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創造神の嫁探し  作者: 下手の横好き


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世の理を超えたその先に、その11

「所長、日本とアメリカ、及びドイツの大学から、研修医を派遣したいとの打診を受けていますが、どうされますか?」


「またか。

・・御剣は何と言ってる?」


「送られてきたメールの色を見ろと仰ってます。

それが赤なら無視、青なら申し込みを受け入れ、通常の白ならおまえの判断に任せるとのことです」


事務長の言葉を聴きながら、俺はやれやれと溜息をつく。

ここで仕事を始めて5年。

当初の人手不足が嘘のように、各国から次々と人員が送られてきて、今では医師だけでも7か国、17人になる。

どの人材も、御剣が直に選んだ優秀な者達ばかりなので、教える自分も自然と力が入り、このセンターのレベルを急速に押し上げる結果となっていた。

それでいて、御剣グループをバックに、単純な給与でも他の5割増しで、衣食住を含めた福利厚生が段違いに良く、勤務時間も実働9時間程度。

ここで働くスタッフ達から、帰省時やメールなどで、今の充実ぶりと喜びの声を聞いた者達の噂が徐々に広がり、やがていろんな所から問い合わせがくるようになった。

最初はその判断をグループに丸投げしていたのだが、イ○ドの国境付近に造られた献血村に立ち寄ったらしい奴がその足でここを訪れ、『ある程度は補助してやるが、自分が教えたいと思える者は自分で採れ』と、釘を刺してきた。

正直、忙しい俺には面倒でしかなかったのだが、『あなたが選んで教えた人達が、何時か世界中で活躍していくかもしれないのよ?素敵じゃない』、という江戸川さんの言葉に、つい頷いてしまったのは自分なのだ。

まあ、相手の反応を見ても、人に教えるのは得意のようなので、やれるだけやってみることにした。


「分かった。

赤は開封前に常に削除、青は受諾の意思を伝えて、白のメールだけ、こちらに転送してくれ」


「はい」


ト〇コから事後処理を終えてここに来た彼女が、そう返事して仕事に戻っていく。

今は看護師の娘と同じ家で暮らし、休日は、お互いの家族同士でよく食事をしたりする。

江戸川さんが娘と息子を生み、仕事に復帰した後も、看護師の娘の方が少し体力の落ちた彼女を心配して、よく手助けしてくれた。

多言語が飛び交う環境で育つ子供達が、将来何か国語を話せるようになるか、今から楽しみである。

そうそう、子供と言えば、江戸川さんが第一子となる娘を産んだ時、一悶着あった。

喜びの声より先に、『俺の闘いはまだ終わらないのか』と口に出してしまった俺に、江戸川さんは静かな怒りの籠った目を向けてきて、『女の子で御免ね』と言ったきり、暫く口を利いてくれなかった。

『いや凄く嬉しいんだけど、この子も奴の魔の手から守らねばと思ったら、つい口から出てしまったんだ』と幾ら弁明しても、その日は2度と口を利いてくれなかった。

俺が自室に戻り、手術で使う大事な手を痛めないように、サンドバックから抱き枕に変更した奴の似顔絵に向けて、渾身の連打を放ち続けたのは言うまでもない。

もっとも、もう歳なのか、1分も続けると息切れしてくるし、パンチの切れも、大分衰えた気がするが。

因みに、第二子の誕生の際は、前回の失敗を教訓に、真っ先に喜びを表現したが、かなり大袈裟だったのが災いし、『本当に嬉しいの?』と、少し訝られた。

それでいて、奴が出産祝いに送って寄越したバイオリンにはとても感謝しているのだから、抱き枕を殴る俺の拳が休まる暇もない。

それにしても、以前のピアノといい、娘が生まれた際のハープといい、奴は(うち)の家族を音楽隊にでもするつもりか?

御剣の考えてることは、今も昔もひとっつも分からん。


 奴がここへ送り込んでくるのは、医療関係者ばかりではない。

教育者、建築技術者、農業関係者、経営者、実に様々だ。

ただ、医療を学びに来る者達と違い、彼らは母国で定年を迎えたり、会社が潰れたりして、熱意はあっても、それを活かせる場を見つけられないでいた者達が多い。

そうした彼らを、奴がここに招待して、街造りに参加してもらっている。

食べるためだけに闇雲に森林を伐採して畑を作ってきた者達に、森林が持つ役割の重要性を教え、1つの畑で効率よく生産する手段を教える。

搾取するだけではなく、消費した分を回復させることを教え込む。

借りた畑や養殖地が軌道に乗るまで、御剣グループが生活の面倒を見てくれるから、彼らは収穫を急ぐことなく、じっくりと腰を据えて準備できる。

この広大な土地は、緑地保護や都市管理のためグループが全てを所有し、個人に売却することはないが、5年ごとに更新される契約で、必要な要件を満たしていけば、個人が土地を借り続けて事業もできる。

