ページ6
ギルドに到着するとそこはさらにファンタジーの世界だった。外見はタージマハルのようであり、内装も当然のように大理石が使われていた。天井には電球のように光る発行体がフヨフヨと飛んでいて、頭上で辺りを照らしている。体育館ほどのフロアには、右側の手前に冒険者たちがカウンター並んで列を作り、カウンターには職員が常駐していた。そしてその右側の奥は冒険者たちがたむろするレストランのような酒を楽しめる空間があり、壁には黒板よりも大きめのボードが設置されたくさんの張り紙が貼ってあった。左側の手前にはなにやら街の外に出るのに必要になろう小道具などを販売しているようだ。左奥はケガをした冒険者が治療を受けている。
俺が感動して口を開けてボーっとしていると、テリアがクスリと笑っていた。興奮してはしゃぎたくなる気持ちを抑えてテリアと共にカウンターの職員と話すために並んでいる冒険者の列へと加わった。
「なあテリア! あれはなんだ?」
小僧の演技を忘れずに・・・いやワクワクしているのはウソではない。壁いっぱいのボードに張られている紙が気になって仕方なかった。それだけじゃない、頭上で光っている発行体も興味深い。カウンターで順番が回ってくるまで、テリアに質問攻めするとしよう。
「あれは、クエストが書かれている用紙よ。 これから職員さんが私なんかよりも詳しく教えてくれるから待ってなさい」
「えー じゃあアレはなに? フヨフヨ浮いてる奴!」
「ライトっていう魔法の永続魔方陣ね 残念ながら魔方陣に詳しくないから上手く説明できないわよ?」
いろいろと聞いてみたがテリアはそれとなく言い訳して何も教えてくれなかった。わざとなのか本当に知らないのか、もしかしたらテリアはお馬鹿なのか・・・
「テリアってお馬鹿なの?」
そう聞こえない様につぶやいたはずだったのだが、急に周りの冒険者から笑いが巻き起こった。美女と小僧の会話に聞き耳を立てていたのか? 悪趣味な奴らだ。なかには涙を流して腹を抱えている奴までいる。
「テリアの馬鹿がガキに見抜かれてらー ぎゃははは」「お馬鹿なテリアちゃん再臨!!!」「腹いてー 俺を笑い死にさせるつもりか」「いいぞー ガキー もっといってやれー」「テリアって確か100以上数えられなかったよな!?」「マジか!? それは初耳だぜ!」
――と、その瞬間、俺はドラゴンと目があったように感じた時と同じ寒気を背後からビシビシと伝わり、冷や汗が流れる。おそるおそる振り返ると、お釈迦様のように微笑みながら、邪悪なオーラを垂れ流すテリアがいらっしゃりました。
「今、笑ったクズ共・・・そんなに死にたいのかしら?」
ガタガタと今度は冒険者側の方から音がしたのでそちらに顔を向けると、先ほどまで爆笑していた冒険者たちが土下座していた。それはもう大理石の床を叩き割るんじゃないかという勢いで額を床にたたきつけていたんだ。
「レッド君もダメよ? 人の言われたくないことは言ってはいけません、分かったかな?」
「ご ごめんなさいっ」
畏怖しまくった。こんなに頭を人に下げるのは何年振りだろうか。
「分かればいいのよ。 でも次は無いわよ?」
「了解であります!」
そんなこんなで、列が進んみ俺たちの番が回ってきた。カウンター越しにいるギルドの職員はこれまた美しい女性だった。テリアと違った賢い20代の司書的な印象を受ける。艶のある黒髪を三つ編みにして一本にまとめて肩にたらしている。黒縁の眼鏡が何とも似合う清楚な雰囲気を漂わせている。おまけにネコの耳だろうか、それとギルドの服のシックな感じがマッチしていてお見事の一言だ。ハッキリ言おう、タイプだ!
「テリア・・・あんたショタコンだったっけ?」
ギルド嬢は眼鏡越しの黒い瞳で俺を一瞥すると、訝しんだ視線をテリアへとむけた。どうやらテリアが俺を拉致したとでも思ったのだろう。
「ロルルさん!」
「冗談よ。で、何所で拾ってきたの?」
テリアがムッとした顔で否定の意思を示すと、ギルド嬢のロルル。先ほどと打って変わって優しい表情をした。