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読み切りモノ

成長できないままのボク

作者: 冥月 霜華

※内容が非常に暗いです。人によっては、不快感等を催す可能性があります。

閲覧は自己責任とさせて頂き、読了後の不快感等について、作者は責任を負いません。


 生きている以上、人は身も心も成長していく。

 なのにボクは、体ばかりが大きくなって「心」は全然育っていない。


 生まれて数年で、ボクは父を失った。

 母からは「パパは他に好きな人ができたんだって」と言われた。

「好き」の種類なんか知らなかったから「そうなんだ」と何日かは帰りを待った。

 父は未だ帰ってこず、ボクが「大人」と呼ばれる歳になってから出来た男の子が傍にいるらしい。


 父がいなくなって数年後、母は知らない男の人を連れてきた。

 最初は優しかったけれど、だんだんその人は意地悪になった。

「金が無いのに」「俺の性処理をしろ」そんな言葉聞きたくなかった。

 暴力は無くて、でも、男の人の思う通りにしなければ、怒鳴られた。

 妹が母に言いつけて、少しだけマシになったけどボクは耐えられなくて妹と共に逃げ出した。


 助けてくれる大人はいなかった。

 大人と呼ばれる歳になって、でも、ボクは子供のままだった。

 何が「良し」で何が「悪」か分からない。

 空気なんて読めないし、何をすればいいのかわからなかった。

 ただ、妹との暮らしを守るのに必死だった。


 ボクは「好き」の種類を覚えた。

「お仕事」で怒られ続けるボクに

「何を考えているかわからない」と親戚に気味悪がられていたボクに

「もういいんだよ」と言ってくれた人。

 その人の傍は、暖かくて、落ち着けた。


「役立たず」

 お仕事をしなければ、お金を持ってこなければそう言われたボクの生活は変わった。

 暖かいその人は、人を怖がるボクに居場所をくれた。

 ずっと家にいても怒らず、好きなことやお勉強のやり直しをさせてくれている。

 少しずつ、世界が広がっていく。

 色々な人とつながって、お勉強しなくちゃいけないことは「ゆっくりでいい」と笑ってくれる。

 

 守ろうとした妹は、母の元に。

 母の元にいた男の人は何処か別の知らない所に。

 ボクは妹や母と離れて、暖かい人の傍に。


 未だ子供の心をしたボクは、「変化」しないことを「悪いこと」と思わず、成長しないまま今日という日を生きている。

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