市民の住居は元から完全な賃貸(無償を含めて)であるが、マンションではなく個人の家を建てて住みたいと考える者には、審査を経て、更新可能な30年の借地権を売る。

日本人が多く住む場所でもあるから、母国で腕を活かせる場所が減った宮大工を招いて、神社も建設するらしい。

完成した都市は、さぞかしアフリカで異彩を放つ場所となるだろう。

実に楽しみだ。

江戸川さんが奴に直にお願いして叶えられた桜並木の公園で、毎年花見をするのが、我が家の恒例になりつつある。

狭い国で、人が滅多に通らない田舎道にも道路を敷く自治体が、マンション建設で土地を更地にしたい業者が、そこに静かに咲いていた桜に手をかける前に、御剣グループが費用を出して、ここまで運んできたという。

奴の力が働いているのか、老木の割に花は可憐に儚く、若葉は美しい緑に映える木々を見ていると、懐かしい記憶ばかりが蘇る。

江戸川さんと親友の契りを結んだ日の桜。

初めてのデートで腕を組んで歩いた桜並木。

人生の節目節目に、その傍でひっそりと咲く、桜の姿があった。

その散り際の潔さ、儚さと並んで、日本人がこの花を好む理由は、きっとそんなところにあるのかもしれない。



 更に数年が過ぎた。

人員がより充実し、医学における世界の一大拠点となった当センターに、ある日1人の女性患者が送られてくる。

末期に近い乳ガンで、身体の何か所かに転移もしていた彼女は、自国の医者から余命宣告を受け、生きることを諦めつつあった。

そんな彼女がここへと搬送されてきたのは、1通の黒い封筒に由来する。

世界的大企業が差出人であるその手紙には、何故か彼女の病状が詳しく把握され、それに対処可能な病院は、今の所世界にただ1つしか存在しないこと、アフリカにあるその施設までの渡航費など、費用の一切をグループが負担することなどが記されていた。

そして何より彼女の心を動かしたのは、その施設の責任者であり、今回彼女が命を託す相手でもある主治医の名前である。

ドクター隅田。

その人物の詳しいプロフィールを読み込んだ彼女の顔に、驚きが広がる。

彼は、自分が中学の時に手紙を出した、淡い初恋の相手であった。


 あの時、彼は一向に現れず、代わりに野次馬のような男子達が大勢覗きに来た。

裏切られた。

自分の気持ちを土足で踏みにじるようなその行為に、当時はそう思って、その後暫く、男性全般を良く思えない日々が続いた。

社会人になって、結婚を前提に交際を求めてくる人もいたが、どうしてもあの時の悲しみが尾を引いて、頷くことはできなかった。

そんな自分に、初めて異性の友人ができたのは、つい2年前。

もういい歳だし、結婚も諦めていた自分に、その人は静かに近づいて来て、黙って側にいてくれた。

こちらが何か言うまで、話しかけてこない。

決して身体に触れてこない。

それでいて、何か困ったことがあると、すぐ傍にいてくれる。

必要に迫られて、何度か助けてもらっている内に、次第に友人のように振る舞えるようになった。

その人は独身で、独り暮らし。

過去に何かあったらしく、あまり人付き合いが上手そうには見えないが、私に同じような匂いを感じたのか、2人でいる時は、段々と会話が弾むようになってきた。

彼は口には出さないが、私との交際を望んでいる気がする。

過去のトラウマとの間で悩んでいた私に、思いもよらぬ病魔が潜んでいたと知ったのは、会社での健康診断の時だ。

触診で検査をしていた女医さんが、難しい顔をして念入りに調べ直し、その後私にこう言ったのだ。

『直ぐに大きな病院で検査を受けてください』

緊張しながら訪れた先で耳にした言葉は、末期に近い乳癌。

しかも、既に何か所かに転移しているという。

余命半年。

長くても1年だろうと、そう告げられた。

両親が早くに他界し、身寄りのない私は、本来なら他の身内に内密に告げられる言葉を直に聴き、呆然とした頭で、今後の身の振り方を医師に迫られる。

入院して手術してみるか、それとも抗がん剤の服用だけで済ますか。

何も決断できないでいた私にかけられた言葉は、『なら帰って』であった。

後日、今度は別の病院で相談すると、集中治療室には貴重品が持ち込めないから、誰か身内を連れてきてくれとか、病室で世話をする人を用意してとか言われて、ここでもまた帰らざるを得なかった。

