単に騙されちゃって……恥ずかしい人ですね」
「……コロスっ!!!」
「わわわ!?」
いきなり斬りかかってきました。
沸点の低い人ですね。
ちょっとからかっただけなのに……
ダメですね。
この人は、からかうに値しない人です。
「どこのどいつか知らぬが、俺を侮辱したこと、後悔してあの世へ行くがいい!」
「私、120歳まで生きて大往生する予定なんです」
イフリートが振り落ろした剣を素手で受け止めます。
「なっ!?」
イフリートは動揺していますが、これくらい、私にとってなんてことのない普通のことなんですよね。
伝説の剣ならともかく、ただ燃えてるだけの剣なんて怖くありません。
レベル1億のステータスを舐めないでくださいね?
「バカな!? 魔王すら退けた俺の剣が、こんな小娘に……!!!? ありえないっ、このようなことはありえないぞ! 間違っているっ」
「テンプレの台詞ばかりですねー。もうちょっと、楽しいこと言えないんですか? ほら、私を楽しませてください。おもしろいことを言ったら、ちょっとは手加減してあげますよ? ほらほら、イフリートさんの本気みてみたーい♪」
「この小娘がぁあああああっっっ!!!!!」
「あっつ!?」
イフリートが激高すると同時に、全身が激しく燃え上がりました。
天まで届きそうなくらいの火柱が立ちます。
「殺すっ、殺すっ、殺すっっっ!!!!! この俺を愚弄する者はコロスッ!!!!!」
「あー……冗談が通じないなんて、心の余裕がない証拠ですよ? ダメダメですねー」
今の絶対に煽ってただろ……なんて声が周囲から聞こえてきましたが、無視します。
きこえませーん。
「そんなに熱いと、迷惑ですよ、あなた? というわけで……」
私は拳を握りしめて、
イフリートの懐に潜り込み、
体重を乗せて、
炎の体を打ち貫くっ!!!
「ぐはぁあああああっ!?!?!?」
イフリートの体がよろめいた。
「おー、今の一撃を耐えますか。さすが、四天王と呼ばれるだけのことはありますね」
「あ、ありえんっ……なんだ、コイツは……我は魔族なのだ! 最強の一角である、四天王なのだ! それを、こ、このような小娘に……たかが人間ごときに……ありえんっ! 絶対にありえないぞっ!」
「現実が見えていないみたいですねー。逃避するのが悪いこととは言いませんが、戦闘の最中は、さすがにどうかと思いますよ」
「人間は人間らしく死ねぇっ!!!」
「もうちょっと、体を動かしてもいいかなー、なんて思いますが……あっけなく終わっても、見ている方もつまらないですしね。でも……あなた、危ないので、もう終わっていいですよ♪」
一度、距離をとり……
そして、駆ける!
空気の壁を突き破る感覚。
音速を越えて……
その速度と勢いを乗せて。
イフリートを殴りつけた!
「さようなら。あなたの出番は終わりですよ。おやすみなさい」
「ば……か、な……!!!? ばかなぁああああああああああっ!!!!!?」
私の一撃で、炎の塊が弾けて……
吹き飛ばされて……
どごーんっ!!!
「あ」
吹き飛んだイフリートが魔王城の塔の一つに当たりました。
ごがががっ、と派手な土煙を立てて塔が崩れ落ちました。
「……てへ♪」
「てへ、じゃねぇええええええええええぇぇぇっ!!!!!」
意識を取り戻したサタンが絶叫するのでした。
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