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創造神の嫁探し  作者: 下手の横好き


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番外編、六精合体その1

「ねえ、最近エメワールとディムニーサの働きが鈍い気がするけど、何か知ってる?」


光の精霊王であるファリーフラが、同じ王の1人であるメルメールに尋ねる。


「あーっ、その件ね。

彼女達は今、引籠りの最中だから」


「引籠り?

一体何で?」


「あれ、知らないの?

先日(時という概念が形式的なものでしかない彼女らには、たとえ数十年経とうと、1日2()とたいして変わらない)、お父様が6精を使役して、1人の人間を蘇生なさったのよ。

でもその際に、近くにいた上級精霊でお済ましになって、私達にお声をかけなかったのね。

お父様からすれば、その程度のことにわざわざ私達をお使いになる必要はないとお考えでしたのでしょうけど、人一倍お父様に構ってもらいたい彼女らにしてみれば、耐えられない行為だったみたいね。

エメワールはお父様が彼女に管理を任せた魔獣界に籠っているし、ディムニーサは土の精霊界の奥深くに閉じ籠って、私から貰ったお父様の写真ばかり見ているようよ」


「・・・」


ファリーフラは絶句して、その後、長い溜息をつく仕草を見せる。

あの2人は、以前から他の皆よりお父様に対する執着心が強かったけど、先日そのお心に触れて以来、それが余計に酷くなったわね。

そのくらいのことで仕事を疎かにして引籠ってしまうようでは、先が思いやられる。

わたくしが幾ら注意しても、彼女達は耳を貸さないだろうし、一体どうしたらいいかしらね。

・・やはり素直にお父様にお願いするしかないかしら。


「因みに他の2人はどうなの?

レテルディアやヴェニトリアだって、その件のこと、知っているんでしょう?」


「ええ、彼女達も内心では不満があると思うわよ?

ただ、あの子達は真面目だから、それを表立って表したりはしないだけ。

それにもしお父様にサボっているのがバレて、そのご不興を買いでもしたら、そちらの方が彼女達には耐えられないことだろうしね」


「あなたはどうなの?

