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「神の光よ 咎人を戒め力を封じたまえ 聖光首輪」
法王が【聖導書】を介して発動した魔法。
真っ白にキラキラと光る首輪が、俺の首に巻き付いた。首輪の形状は荊を巻いただけのようなものだ。
棘が刺さったが痛みは無いが、フルマラソンでも走った後のような疲労感が現れた。
「これは聖魔法の一つだ。神の意思に背いた咎人の汚き心と体を清めるために女神ルーラー様が編み出したものだ。この魔法を掛けられたものは、魔力を失い、体力が著しく低下するのだよ」
「それだけか? 俺を戒めるには至らなそうだな」
「虚勢を張る必要はないぞ咎人よ。今までこの魔法を掛けられたものは、皆一様に死んで神の元へ逝った。いずれ君も同じ道のりを辿るだろう」
「へぇ」
「こうなったらもうこのクラレの迷宮牢獄からは決して出られぬだろう。慈悲をやろうではないか、その手枷と足枷は解いてやろう」
法王が手を翳すとガチャリと音を立てて枷が外れる。まあ あっても無くても変わらんと思うがな。
平静を保っているフリをしているが、聖光首輪が意外とマズイかもしれない。魔力操作が一切できなくなった。
「あと君には感謝しなくてはならないな」
法王はそう言うと、ポケットから見たことのある魔水晶を取り出した。俺がイヴ・ジャバヴォックから貰ったステータスを見ることのできる魔水晶だ。
「まさか竜玉を持っているとは。神が我々に味方をしているとしか思えんよ」
「返せよ盗人」
「取り上げただけだ。10日後に君が生きていたら返してやろうではないか」
「・・・10日後?」
法王が牢屋に座っている俺を見下ろして、悪魔にでもとり付かれたような笑みを浮かべた。
「10日後に王下五人議会が急きょ行われることとなったのだよ。この私の要請でね。そこで、この竜玉を用いて、あの汚れた女・・・学園理事と騎士団長に失墜をしてもらう予定なのだ。」
「エリスさんは此処に幽閉されてるんじゃねーのか?」
「そんなもの君から情報を引き出すための嘘に決まっているだろう。君はまんまと私に忠告してくれたではないか はっはっはっは」
「クソが」
「忠告のお返しでもしようか。現騎士団副隊長も、君の担任であるリリネル・ブレストも、どちらもこの私の飼い犬だ。まあリリネルの方は君とダンプの倅のおかげで必要なくなったがね。時期が早まっただけで、失墜させる予定だったのだよ」
「リリネル先生が・・・」
「ショックを受けたかな? 彼女には現理事長の失墜後に、理事長に就任する予定だ。騎士団副隊長も同様にね。」
いや、あまりショックじゃない。可笑しいとは思っていたんだ。あの経歴の人間が、一教師に収まるなんて変だ。騎士団に冒険者ランクもそうだし、法王がいろいろなところに潜らせて情報でも集めていたのだろう。
それに王都へ来たその日に彼女から接触してきたこと思い出す。何か隠しているのは薄々感じていた。アルナもその辺は警戒して、あまり仲をつめようとはしていなかったしな。
「そうすれば私の勢力が、いずれこの国を支配することとなる。そうすればこの世から忌々しい古代魔法を消しされるのだよ!」
ルーラー教、財閥団、騎士団、学園という五人会議のトップが全て法王の思いのままとなれば、不可能じゃないだろう。法王はクーデターでも起こすつもりだったということか。
「ギルドと国王は後々いくらでも料理できる。なによりあの女だけは社会的にも、終わらせてやるのだよ」
エリスさんになにか恨みでもあるのか・・・
「知りたいか、咎人よ? あの女は、この私の告白を断ったのだ。そしてどこの馬の骨かもわからぬ鬼族の!魔物によって汚れた血が流れる一族の男を選んだのだ! この私をこけにしたのだぞ! その借りを返してやらねばならんのだ」
そっちの恨みかよ! フラれたんかいっ
「くだらね。 男の嫉妬ほど気色悪いもんはねーな。しかも権力まで使って何やってんだか」
「なんだと! 貴様に分かるまいっ! ・・・まあよい。君にも味あわせてやろう、私と同じ苦しみを」
「・・・」
「アリアの縁談はお前の所為でめちゃくちゃにされてしまったが、また縁談を組んでやろうか。」
やはりラビッシュとの縁談はこのいつも乗り気だったのか。娘には伝えてなかっただけで・・・てことはラビッシュは嘘を言ってなかったのか。悪いことしちまったな。あとで謝るかな。
「エリスを失墜させたのちに、あの娘を慰み者にでもしてやろうではないか! アルナといったかな? 無理やりにでもルーラー教に改心させて、修行だといって汚い下民どもの性欲処理の道具にしてやろう。使い潰したら君がこれから逝く、神の元へ送り届けてやろう。はっはっはっは!」
「阿呆か。んなことさせるわけねーだろ。10日後つったな、そのなんちゃら議会っていうのは」
「まさかそれまでに何とかするとでもいうのか? はっはっはっは! このクレタの迷宮牢獄を出て、私の完璧な計画を潰せるとでも? この迷宮はルーラー教徒の枢機卿以上でなければ、出入りすることもできなければ。投獄された咎人が今まで出てきたことは一度もないのだ。極刑を決めるために牢屋に入れていたはずなのに、何か地獄の化物のような怪物に食われて死んでしまうのだよ。下層は地獄とつながっていると言われているのだ! 分かるか? 事実上、この牢獄に入れられた時点で、君の死は免れないと言うことだ。はっはっはっは! 諦めたまえ」
「やっぱりアンタは交渉というか、人間が間違ってるな。 俺もお礼を言っておこうか、べらべらと情報をありがとうよ」
俺が余裕たっぷりの表情をすると法王は狼狽える。回廊の向こう側の壁まで後ずさった。
「貴様っ! 咎人の癖に調子に乗りおって! この私が間違っているわけが無いだろう! 神に選ばれれ、女神ルーラーに愛されたこの私が!」
「はいはい言ってろ。 おれは此処から出た後にお前をどうやって叩き潰すのか考え事するから、邪魔すんな。うせろ」
「此処から出られもしないのに何を言っているのだ! この私を失墜させるなど不可能だ! それ以前に此処から生きて出られないだろう! 魔法も使えぬ貴様が!」
「ピーピーうるせぇ 10日間、俺に怯えてろ」
法王はギョッとした顔をすると、魔法を発動して逃げるように消えていった。
「とはいったものの。どうやって此処を出るかな」
ハッキリ言うと案が無い。法王が出ていった後を追っていけば出られると思っていたのだが、まさか魔法で居なくなるとは思ってなかった。やられたぜ。それに此処が地獄に繋がってるって言うのも気になる。一体どんなバケモンが蠢いているのやら。




