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創造神の嫁探し  作者: 下手の横好き


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アリア編、その3

 『この人、一体何者?』


私は、彼の作業をぼんやりと眺めながら、そんなことを考えていた。

昨日話を聴いた時は、詳しい素性までは教えてくれなかった。

生まれた時から親がいない、最近までずっと1人で生きてきた、奥さんは4人いるが、子供はいない。

そんなことくらいだ。

込み入ったことを聴こうとすると、はぐらかされる。

最初、深い森の中だったこの場所は今、貴族の屋敷が1つ入るくらいの平地になり、そこに1軒の家が建っている。

2階建ての木造で、見たことのない外観を伴った、素敵な家だ。

随所に陽の光が入るように建てられており、かなり開放的な造りになっている。

魔法で伐採した木々を薪に変え、アイテムボックスに放り込み、家の周りに庭を造った彼。

アイテムボックスから樹木まで出した時は目を見開いたが、その木々は、森に差し込む陽光や、月の光を計算して植えられる。

小さな池と苔むした岩、砂利が敷き詰められ、何とも言えない風情を醸し出す。

ここまでの作業に、10分程度しか経っていない。

因みに、この世界には時計がある。

太古の魔術師達は、自分達の実験に必要だからと、正確に時を刻む機械を生み出した。

今ではそれが小型化され、魔法電池と呼ばれる部品を魔力で充電するだけで動き続ける。

一連の作業が終わって満足したのか、私を思い出したかのように振り返る彼に、言葉をかける。


「話があるの」


もう、待ったなしだった。



 「それで、話とは何だ?」


木の良い香りに包まれた家の中、食堂と思しき場所のテーブルに案内され、向かい合って椅子に座る。

家の中は土足厳禁だと言うので、入り口で靴を脱いである。


「あなた、一体何者?

人間じゃないわよね?」


「いきなり何を言う。

自分の容姿が魔物か何かに見えるのか?」


「誤魔化さないで!

あなたの魔力は異常なの。

人間なら、その魔力量に身体が耐えられるはずがない。

・・私は、あなたの助手よね?

あなたを支える、パートナーよね?

ならちゃんと本当のことを教えて。

私には、知る権利がある」


偽りを許さぬ鋭い眼差しで、和也を見つめるアリア。


「今はまだ言えないと言ったらどうする?

自分の下を去るか?」


椅子を蹴って凄い勢いで平手を放つが、難なく交わされる。


「くっ!

・・それができれば、さっさとそうしてるわよ。

女を何人も侍らせてる無一文の男なんかさっさと見捨てて、もっと良い人を探すわよ。

でも、それができないから、こんなに苦しんでるんじゃないの。

悩んでいるんじゃないの。

どうしてそれが分からないのよ!?」


拳を握りしめ、俯いた彼女が、絞り出すような声で、そう告げる。


「・・世の中には、知らないでいた方が楽なこともある。

知ってしまえば、ずっと苦しむこともある。

何でも話し合える関係は、確かに理想的ではあるが、それは隠し事をしないという意味までは含まないと自分は思う。

そうでなければ、己の恥ずかしいことや、過去の汚点すら曝け出さなくてはならず、却って苦痛を生む。

相手を裏切るようなものでなければ、その相手が重要視することでなければ、隠し事も円満な関係の役には立つ。

自分がどんな存在なのか、それは君にとって、それ程に大事な事なのか?」


「そうよ!

すっごく大事よ!」


「・・何!?」


彼は、まさかそう言われるなんて思っていなかったという顔をしている。


「大事に決まっているじゃない!

何も知らずに産んだ子が、人じゃなかったら、びっくりするでしょう?」


「・・・何の話をしている?」


「だから、私とあなたの子供の話」


「自分は君に、何かした覚えはないが」


「一緒に住むのだから、これからは分からないでしょう?

あなたの助手になると決めた時点で、私にはその覚悟があるのよ?」


「・・・」


「何?

私、何か変な事言ってる?

だって男と女が2人で一緒に住むのよ?

そういうことだよね?