平然としているようだけど、思う所はないの?」


「わたくしは大人ですから。

それに、お父様コレクションの収集のために、暇な時は何時でもお父様を拝見致しておりますし。

・・もっとも、最近プロテクトのかかることが多くて、不満と言えば、それくらいでしょうか」


そう言って、胸の前で組んだ腕の片方を、悩まし気に頬に当てる仕草を見せる。


「わたくしからしたら、あなたが知らなかったことの方が意外ですけど」


付け足すようにそう言ってくる彼女に、ファリーフラは苦笑いで誤魔化す。

まさか、お父様と2人で幸せな時を過ごす、夢の中に微睡んでいたとは言えない。


「とりあえず、状況は把握したわ。

わたくしの方から、それとなくお父様に相談してみるわね。

あんまりあの子達がサボっていると、いろいろな星に影響が出るから」


「ならついでにお願い。

お父様に、もう少し閲覧の自由をくださるようお伝えしておいて。

特にお風呂」


「・・あんまり期待しないでね」


ファリーフラはそう告げると、水の精霊界との門を閉じた。




 その夜、和也は居城の自室で天井を見上げていた。

天井とはいっても、そこには満天の星空が映し出されている。

己が創造した宇宙に散らばる、無数の宝石のごとき星達。

ベットで横になっている自身の傍らには、全裸のエリカがその右手を彼の胸に添えながら、安らかな眠りに就いている。

数か月振りに城に帰った和也に、『久しぶりに如何です?』と誘いをかけてきた彼女。

まるで、和也が相談事を持ち帰ったのを知ってでもいるかのように、口を開こうとした彼の唇を、たおやかな指先でそっと押さえ込む。

『先ずはこちらの方から・・ね?』

そこに初めの頃のような激しさや慌ただしさはないが、触れる唇や指先の1つ1つに、溢れんばかりの愛情が込められている。

エリカの行為に身を任せながら、和也は暫し思考を放棄した。


 「わたくしへの相談事がおありなのですか?」


数時間後、考えをまとめていた和也の頬を、目覚めたエリカの掌が優しく(さす)る。

向けられた和也の視線に、光に揺れるエメラルドグリーンの瞳を僅かに緩め、穏やかな眼差しで応える彼女。


「先日、紫桜と有紗に少し気になることを言われてな。

己の甲斐性の無さを反省し、彼女達に他に報いるものを探そうとしたのだが、どうにも見つからなくて。

情けない話だが、エリカに相談しに来たのだ」


「あのお二人は何と?」


「『自分(かずや)の身体以外に、欲しいものなどない』と、そう言った」


「まあ!

随分頑張ったのですね」


からかうようなエリカの言葉に、和也は拗ねて無言で彼女に背を向ける。


「フフフッ、御免なさい。

冗談ですから」


和也の背を抱き締めるように両腕を回してきた彼女が、その耳元で囁く。


「彼女達の器はまだ、完全には満たされていなかったのでしょう」


意外な事を言われ、和也は身体の向きを戻す。


「器が満たされていない?」


至近距離からの和也の視線を、エリカはしっかりと受け止めて話を続ける。


「わたくしが、あなた専用の癒しの器であることは、以前お話しましたよね?

ですが、あなた専用の器は、何もわたくしだけとは限らない。

数多ある世界に、他にも、転生を重ねながら、あなたとの邂逅を待ち望む、多くの女性がいるのでは。

・・わたくしは、何時しかそう考えるようになりました。

器の特徴として、これはわたくしの経験から言えるものですが、あなた以外に心が反応致しません。

どんな方から、いかなる美辞麗句や行動を示されても、何を頂こうとも、決して気持ちが揺らぎません。

人として見ることはできても、全てを託せる異性として見ることはできないのです。

わたくしの見るところ、紫桜さんと有紗さんのお二人は、恐らくあなたの器です。

マリーだけは、純粋にあなたに惹かれた感が強いですね。

そしてこれも経験から言えることですが、器であるわたくし達は、あなたによって目覚めた後、まるでお酒が注がれる盃のごとく、一定期間、執拗にあなたを求めます。

身体にあなたを馴染ませる、とでもいうのでしょうか、ある程度の逢瀬を重ねて、あなたに満たされることで、やっと安心できるのです。

だから、それが済んで初めて、今のわたくしのように、純粋にあなたとの行為を楽しめるようになる。

紫桜さん達が、あなたにそう告げたのであれば、それは彼女達の器がまだ満ちてはいないということ。

時が来れば、きっと今より落ち着いて、あなたと接することができると思うわ」


確かに、エリカも初めの内は、その清楚な外見からは考えられない程、強く激しく自分を求めてきた。

自分と同様に、覚えたての快楽にハマっているのであろうと都合よく考えていたが、そう言われるとしっくりくる。

最近の彼女は、他の妻達に遠慮しているのではと思うくらい、変に落ち着いている。

マリーも、言われてみれば、他の妻達のようには求めてこない。

エリカに気を遣ってそうしているわけでもなさそうだし、考えれば考える程、エリカの言うことが真実味を帯びてくる。


「つまり、もう少し時間が経てば、彼女達の興味が他へ向くということだな?」


「それは少し違うわ。

単に欲求の質が変わるだけ。

お腹が空いて、とにかく沢山食べたいという状態から、美味しい物を味わって食べるようになる、ただそれだけ。

わたくし達はあなた専属の器なのよ?

