記念すべき最初の星にて、その8
女王の、そんな葛藤を吹き飛ばしたのは、エリカの穏やかな、自分にしか聞こえないような囁きだった。
「謁見の場を移した方が宜しいかと。
彼の話は極秘事項として、王族内で処理すべき問題であると考えます」
自分の考えを未だ整理出来ていない女王は、信頼するエリカの言葉に一も二もなく従った。
「エリカの言う通りじゃな」
女王はエリカにのみ聞こえるような声で言ったが、聴覚の鋭い和也には聞こえてしまった。
成る程、王女の名はエリカというのか。
良い名前だと納得していると、女王がその場の皆に向けて言葉を発する。
「ここからの話は国の機密事項となる故、謁見の場を移す。
・・場が整うまで、別室にて休まれよ」
和也にそう宣言した女王は、エリカと共に玉座の奥へと姿を消した。
エリカは神の召喚の話には流石に驚いたが、直ぐに気を取り直し、どうやら彼は自分達に嘘を吐いている事があると疑った。
出会ってからのこれまでの彼の話の内容が、まるでその場で考えたように、ちぐはぐなものに思えたのだ。
国の障壁をあっさり無視した事も含め、彼には聴きたい事が山程あった。
そのためには、極少数で、かつプライベートな空間で、話をする必要があった。
母である女王と、その伴侶である、この国の宰相の父を伴って、エリカは自分達の居住区にある応接室へと急いだ。
和也が再び案内されたその部屋には、3人の人物しか居なかった。
女王とエリカ、そして先程の謁見の場で、女王の左斜め下に立っていた人物である。
部屋に入ると、挨拶もそこそこに、エリカが話しかけてきた。
どうやら、主に自分と話をするのはエリカらしい。
少しほっとした和也は、勧められるままに椅子に深く座り、改めてエリカという女性を眺めた。
自分と見た目の年齢があまり変わらないように見えるその女性は、本当に美しかった。
光を反射して黄金色に輝く、ややウエーブのかかった肩までの艶のある髪、顔立ちは小さく、その全てのパーツが極限までのバランスを保っていて、エメラルドグリーンの瞳がよく映える。
不純物の一切ない、白く綺麗な肌をしており、姿勢が良いせいか、身長は167㎝くらいに見える。
エルフにしてはかなり豊満な胸をしており、地球のサイズを借りれば、Fカップくらいありそうである。
ドレスの胸元に深い谷間が出来ていた。
そこから流れるようにキュッと締まったウエストへと続き、張りのある、しなやかな肉感のする臀部を眺めていると、三方から三様の視線が飛んできた。
どれも自分のあからさまな視線を非難するものであったが、エリカのものだけは、そこに少しの嬉しさと、何故かほっとするような意味合いのものが混ざっていた。
「単刀直入にお聞きします。
あなたは嘘を吐いていますね?」
流石にあからさま過ぎたと、自分の視線を恥じていた和也は、エリカからいきなりそう言われて、内心で酷く動揺した。
嘘といえばほとんど全ての設定が嘘であるが、エリカがどれを指して言っているのか分らない以上、迂闊な答えは出来なかった。
沈黙を肯定と採ったエリカが再度話しかけてくる。
「神に召喚されたというのも、仕事を探しに来たというのも嘘ですね?
それと、この国の障壁を破った時も、本当は何をしたのですか?」
矢継ぎ早に質問してくるエリカに、普段であれば全く動じないはずの和也は更に動揺し、冷静さを失っていった。
なまじエリカが、自分が探し求める仲間、もとい嫁候補であると認識した事に加え、今まで間近でこんな美しい女性と接した事もなく、あらゆる面で経験値が不足していた。
嫌われたくないという心理的要素が追い討ちをかけ、到頭和也は、自分がこの世界の創造神であるという一部のみを隠し、あとは本当の事を話す事にした。
「自分は、こことは別の星から、自分の嫁になってくれる女性を探しにやって来た。
召喚されたというのは嘘だが、別の世界から来たというのは本当だ。
仕事を探しにという理由は、嫁を探している間、お金が必要になる事もあるだろうから、少し稼いでおこうと考えたからだ。
自分は、この世界の物を何一つ持っていなかったから。
障壁については、何かの魔法が掛かっている事は分ったが、大した事なかったので気にしなかった。
正直、何でそんなに問題になるのか分らん」
ゆっくりと、半ば諦め気味に話す和也の話の内容を、その場の3人は、どう表現したら良いのか分らないというような顔をして聞いていた。
星という言葉も初めて耳にするし、別世界と言われても上手く想像出来ない。
後半の内容は理解出来るが、障壁が破られた事を初めて耳にして驚く2人は、自慢の障壁を大した事ない呼ばわりされて、その顔には憮然としたものが混ざっていたが、彼がここに来る間に話し合った結果、とりあえずエリカに全て任せる事にしたので、敢えて何も口に出す事はしなかった。