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決闘開始の合図のリングが鳴らされたと同時に、俺は制服の胸ポケットに収納していた短剣を逆手に構える。ただし目線は派手な装備をしているラビッシュから逸らさなかった。魔力操作で目に魔力を集約することで、ラビッシュの体内を流れる魔力を同時に見抜いている。
「どうした下民! この僕の最強の装備に臆したか!」
ラビッシュの騎士甲冑の装備に魔力が流れ込んだのを捕えた。どうやら甲冑には魔法陣が刻み込まれていたようだ。オルガやアルナのような刺青のような紋様が、ラビッシュの騎士甲冑に浮かび上がる。銀色の甲冑に、黄金色に淡く輝く幾何学的な魔法陣だ。
レイピアを胸の位置に構えたラビッシュが突貫してきた。
「死ね!」
「前よりは早いな」
騎士甲冑の魔法陣の効果だろう。鼻くそでもほじりながら掴めるような雑魚のスピードから、対戦相手に相応しい程度のスピードになっていた。だがそれでも遅い。
逆手に構えた短剣の柄の部分で、レイピアの剣先を弾く。驚いた顔をするラビッシュだったが、弾かれたレイピアを何度も何度もフェンシングをするように突き出してきた。
「このっ 死ね! 死ね! 死ね! 死ねぇええええええ!」
「雑魚ほど五月蠅いって言うが、本当だったとは」
顔、心臓、急所を狙ってくる刺突の全てを短剣の柄で、カン! カン!とはじき続ける。やはり今日の身体の調子はいい。ラビッシュの攻撃を防ぎながらも、シュミレーションで攻撃をしてみると。気持ちいいぐらいに首を刎ねたり、心臓を抉る様な一撃が思い浮かぶ。
実行すれば勝負は刹那の内に決まってしまうだろう。ラビッシュは何かを隠して余裕たっぷりの表情だったのを思い出して、反撃しそうになる手を止める。
俺は出し惜しみをしないでほしいと思った。なにか秘策があるならやってみろ。
「当たれ! 当たれよ! クソがぁあああ!」
「これが実力差だ、雑魚。 諦めて降参して土下座でもしろ」
敢えて俺は挑発する言動をとる。本心がつい漏れてしまっただけだがな。憎しみで歪む表情。ゼエゼエと肩で呼吸するラビッシュは滑稽に見えた。
「おのれぇ 下民ごときが! この僕に蔑んだ目を向けな!」
「・・・」
ラビッシュの注文通りにゴミ虫でも見るかのような目を向けてやった。
するとラビッシュの攻撃の手が止まる。レイピアを腰に納刀すると、今度は騎士甲冑の手甲を乱暴に脱ぎ捨てた。そして10本の指の全部にはめている指輪を俺に見せつけてくる。
「くく あはははは 後悔するなよ下民! もう貴様は許さない。この僕が最後の慈悲を与えてやっとというのになぁ! この指輪が何だかわかるか! 分からないだろうなぁ! 死ぬ前に最後にいいことを教えてやるよ。 これはお前なんか下民ごときが絶対に手にすることすらできない最高級の魔水晶製の指輪だ! そしてコレの使い方をその身を持って思い知るがいい! この僕を侮辱した罰だ!」
何か叫んでるが。どうでもいい。早くしろ。
ラビッシュが何をするのか眺めていると、外した指輪に魔力を通してから詠唱を始めた。
「下僕よ 僕の呼び声に応えこの地へ召喚されよ 下僕召喚 【影真似悪魔】!!!」
10個の指輪の一つが金色に淡く煌めいた。骨の王が俺に【魔導書】の水晶を渡した際に使ったゲートに酷似した魔方陣が展開された。
そして、ゲートから黒い靄の塊が出現したのだ。魔力の流れを見てみると渦巻く様な黒い魔力の塊が黒い靄と重なっていた。
「もう貴様の死は免れない! コイツは【影真似悪魔】だ。 特殊魔物指定をされたランク外モンスターなんだよぉおおお! コイツの異名を知ってるかぁ下民?」
ケヒヒと気持ち悪く笑うラビッシュ。心底キモイと思ったのは初めてだ。
「さあな 知る訳ねーだろ」
「無知な下民に教えてやろう。 コイツの異名は【ソロ殺し】だ。 一対一でこの 【影真似悪魔】と闘って生き残れた奴はいないだよぉ下民! どんなに強く有名な騎士でも、どんなに経験を積んだ冒険者でも、どんなに恐れられたモンスターでも! この【影真似悪魔】は全く同じ存在へと生き写すんだ! 分かるかぁ? コイツの倒し方は集団で倒す以外の一つしかないんだ! だから特殊魔物指定されてるんだけどなぁ! 一対一では絶対に同士討ちして死ぬってのが相場だってそれも知ってたかぁあああ?」
「話が長げえよ雑魚 そんなに俺が死にたいところが見たいなら、とっととそいつと闘わせろ」
「いいだろう。 後悔するなよ、下民! さあ【影真似悪魔】! そこの下民をコピーして殺せ!」
金色に煌めく一本の指輪を外して摘まむように持つと、ラビッシュはそれをまるで合奏の指揮者のように振り回し始めた。
すると、ゲートが消え。黒い靄が蠢きだした。魔力も同時に蠢いて、人の形へと変わっていく。
「へぇ」
目の前の黒い靄が俺に変わった。まったく同じ魔力の量。装備している制服や短剣。背中まで伸びた黒い髪。少し釣り目気味の黒い瞳。中性的を思わせる整った顔立ち。年齢にしては小さめの身長。少し華奢な四肢。全てがそっくりそのまま同じ存在へと変身したのだ。
俺は嬉しすぎてつい俺は感嘆してしまった。エリスに指摘された真似しかしていない、オリジナルがない戦闘方法を身を持って思い知るには良い機会だ。
『俺はレッド。 レッド・ジャバヴォックだ』
声まで全く同じだとはな・・・
俺自身を超えてみせろってか?良いぜやってやる。今の俺を超えりゃいいんだろう。見つけてやる闘いの中で俺だけの何かを!
俺と俺の死闘の始まりだった。
推敲してないままで、予約投稿の時間を間違えてアップしてました。
急いで誤字脱字をなおしましたが、まだあるかもしれません。