その優先順位のトップは、常にあなたにあるわ」


エリカが念を押すように、真っすぐ自分を見つめてくる。


「・・おまえはそれを、煩わしく感じたことはないか?」


他者との会話や触れ合いを望み、人の暮らしの中に降りてきた和也。

酷い乾きでひび割れた大地のようであったその心は、彼女達のお陰で潤い、他者への恵みをもたらすまでに回復した。

そのことで、以前なら怖くて聴くことのできなかった言葉を、今は口に出せる。


「本当なら、ここであなたをひっぱたくところですよ?

先程までのわたくしの行為に、あなたは一体何を感じてくださったのかしら。

性欲?

嫉妬?

それとも打算か同情なのですか?

・・わたくしはね、これでも凄くプライドが高いのです。

自分がしたくないことははっきりと言うし、嫌な相手には指一本触れさせない。

王女という立場でさえ、口を利かないどころか、視線すら向けないことだってありました。

そのわたくしが、あなたにしていることをよく考えてみてください。

向けている視線の温度、触れる指先の柔らかさ、絡める舌の動きに、そんな感情が微塵にでもありましたか?」


エリカが、怒るというより呆れたといった方が正しいような眼差しで、和也を見つめる。


「自分は以前、寂しさのあまり、力で人を生み出そうと考えたことがある。

だがそれは、その者の心の幅を制約しかねない、そう考え直して、何とか踏み止まった。

自ら生み出したのではなく、世界が贈ってくれたとはいえ、それがおまえ達の心を必要以上に縛ってはいないかと、少し心配になった。

すまない」


彼女達に失礼なことを口にしている自覚はあるが、与えられる愛情の大きさ、一途さに、自分にそこまでの自信がない和也は、不安を覚えたのだ。


「エレナにも似たようなことを言われましたが、わたくし達だって、機械や操り人形ではないのです。

熱い心を持った、自己の嗜好や行動に対する決定権を持つ、独立した存在なのです。

ほら」


エリカの手が、和也の手首を捉えて、それを自らの胸へと当てる。

張り詰めた、えもいわれぬ柔らかさの先に、ドクン、ドクンと自己主張する、確かな鼓動がある。


「あなたって、自己評価は低いし、時に酷くご自分を卑下なさるけれど、ちゃんとわたくしを虜にする、素敵なところもお持ちです。

今回は許して差し上げますが、次に口にしたら、暫くあなたと口を利いてあげませんからね」


「分かった。

・・有難う」


「この状況でのお礼なら、言葉より、態度でお願い致します」


空いている方の手を、こちらの後頭部に回してくるエリカに、望むまま、行為で返す和也であった。



 「エリカは他に望むものはないのか?」


誘惑の多いベットから出て、共にシャワーで身体を流した後、衣服を整えた2人は海辺へと転移し、その砂浜を散歩する。

素足で波と戯れるエリカを見ながら、和也は先程の話を再開させる。


「・・そうですね、あなたと旅がしてみたいです。

各地を放浪するというよりも、誰もわたくし達を知らない、何処かの一か所に暫く留まって、恋人同士のような暮らしがしてみたいです。

わたくし達は、普通のカップルが順を踏んで気持ちを高めていく過程を全て省略してしまったようなものですから、初々しい2人が行うちょっとしたデートやお喋り、何かの記念日やイベントなどを、2人で静かに楽しんでみたいんです」


夕焼けの美しい浜辺で、波の飛沫を僅かに上げながら戯れるエリカ。

黄金色の髪がそよ風に揺れて、陽の光を反射する様は、まるで一幅の絵画のようだ。


「あなたがわたくしを大事にしてくださるのは知っていますが、もう人ではないのだし、たとえ1人の時に何かあったとしても、十分に対処できます。

この指輪だってあるのですから」


空間障壁の魔法が込められた結婚指輪を、未だに嬉しそうに眺め、そう言ってくる。


「・・旅・・か。

そうだな。

初めはそうするつもりだったよな。

妻達が増えて、いろいろやっている内に、結構な時間が経ってしまったが・・。

城のあるここを拠点にして、妻達それぞれに星を宛がうのもいいかもしれん。

有紗は地球で決まりだが、セレーニアや神ヶ島のある地は誰に任せるか。

そういえば、まだ星の名前も決めていなかったな。

本来なら、あの星はエリカにこそ相応しい気がするが、先程の話からすると、エリカは何処か別の星がいいよな?