いい歳をしたお一人様には、つくづく暮らしにくい国になったものだ。

ここで彼に頼ろうものなら、それこそ彼の気持ちを利用するみたいで気が引けた。

溜息も出ない私の下に、1通の黒い封筒が届いたのは、そんな時であった。


 隅田医師のプロフィールの下には、誰が書いたのか、手書きでこう記されていた。

『あの出来事は不幸な事故であり、彼自身はそれに関与していない。だが彼はあの時の出来事を決して忘れず、真摯に過去と向き合ってきた。己を磨き、患者の為に尽くしてきた彼のこれまでの時間を、どうか肯定してやって欲しい』

何故あの事まで知っているの?

正直、半信半疑ではあったが、可能性があるなら、まだ人生を諦めたくはない。

それにこの文言が本当なら、今度こそ、今の彼とうまくやっていける気がする。

私は、過去のトラウマと決別し、現在の病魔と闘うべく、海を渡る決断をするのであった。



 「初めまして。

私が今回あなたの治療を担当する、当センターの所長、隅田です。

これから、治療方針等のご説明を致しますが、何かご不明な点がございましたら・・」


診察室に入ってきた患者に対して、いつものように話し始めた俺を、その患者はじっと見つめていた。

最初は気のせいだと思っていたが、じっと黙ったまま、俺から目を逸らさない。

何か言いたいことがあるのだろうかと、こちらから問いかけようとした矢先、俺の斜め後ろに控えていた江戸川さんが、カルテの名前を見て息を飲んだ。


「この名前・・・もしかして中学の時の・・」


その言葉で、俺には彼女が何を言わんとしているのかが分かった。


「あなたが、私が中学の時に傷つけた、手紙の主でしたか」


俺の言葉に、その女性はにこやかに頷く。


「はい。

私がそうです。

あの時は随分待たされましたが、やっと今日、お会いできましたね」


別段腹を立てている風には見えないその女性に向かって、俺は頭を下げる。


「決して故意ではありませんでしたが、あの時は本当に申し訳ないことをしました。

心からお詫び致します」


「いいえ、あなたが悪いわけではありません。

ここへと導いていただいた手紙にも、そう書かれておりました。

全ては不幸な偶然、事故であったと今は思っています」


穏やかにそう語る彼女の表情に、偽りの色は見えない。


「私を許していただけるのですか?」


「許すも何もありません。

あなたは悪くない。

今は本当にそう思っています。

・・恥ずかしながら、あの黒い手紙を頂くまでは、あなたのことを誤解致しておりました。

男性不信になり、この歳まで独り身を通してもおりました。

ですが、ここを訪れて、このセンターで働く方々や患者さん達の表情を見て、その内の何人かとはお話もできて、考えが変わりました。

あなたは悪くありません。

もしあんな酷い仕打ちを平気でできるような人なら、このセンターの雰囲気が、ここまで良いはずがありません。

病に苦しむはずの人が笑い、優しさと善意に満ちた場所で、皆穏やかな表情をしている。

所長であるあなたの、努力の賜物でしょう。

ここに来るまで、独り身故に辛い目にも遭いましたが、このセンターではその心配もないことが分かりました。

私の、余命幾許も無いこの命を、あなたに託します。

もし可能であれば、人生を楽しむもう少し長い時間を、私に与えてはくれませんか」


静かではあるが、強い想いの籠った彼女の言葉を、俺は噛みしめる。


「最善を尽くします」


端的ではあるが、同じように想いの籠った俺の言葉に、彼女は満足そうに頷いてくれた。



 それから数か月、看護や介護のスタッフ達と会議を重ね、術後のケアに万全を図る一方で、俺自身は今まで培ってきた総合医としての力を全て吐き出し、全力で彼女の治療に当たっていた。

基本となるのは、化学治療(全身)と放射線治療(局所)の2つ。

CTシュミレーションで病巣を定めてマーキングを施し、コンピューターを使って放射線の範囲や線量などを計算する。

全身の6か所に転移をしていたので、治療の度に同じ体位で放射線を浴びせられるよう、シエルと呼ばれる固定具も作成した。

さらに、遺伝子検査による個別化治療を行った後、今度はゲノム医療である癌遺伝子パネル検査をし、多数の遺伝子を同時に調べ、その遺伝子変更に効果が期待できる薬を探す。

御剣重工から最新の医療設備を導入し、治療に用いてはその問題点を指摘し、改善を迫る。

製薬会社に所見を添えて細胞のサンプルを送り、新薬の開発を急がせる。

限られた時間の中で優先順位を間違えず、刻々と変化する病状と闘いながらの数か月。

だがその甲斐あって、緩やかではあるが、徐々に癌細胞を完全に消すことに成功していき、更にその後の数か月で、とうとう不可能に思えた完治を果たす。

彼女の嬉し涙に、係わったスタッフ達が全員で喜びを表現する中、俺は1人で自室に向かい、無言で抱き枕を連打する。


「どうしたの?

