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ページ36

特別クラスの教室は予想通りの豪華さだった。国王が最新鋭の設備を揃えていると豪語するだけはある。地球の学校とかけ離れ過ぎててカルチャーショックを受けそうだ。どこぞの金持ちしか行かなさそうな私立の学校はこんな感じなんだろうか。


大学の講堂のようで、ちょっとしたホールに感じる。黒板も信じられないほどデカイ。なにより部屋の装飾がオカシイ。どこの高級ホテルだ!教室に壺なんていらねーだろ!割るだけだぞ!


「は~い みなさん~ 席順は決まってるので、自分の席へいどうしてくださーい」


リリネルが教壇に上がっていくと生徒たちがわらわらと扉に張られている席順を確認して教室へと入っていく。


教室に一歩踏み込んで、固まったのは俺とツキノワだけだったようだ。アルナもアリアも普通に入っていく。他のクラスメイトも割り当てられた自分の座席へと何食わぬ顔で座っていた。


「なあツキノワ?」


「言いたいことは分かるであろう・・・慣れるしかなかろう」


「だよなぁ」


俺の席は右隣がアリアだった。アルナとツキノワと少し離れている場所だった。アリアがニッコリと笑顔を向けてきた。


「お隣ですねレッド様」


「様とか付けなくていいぜ。 こそばゆいしさ、レッドって呼んでくれ」


「はいっ ではそうさせてもらいますね。 私の事もアリアと呼んでください」


「了解だ、アリア」


「ふふふ レッドは男の子ですね」


アリアよ。何が嬉しいのか知らんが、もう少し周りの視線を気にしようか。有象無象どもの殺気が俺に向けられまくっているんだ。危うく反応して攻撃しそうになるんだよ。あとアルナがほっぺた膨らましでフグみたいになってるからな。


「そこをどきたまえ、下民」


「あぁ?」


俺がアリアの隣に座っていると、見るからにお坊ちゃまなクソガキが俺を見下ろしてきた。金髪で茶色の目をした生意気面だ。些か俺の方が身長が小さくてイラっとするな。


「聖女の隣はこの僕が相応しいんだ。気安く将来の僕の妻に話しかけるな。目を向ける事すら許さぬ。けがれてしまうだろう」


コイツは頭がおかしいのか? きっとそうだ。 ・・・いやでも待てよ。もしかしたら本当に婚約者なのかもしれんな。アリアは宗教のトップの娘だし、このクソガキはどう見てもお偉い金持ちのガキだ。この世界のこういった話は全く分からんしな。もしも本当にアリアの婚約者か何かだったら。ぶん殴ったらまずい。


とりあえず本人に確認してみよう。アリアに視線を向けて。


「婚約でもしてるのかアリア?」


「いいえ、初対面の方です。 えっと・・・よくいらっしゃるんです。勝手に妻だ嫁だとおっしゃる殿方は・・・」


アリアはかなり困った表情だ。よくいらっしゃるらしい。ご愁傷様だ。

すると、クソガキは顔を真っ赤にして憤った。


「可笑しなことを言うなアリア・レフリ! このラビッシュ・ダンプを忘れたとでもいうおつもりか? 君の所へは父上伝いに婚約の話が行っているはずだ。父上は良い返事がもらえたと言っていた」


「確かにダンプ財閥の会長様と私の父が会談をする機会はあったようですが。そのような話は提示されたと聞いておりません。何か思い違いをしてらっしゃいませんか?」


アリアの全否定。俺の中で判決が下された。クソガキは有罪。虚言癖をお持ちのようだ。罪は重いぞ。

アルナさん爆笑し過ぎだ。ツキノワも周りの連中も笑いをこらえている。みんな肩がピクピクしてるぜ?

クソガキ以外のクラスメイトとは仲よくやっていけそうだな。


「・・・そうか、君はまだ真実を聞かされていないだけだったんだね。それなら知らなくて仕方のないことだ。まさか僕の口から告げることになるなんて、父上の僕へのサプライズだったんだね。プロポーズは自分でやるものってことか」


ラビッシュの言葉に俺とアリアを含めクラス全員が唖然とした。若干一名は腹を抱えて転がり始めたがな。


「そう言うわけだ、下民。 僕とアリアの間に入らないでくれるかな? 汚らわしい」


コイツはアホなのか?

何がそう言う訳なんだろう。理解に苦しむ。

ハッキリ言って対処の仕方が分からない。アリアにどうすれば良いのか視線を向ける。


「だから言っただろう! 気安く僕のアリアを見るな、下民!」


ラビッシュが腰に下げていたレイピアを抜刀して俺へとその先端を突き刺そうと踏み出してきた。

鼻くそがほじれそうなぐらいショボイ攻撃なので、突き出され俺の心臓目掛けてくるレイピアを掴んでみた。避けるまでもないと言うのはこういうことだったのか。


「あはははははっ おなかいたーいっ 笑いしんじゃうよー」


「さすがであろう」


「・・・カッコイイです」


アルナがとうとう我慢できなくなったようだ。涙を流しながら転がって笑っている。ツキノワも感心した様子でうんうんと頷いている。アリアは手を胸のあたりにギュっとしてキラキラした瞳で俺を見ていた。


「なぁにぃいいいいい!?」


「「「「おぉ~」」」」


ラビッシュはとても面白い顔で驚愕し、鼻を垂らしている。周りのクラスメイトは唸るような声をあげて感心してくれたようだ。避けるのではなく掴んでみたのが正解だったかもしれん。


掴んだレイピアを引ったくり、取り上げた。これ以上暴れられたら溜まったもんじゃ・・・いや軽く鎮静できそうだが。とりあえず大人しくさせよう。


「かっ 返せ! それはダンプ家の宝剣だ! 下民が触っていいものではない!」


「なら取られなければいいだろうが、雑魚」


なんとなくレイピアに触りたくもないので、後ろの方へ投げ捨てる。ラビッシュはブチギレたようだ。とうとう魔法を使い始めやがった。


「下僕よ 僕の呼び声に応えこの地へ召喚され――


詠唱を終える前にリリネルがラビッシュの口を右手で鷲掴みにした。


「そこまで~ 魔法はアウトよ~」


リリネルの介入で流石にラビッシュも身を引いた。割り当てられた席へとしぶしぶ戻っていく。去り際に「命拾いしたな」と俺へ言ってきたが。それは逆だ。


リリネルは俺が短剣を持った腕の手首を、ラビッシュの口を鷲掴みにした反対の左手で掴んでいたのだ。俺はラビッシュが詠唱したその時すでに。懐から短剣を引き抜き攻撃しようとしていた。攻撃を初めたのはラビッシュであり、クラスの奴らはそれを見ている。正当防衛の概念がこの世界にあるかは知らないが、俺はハッキリ言おう。ラビッシュの喉笛を掻き切るつもりだった。殺すまではする気はないが、二度と喋られない詠唱ができない傷でも付けようかと思っていた。


「レッド君も少し大人げないよ~ やり過ぎはだめー 分かった?」


「途中まで楽しそうに傍観してた人に言われたくないですよ」


リリネルは最初から教室にいたんだ。なんてったってイベントホールから教室へ俺たちを誘導したのはリリネルだ。何を意図して傍観してたのかは分からんがな。



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