ならばあの星はマリーに任せ、スノーマリーと名付けよう。

紫桜も、それで文句は言うまい。

おまえと彼女には、後で相応しい星を贈ることにする」


「マリーに無断で決めてしまってもよろしいのですか?」


波と戯れることを止めたエリカが、風に揺れる髪を押さえながら、そう聴いてくる。


「後で知らせておくが、きっと大丈夫だ。

文句が出るとすれば、星のネーミングセンスくらいだろう」


「フフッ、気に入ってくれるとよいですね」


「どんな星がいい?」


「わたくしのですか?

そうですね・・人がまだあまり文明を発達させていない所がいいですね。

素朴で、自然が沢山あって、生き物が豊富な所が好きです」


「それではスノーマリーと同じではないか。

やはりそちらをおまえの星にするか?」


「いいえ、頂けるなら別の星がいいです。

あの星は勿論大好きです。

お母様達の下に生まれ、エレナやマリーと共に育ち、紫桜さんとも知り合えた。

何よりあなたと出会い、結ばれた場所ですもの。

・・でも、良くも悪くも、あそこではわたくしはあまり自由に振る舞えません。

その名ばかりが独り歩きして、本当のわたくしという存在を、極近しい者を除けば誰もが見ようとはしません。

あなたが現れるまで、あまり心を開かなかったわたくしにも非はあるのでしょうが、少し疲れてしまいました。

だから、ここでの生活は、ある意味凄く楽しいのです。

まだ他に人はおりませんが、あなたのお気に入りのゲームをして、書棚に揃えられた本を読み(お好きなページに小さな折り目があるのがまたいいですね)、その奥にひっそりと隠された、エッチな内容の雑誌をめくる(胸の大きな女性ばかりが裸で出てくる写真のようでしたが。・・水着のも、ありましたね)。

食べたい物を好きなように口にし、城はおろか其処ら中を探検して回り、人目を気にすることなくゴロゴロできる。

楽しいです。

わくわくします。

わたくしって、実はこんな性格だったのですね」


夕日に映えるその笑顔は、本当に楽しそうだ。


『しかしあれを見られたのか・・。

べつに女性の裸というだけで、極普通の写真集ではあるのだが、少し気まずいな。

邪な意図はなく、その造形の美しさを愛でていたと言っても、恐らく信じまい。

今度からはもっと慎重に隠すとしよう。

・・いや、もうあれは必要ないな。

世界が生み出した最高の芸術でもある妻達が、その傍にいるのだから』


「・・今度一緒に探してみよう。

いい星が、きっと何処かにあるはずだ」


「はい。

それと、無理して捨てることはないですよ?

わたくしはべつに気に致しませんので」


「・・べつに無理などしていない。

確かによく目を通しはしたが、今はおまえ達がいるのだから」


「わたくし達の方が、少し大きいですものね」


「もう帰る」


「フフフッ、御免なさい。

あなたを見てると、時々どうしようもなく構いたくなってしまうのですもの。

わたくしの、愛情の証ですから」


背中を見せた和也の下に駆け寄り、しっかりと腕を組んでくる。


「こういう会話もいいですね。

何か、付き合い始めた恋人同士みたいです」


「ゲームのやり過ぎなのではないか?」


「あなたがそれを言いますの?

あそこにあるのは、全部あなたの物でしょうに」


砂浜に付けられた2人の足跡を、悪戯な波が徐々に打ち消していく。

長くただ美しいだけであったこの星に、人の息吹が、想いが、少しづつ宿っていく。

その景色を見て、和也の心に寂しさ以外の何かが浮かぶのも、最早時間の問題であった。


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