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ロルルさんにこの世界の常識など知らなければならないことを聞きまくった。カウンターでの立ち話では終わりそうもないので、ロルルさんがカウンターの奥にある個室に案内してくれた。なんの当てにもならないテリアは放置した。
途中で小僧の演技をするのも忘れていたし、もうどう思われようが構わない。此処に来るまでの経緯も全てロルルさんに打ち明けた。聡明で美しくドストライクなロルルさんは真剣に丁寧に応えてくれた。
兎にも角にもこの魔法が存在する不思議世界に自分が対応しなければならないという危機感を覚えたからだ。
現状、俺が無一文で身一つだ。
この魔法を主体とする世界で魔法を使えない、スキルを何も持っていない、ただの小僧、という現状における俺の社会的位置付けは、最下層にあると言うこと。養われなければ死を意味すると言うことだ。
ロルルさんに俺は無償で様々な検査をしてもらった。
個人情報をスキャンすると言う魔水晶での検査だ。調べられることは、本名、年齢、種族、出身地、身体情報(身長、体重等)である。魔水晶がどういった構造になっているのかは後程調べようではないか。
それよりも結果はこうなった。手を魔水晶に翳すと淡く光だして文字が浮かびあがった。
【名前】レッド
【年齢】8歳
【種族】ヒューマン
【出身地】深淵深緑の魔境
【身体】身長114.9cm、体重20.2㎏、etc
8歳にしてはかなりチビな気がした。成長が遅いんだろうと目を瞑る。それよりも名前と出身地だ。思いつきで考えたレッドが本名になっているし、出身地はどうやら俺がこの世界に来たときの地点のようだ。この結果を見た時のロルルさんの驚き方も美しかった。タイプだ! 手に口を当てて綺麗な目をパッチリと開いてたぜ。魔境生まれはこの世界ではエルフという種族しか確認されていなかったんだとか。
続けてロルルさんが先ほどとは違う魔水晶を持ってきた。今度は、魔法属性、スキル、称号、加護の有無を検査する魔水晶で、手を翳すと淡く光だして文字を浮かび上がった。
【魔法属性】風詠唱1、光魔方陣1
【スキル】思考10、記憶10、学習10、探究10、算術10、短剣1、望遠3、歩術3、騎乗1
【称号】—
【加護】—
まずは【魔法属性】から見ていくと、どうやら此処に来るまでに見たモノが該当している。テリアがシュナイダーに乗りながら見せてくれたのが【風詠唱1】で、ギルドの天井に浮いていた光が【光魔方陣1】のようだ。詠唱と魔方陣という違いもそうだが、横に書いている数字はおそらくどの程度魔法を扱えるのかということをレベルで表しているらしい。
【スキル】については、きっとレベルが10の【思考10】、【記憶10】、【学習10】、【探究10】、【算術10】については前世からの引き継ぎで持っているようだ。中身がおっさんであることの裏付けとも言えよう・・・ そして【短剣1】は緑の先住民、ゴブリンというらしい。アイツ等と短剣で戦った時に習得したようだ。【望遠3】、【歩術3】は魔境をある手きたときに習得して、レベルも上がったようだ。【騎乗1】に関してはシュナイダーに乗った時にでも習得したのだろう。
【称号】と【加護】はどちらも持っていなかった。この二つに関しては習ったり訓練したからと言って得られるものではないとロルルさんが教えてくれた。
まぁ・・・ロルルさん曰く、たった8歳の子供がレベル10のスキルを所持していることが奇想天外な出来事らしい。レベル3までは簡単に上がるらしいが、そこから先は血のにじむような努力をするか、長い年月をかけてあげていくかしかありえないそうだ。伊達に二回目の人生じゃないってことだろう。
さて、ここまで分かって今後をどうするかだ。この世界について粗方わかったし、俺自身の能力値も知れてヒエラルキーの最下層にいることも身に染みて感じた。あー タバコが吸いたい。胸ポケットを探ってもそこには何もなかった。
少々途方に暮れていると、ロルルさんがニッコリと微笑んで俺の小さな手を優しく包み込むように握ってくれた。あまりの美しさにドキっとしたぜ。頬が赤くなったかもしれん。
「レッド君は身寄りがないってことよね?」
「はい。所持金も住居は何もないです」
「なら、ウチ(ギルド)で働いてみない? 住み込みだし、他にもレッド君ぐらいの子も働いてるのよ。 どうかしら? 」
願ってもない提案に俺は二つ返事で頷いた。