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怠惰な日常  作者: 帽子
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第15話

ナナシ


「冒険者ギルドですか?」


食事も終わり各々自由にしているとジルさんから冒険者ギルドに向かうように言われた。


(そういえば魔族の大陸に冒険者ギルドなんてあったか?少なくとも5年前はなかったし、冒険者ギルドは人族の大陸にしかなっかったはずだ。リリアの話で少し出てきたんで人族の大陸の事を想像してたんだが……)


「どこの冒険者ギルドに行けばいいんです?」


「怠惰領にあるシャーロット、君が5年前まで過ごしていた場所だよ。」


「……ひょっとして。」


「あぁ、君が相談窓口として活動していた場所だ。今はそこを改築して冒険者ギルドとして扱っている。」


(へぇ、あそこが。)


「そもそも魔族領に冒険者ギルド建てたんですね。冒険者として活動している魔族どれくらいいるんですか?」


「出来たのはここ最近だな。人族の間で今流行っているようでな。魔族も取り入れてみたんだが、思いのほか若い者の間で流行ってな。それぞれにパーティを組んで活動している。中には人族とパーティを組んでいる者までいるほどだ。」


「へぇ、そうなんですか。意外でしたが、確かに魔族大陸には未開拓地がまだ沢山ありますからね。」


「ちなみに君が今住んでいる森だがね。禁忌の森とまで呼ばれていて難易度はSSSとされている。」


「え、何でですか?」


「君は怠惰の魔力の影響を受けないから分からないだろうが、あの森は怠惰の魔力が充満しているからね。さらに住んでる魔物は凶悪なものばかりだろ。まともに攻略するのはほぼ不可能とまで言われているんだよ。」


「あー、それは確かに俺の責任ですね。」


俺は基本的に怠惰の魔力を使って魔法を使う。魔法の練習で使った魔力がそのまま森に拡散していったのだろう。だから耐性のない人間は体に不調をきたす。ある程度耐性のある魔族でさえ例外ではない。そんな魔力の充満した森で生活できる魔物は限られてくる。魔法に対して耐性のないゴブリンなんかは動けなくなってしまい、生活どころではなくなるのだ。自然と森に住む魔物は凶悪なものに限られてくる。知り合いの妖狐なんかは静かでいいとか言っていたが、争いの好まないものも集まってくる。妖精が集まるのも、怠惰の影響を受けない上に、静かで襲われる心配がないからだろう。


「だけど基本的に大人しい奴ばかりですよ。こちらから襲い掛からない限り、害はないはずなんですが。」


「あのなぁ、観光しに行くんじゃないんだから、珍しい魔物見つけて戦わないって訳にもいかんだろ。」


確かにそれはそうだ。冒険者への依頼には魔物の討伐も入ってくるだろうし、部位によっては高値で売ることもできる。だがなぁ、あの森にいる奴らは別格なんだよな。誠意を持って接していれば、向こうも誠意を持って接してくれるんだが。


(妖精を見るだけだったら十分観光目的として成り立つと思うんだがなぁ。)


「まぁ、君の森の事は別にいい。とりあえずギルドの方まで行ってくれないか?」


「分かりましたけど、なんでまたギルドに?俺は冒険者になるつもりは特にないですよ。てっきり今度の祭りの事で雑用させられるんだとばかり思いましたよ。」


「祭りの方は夜に全員揃うことになっているからね、その時に話すよ。ギルドの方に行ってもらいたいのは、冒険者登録をしてギルドカードを発行してもらいたいのだ。今は身分証明書としても使えるからね。君は人間だからこの魔族大陸で身分を証明できるものがないだろう。カードを持っていないと利用できない施設などもあるし、どの大陸でも使用できるからとっておいてもらおうと思ってね。確かクロウやカナン、ベルも登録してるから、一緒に組んで活動してもらおうとも思っているよ。」


成る程な。確かに今の俺は身分を証明できるものを持っていないから、その申し出は助かるな。クロウ達も登録してるのか。また連れまわされるんだろうなぁ。のんびり過ごしたいもんだが、そうはいかないだろう。


「分かりました。それじゃ今から行ってきますよ。」


「そうそう、私も依頼を出してたからそれも解決してくれると助かる。」


「依頼?何をすればいいんですか。」


「行けば分かるよ。それじゃ、行ってらっしゃい。」


(はぁ、嫌な予感はするが仕方ない。どうせしなくてはならないんだ。さっさと済ませてしまおうか。)


食堂を出て城の入り口まで歩いていくと、入り口にエリカさんが立っていた。


(掃除をしているのか。邪魔にならないように出ようかね。)


「ナナシ様、お出かけですか?」


なるべく邪魔しないように出ようとしていたんだが流石にバレてしまった。


「あぁ、ジルさんから冒険者ギルドの方まで行ってくるように言われてね。ちょっと出かけてくるよ。」


「そうですか、お気をつけて。」


「うん、ありがとう。仕事の邪魔をしてしまって申し訳ない。それじゃあ行ってくるよ。」


「いえ、お気になさらず。行ってらっしゃいませ。」


挨拶を済ませシャーロットの方まで飛んでいく。のんびり飛びながら先程のやり取りを思い出す。


(とりあえずこの距離感でいいんだろう。無理に近づく必要もないし、なんだかんだこの距離感に慣れてきている自分がいるんだよな。)


少し気分が軽くなる。何事も無理はいけないな。のんびりでいいんだ、とりあえずは。




エリカ


「行かれましたか……」


ゆっくり飛んでいく自分の主人を見ながら呟く。


(また誰かの手伝いをしてくるのでしょうね)


普段は気怠そうな雰囲気を出しているが、人の良い彼の事だ。困っている人がいると見て見ぬふりなどできずに話を聞きに行くのだろう。そしてあっさり解決してしまうのだろう。彼はそういう人だった。


「さて、次は風呂場の掃除ですね。」


きっと疲れて帰ってくるだろう。寝室の方の準備もしておきましょうか。


「お帰りをお待ちしています。」


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