・・・まさか、考えてなかったの?」


呆然とした顔をされたので、不安になってそう聴いてみる。


「・・すまない、そこまで考えてなかった」


もう1度、全力の平手を放つが、今度も申し訳なさそうに交わされる。


「自分が学んだゲームでは、恋人同士でなくても一緒に住んでいたりしたから、普通に仲良くするためには、それが1番良いと思っただけなのだが・・」


因みに、和也がやっていたそれらのゲームは、18禁のアダルトパソコンゲームを、一般用のゲーム機に移植したもので、そのため、本来ならエッチなイベントが展開される所が別のものに置き換えられていたせいで、そういう暮らしを普通のものだと少し勘違いしている。

大抵のゲームでは、製作費など大人の事情もあって、出会いから1か月くらいで主人公とヒロインが結ばれるから(永遠の愛を誓うには3年かかったものもあるが)、和也がこれまで妻にしてきた女性達が、僅かな期間で和也に身体を許すような関係となっても、そこに疑問を抱かなかった。

この間エリカに聴かされた器の話は、和也の中ではそれとは別の特殊な例として処理されている。


「ゲーム?

変な単語で誤魔化そうとしても無駄だから。

たとえ少し齟齬があったとしても、あなたは私の手を取った。

契約を交わした以上は、あなたと私はパートナー。

子供の話は極端だけど、何時私を抱いてもいいし、私も抵抗しない。

だから、先ずは最も重要なことを教えて。

あなたは何者なの?」


「物凄く論理が飛躍してる気がするが、やはり君は性に興味津津・・」


「今は本当に大事な話をしているの。

今度そんなくだらないことを言ったら、この場で襲うわよ?

・・私の中で、有り得ないくらいに心が叫ぶの。

『あなたを逃がすな、離すな、ずっと側に居ろ』って。

お願い、答えてよ」


「・・・聴いたら後に引けないぞ?

自分のことを受け入れられなければ、君の記憶を消して、以後は君と拘わらない。

それでもか?」


「それでもよ!」


和也が溜息をつく。


「・・自分は神だ。

この世界、いや、数多の世界を創った創造神。

妻達も今やその眷族として、最早人ではなくなっている」


そう告げる和也の背後に、窓の大きさ程の宇宙空間が広がる。

見たこともない光景が、アリアの目に飛び込んでくる。


「この星には、下準備に来たようなものだ。

エリカ、大事な妻の1人に与える星だからな」


「・・神・・様?

そんな、私、神様に惚れちゃったの?」


「・・意外に落ち着いているな」


「あなたが人間ではないのは分かっていたもの。

悪い人ではないということも。

あとは程度の問題だから・・」


「それで、どうする?

自分の下を去っても、記憶は消すが、他には何も不利益はないぞ?

ちゃんと家まで送り届ける」


「何で私がいなくなること前提でものを言うのよ?

ここに残るわよ。

あなたの助手を辞めないわよ。

そんなの、当たり前でしょう?」


「当たり前?」


「そうよ、当たり前。

やっと見つけたのよ?

自分から側に居たいって思える人を。

同じベットで寝ても、安心して眠れる人を。

そんな人、手放せるわけがないでしょう?」


話始めた頃と異なり、彼女の顔は笑っている。


「自分の素性を明かした以上は、それなりに君を制約下に置くが、いいのか?」


「何するの?

魂を差し出せ、とか?」


「違う!」


和也が右手の掌を上に向けると、そこに銀色のリングが生まれる。


「先ずはこれをはめてもらう」


「もしかして、結婚指輪?」


「違う。

これは君を守るための物であり、君の本心を図るためのものでもある。

この指輪には、様々な機能がある。

アイテムボックス、万能言語、魔力の泉、瞬間移動、防御障壁。

一度はめたら、自分(かずや)に嫌気が差したり、君に自分以外の苦楽を共にしたいと望む者が現れない限り、絶対に外れない。

逆に、そういう状況になれば、アイテムボックスの中身を放出して、自然に消滅する。

自分は君の心を縛りはしない。

自分が嫌になったり、愛想が尽きたりしたら、何時でも傍を離れていい。

自分に気兼ねして、それを躊躇わないように、敢えてそういった機能を持たせてある」


「・・嬉しいやら悲しいやら、微妙な気分ね。

私を守ってくれるのは嬉しいけど、完全には信じてくれないのは凄く悲しいわ。

それに、何だか自分に自信がないようにも聞こえるわよ?

あと、私の気持ちへの答えは?」


「?」


「何その顔?

今までの話、ちゃんと聞いてた?

私は、あなたが、好きだと言ってるの!」


彼女の大きな瞳が嬉しそうに細められ、口元に笑みが零れる。


「・・君はとても美しいし、魅力的だが、今はまだその答えを保留させて欲しい。

勿論、助手を頼むくらいだから、好意はあるし、仲良くもなりたい。

ただ、この頃少し自分でも反省することが多くて、今すぐ君をどうこうするという気にはなれないのだ」


申し訳なさそうに、和也は答える。


「何時まで待てばいいの?

あんまり長く待たせると、私、お婆さんになってしまうわよ?」


「それについては心配ない。

自分の眷族になる時、容姿はその者が最も美しい時まで遡る。

未だそこに到達していなければ、そこまでは成長する」


「私をあなたの眷族にしてくれるの?」


「このリングをはめるということは、そういうことだ。

眷族になりたい時期は、君が好きに選べる。

もう人としてやり残したことがないと思ったなら、その時現れる門を潜るといい」


「そういうことなら、いつまでも待つわ。

そして必ずあなたを振り向かせる。

・・これから"ずっと"、よろしくね」


あの時と同じ様に手を差し出してくるアリア。

和也はそれに、椅子から腰を浮かせて応じる。

握った途端に、強い力で引っ張られた。

彼女の顔が間近に迫って来て、唇に、柔らかい感触が生まれる。


「これは契約の証。

恋人としてのキスは、また今度ね」


そう告げて笑う彼女の笑顔は、今までで1番、嬉しそうであった。



アリアに乞われて、家の中を一通り案内して回る。

近代的な造りの家は、どれもアリアを驚かし、蛇口をひねれば流れ出す水や、滾々(こんこん)と湧き出る温泉かけ流しの広いお風呂、ガスで調理する器具などには、目を輝かせていた。

この世界に無い設備も幾つか取り入れられてはいるが、それは和也が重視する食事と風呂の基本的なものだけだ。

家の敷地の周囲には、結界が張られているから、和也の許可を受けた者以外には、外から見えることも、侵入することもできない。


「まだ日暮れまでには十分な時間があるし、できることをしてしまおう。

君の家から荷物も取ってこないとな」


「・・オリビアにも挨拶してこないと。

鍵を返さなくちゃ」


「誰だ?」


「あの町の領主の娘、私の大家さん」


「なら分担して当たろう。

自分はギルドで素材を売り、今後の仕事の仕込みもしてくる。

君は荷物を回収し、その者に挨拶してくるがいい。

用事が済んだらまたここに戻って来てくれ」


「どうやって?

私、ここが何処かも分からないわよ?」


「君はもう転移ができるだろう?

そのリングに込められた魔法は、行ったことのある場所なら、目印を必要とせずにイメージするだけで飛べる。

この家には、ちょうど玄関に飛んでこれる」


彼女の"左"の薬指にはめられたリングを見ながら、和也が説明する。

何気なく右の薬指にはめようとした和也に、アリアが敏感に意図を察知し、説明を求めた上で、左に付けさせられた。

まだ妻にはしていないため、リングの材質は変化していないし、表面に絵柄も現れていない。


「・・改めて考えると、凄い機能よね?

移動に時間がかからず、魔法は使い放題、言葉にも苦労しないで、何でも入るアイテムボックス。

おまけに防御障壁まである。

ちょっと狡いかも」


「何でも入るといっても、自分や妻達のものと違って、君達のはせいぜい国1つ分くらいしか入らんぞ」


「十分よ!

・・大事にされてるわね、私」


「自分にここまでの好意を示してくれるのだ。

このくらいのものは返す。

・・それから、防御障壁は、君が傷つくくらいの攻撃か、君に害意のある行動でないと発動しないぞ。

君が嫌でない相手との、無害な行為にもな」


アリアがリングを胸元で、右の掌で包み込むようにして目を閉じたので、和也は照れたように視線を逸らしながらそう告げる。


「・・本当だ」


彼女が自分に、静かに抱き付いてくる。


「・・遅くなってしまうぞ」


「もう少しだけ」


その後暫く、彼女は和也の肩に頭を載せたまま、彼を優しく抱き締め続けた。




 「この辺りにするか」


キンダルから馬車で2日程の村の外れ、村人が狩りや採取に訪れる森の中に、和也はダンジョンの入り口を造る。

一見普通の入り口に見えるが、そこにはある仕掛けが施されている。


「あとは、いろいろ揃えるだけだな」


そう言うと、またすぐに姿を消した。




 「換金を頼みたいのだが」


先日訪れたギルドに再び足を運んだ和也は、受付で書類に目を通していた女性に話しかける。


「はい、物は何でしょうか?」


「魔竜ガルベイルの鱗だ」


それなりに喧騒に包まれていた場が静まり返る。


「・・まさか、討伐なされたのですか?」


「いや、どうやら巣を引き払ったみたいだな。

自分が行った時は、既にもういなかった」


「本当ですか!?

それが事実なら国に報告しなくては。

それで、その鱗はどちらに?」


「これだ」


和也は十数枚あった鱗の内の1枚を差し出す。


「1枚だけですか?」


「他にもあるが、残りは幾らになるか判明してからにする」


「魔術師協会に鑑定を依頼するので、2日程お時間を頂きますが、よろしいですか?」


過去のことがあるので、この世界の魔術師は皆、協会への登録が義務付けられ、国によって管理されている。


「分かった。

ではその頃にまた来る」


差し出された用紙に必要事項を記入して、係の者に渡す。


「え!?

何でアリアの名前が?」


彼女と顔見知りらしい受付嬢が、そこに記載されたアリアの名前とギルドナンバーに驚きの声を上げる。


「自分はギルドに登録していないし、この国の戸籍もない。

なんなら料金は彼女に渡してくれてもいい。

アリアは自分の助手だから」


そう告げると、和也はギルドを後にする。

少しして、何気なくその跡を追っていく、数人の者達がいた。



 「何か用か?」


わざと人のいない路地裏に入り込んだ和也は、自分をつけてきた4人の男達に話しかける。


「いい度胸してんな。

それともやっぱり馬鹿なのか?

わざわざこんな所に来るなんてよ」


「忙しいから早く用件を言え」


「・・随分調子付いてんな。

どうやってアリアを取り込んだんだ?

顔か?

それとも金か?

俺達にも教えてくれよ」


「誠意を持って、丁寧に、礼儀正しくお願いした。

用はそれだけか?」


「・・俺達さあ、今仕事が無くて金欠なんだよ。

少し恵んでくれねえか?」


「断る。

自分も今は無一文だ」


男達の中で何かがキレた。


「なら鱗の残りを渡しな!!」


「ぐはっ」


「がっ」


ドカッ、ズドン。


突然襲い掛かってきた彼らを、和也は拳と蹴りで大人しくさせる。


「ジャッジメント。

・・まだ辛うじて踏み止まってはいるが、もう後がないぞ。

今後はまともに生きることだな。

慰謝料として、所持金の半分と武器を全て貰っていく」


気絶している彼らの懐から、全部で銀貨30枚を転移させ、武器は浄化と修復を経て、収納スペースへと放り込まれる。

そして、何事もなかったかのように姿を消した。




 「今日は」


アリアは、門に佇む顔見知りの衛兵達に向けて挨拶する。


「アリアさん、今日はどうしたのですか?

お茶会の日は、まだ先ですよね?」


彼女に微笑まれて嬉しそうな衛兵が、そう尋ねてくる。


「オリビア様に、お返しする物ができまして・・。

お取次ぎいただけないでしょうか?」


「分かりました。

暫くお待ちください」


アリアからの用件は、最優先で自分に取り次ぐよう、常々厳命されている彼らは、彼女の下にすぐに赴き、そして程無く戻ってきた。


「お会いになるそうです。

どうぞ、お入りください」


門を開けられ、屋敷の入り口まで案内される。


『何時来ても、圧倒されるお屋敷よね』


門から屋敷の玄関まで、50mくらいある。

キンダルは、国の主要な都市の1つであり、そこを治める彼女の父親は、ビストー王国の財務大臣をしている伯爵でもある。

玄関に到着すると、今度はメイドに案内されて、豪華な応接間へと通される。

そこで暫く紅茶を飲みながら待っていると、家の中なのに、かなり気合を入れておめかししてきた少女が現れた。


「いらっしゃい。

来てくれて嬉しいわ」


極上の笑みでそう言われ、立ち上がって挨拶を返すアリア。


「ご無沙汰致しております。

相変わらずお元気そうで、安心致しました」


「いつも言っているでしょう?

そんな他人行儀な挨拶は嫌だわ。

さ、私の部屋に行きましょう?

ここだとあなたも寛げないわよね」


「・・はい」


アリアは、少し複雑な顔をする。

彼女の私室に行く方が、実は気疲れするのだ。

ここだと流石にしないが、自分の部屋では、彼女はべったりくっ付いて来て、頻繁に自分の身体に触れてくる。

オリビアは今年で15歳。

3人姉弟の次女で、後継ぎではないため、大分甘やかされて育てられてはいるが、根は優しく、頭も良い、美しい娘だ。

なので、アリアとしても、立場を抜きにしてもそう邪険にはできず、あまり変な場所までは触れてこないため、されるがままにしていた。

因みに、彼女の部屋には、アリアが描いた数少ない肖像画が飾られている。


「それで、今日はどういったご用件かしら?」


案の定、大きなベットに座らされ、そのすぐ隣に腰を下ろして腕を組んできたオリビアに、そう尋ねられる。


「実は、今度引っ越すことが決まりまして、お借りしていたお部屋の鍵を返しに参りました」


「え!?」


驚いた顔でこちらを見る彼女。


「長らく無料で貸していただき、本当に有難うございました」


「・・この町を出て行くの?」


「はい、まだ正確には把握していないのですが、恐らくこの町からは、少し離れていると思います。

ただ、あくまで住む所はというお話で、生活の拠点は、暫くはまだここだと思われます」


「何だか誰かと一緒に住むような言い方ね?」


「・・はい、この度あるお方の助手になることができまして、それで、仕事にも都合が良いので一緒に住むことになりました」


「・・もしかして、男なの?」


「・・はい。

とても素敵な方です」


「!!!」


組んでいた彼女の腕が強張る。


「・・どんな人?」


震える声で、そう聴いてくる。


「男らしく、優しく、律儀で、そしてとても強い力を持った人です。

この機を逃したら2度と出会えない、私の運命の人」


アリアの、その嬉しそうで力強い言葉に、三度(みたび)打ちのめされるオリビア。


「もしかして、もう・・寝たの?」


「いいえ、まだそこまでの関係ではないです!

・・ただ、何時かはそうなりたいと・・願っております」


薬指にはめたリングを、愛おし気に撫でるアリア。

それを見たオリビアの視線が、僅かに険しくなる。


「・・分かったわ。

鍵は返してもらう。

でも、私は諦めない。

まだこの町で仕事をするのよね?

ギルドを通して依頼をするから、その時は必ず受けて!

いい、きっとよ?

受けなかったら、2人の仲を邪魔してやるんだから・・」


どう返事をしようか迷ったアリアの頬に、彼女が柔らかな唇を押し付ける。


『!!』


キスをされたことより、障壁が働かなかったことに驚くアリア。

・・私、この()のこと、そんなに嫌じゃないんだ?

知り合ってから、自分を守るように、いろいろと手を貸してくれた彼女。

そんな彼女を、自分は何時しか妹のように感じていたのかもしれない。

オリビアの気が済むまで部屋で過ごしたアリアは、屋敷を出ると、夕暮れ近い空を眺めて、和也が待つ2人の家へと帰って行くのであった。


和也が眷族候補者達に渡すリングの性能は、基本的なものを除き、その者によって、若干性能が異なります。

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