何か御剣様に文句でもあるの?」


後を付いて来たらしい江戸川さんが、俺の顔を覗き込んで、そう尋ねてくる。


「放射線治療の際、1か所だけ、他の正常細胞を傷つけ過ぎる所があった。

必要な線量を当てると、何かしらの影響が出た可能性が高い場所だ。

だが実際にやってみると、まるで何かに守られているかのように、全く影響が出なかったんだ。

俺の思い過ごしでなければ、きっと奴が手を貸していたはずだ」


「べつにいいんじゃないかな。

『神の見えざる手』とかいうやつでしょ。

それにその人が持つ人脈だって、その人の力の内だよ?

神様に手を貸していただける人なんて、きっとこの世界に何人もいないと思う。

あなたは紛れもなく、その内の1人なんだから」


「その言葉は、そういう使い方はしないと思うぞ。

あれは単なる経済用語だ」


恐らく分かってて言っているのだろう。

顔が笑っている。


「勉強やスポーツじゃないんだから、過程も大事だけど、何より優先すべきはその結果でしょ。

そのお陰で彼女が助かったのなら、それでいいじゃない」


幾ら歳を重ねても、相変わらず俺を魅了する笑顔でそう言われては、これ以上反論する気も起きない。


「ほら、戻って彼女の頑張りをもっと褒めてあげましょ。

副作用が少ない治療をしていたとはいえ、抱える不安や苦痛に耐えて、終始笑顔でいたんだから」


彼女に腕を取られ、共にその病室まで再び歩く。


「あなたの樹、大分大きく逞しく、立派に成長したね」


院内の通路を通る度、出会う人達から向けられる好意的な眼差し。

その1つ1つに、江戸川さんは嬉しそうな顔を見せる。


「約束を守ってくれて、私の願いを叶えてくれて、有難うね。

私が取った選択を無駄にすることなく、患者さんに活かしてくれるあなたが凄く好き。

子供達を可愛がり、私を変わらずに愛してくれるあなたはもっと好き。

これからもずっと一緒にいるから、2人で頑張っていこうね」


江戸川さんが奴によって救われたあの日から、俺達の中で当たり前のように共有されてきた想い。

俺達は、2人で1つ。

『人の命はお金で買えない』

そんな言葉でさえ、絵空事のように響いてしまえるこの世界で、俺達はこれからも共に生きていく。

僅かながらも世界を照らす、小さな灯台のように。




 後にグループの主力施設の1つにまで発展する、御剣総合医療センター。

所長である彼の下には、その人柄と技術に憧れる多くの人材が集い、国の垣根を越えて、世界中で不治の病に苦しむ者達から、最後の希望を託される場所となる。

貧しき者からは金銭ではなく情報を提供してもらい、治療や介護で得たデータやサンプルをグループ企業の下へ送って、新薬や医療ロボットなどの開発に役立てる。

富む者からは必要な金銭を得る代わりに、情報漏洩対策を徹底し、入院生活を少しでも快適なものとするよう、様々な工夫が凝らされる。

ただし、貧富の差によって、その治療や介護に差が出るわけではない。

そこは徹底しつつ、あくまで日常生活の中で、調理スタッフと栄養士による特別メニューが出されたり、お気に入りの本や紅茶を取り寄せてもらったりといった、細やかなサービスがなされる。

国や自治体、他のいかなる団体からの圧力や拘束を受けないので、独自の理念の下、世界最高峰の医療を提供し続けた。


 隅田夫妻の晩年には、幾つかの大きな謎がある。

70を過ぎるまで現役を続けた後、早々に遺産の整理をした彼らは、ある日突然消息を絶つ。

医学界では世界的なニュースであったが、故人の遺志を尊重するとしたその子供達によって、死因も明かされないまま、身内だけの葬儀を行い、速やかに埋葬されたとされる。

しかし、その消息を絶つ直前まで、2人仲良く公園を散歩する姿を目撃していた者達からは、その死に疑問の声も上がる。

生前彼らに世話になった者達からも、その埋葬にすら立ち会えなかったことに、悲しみの声が広がった。

そんな状況の中、彼らの子孫達は堂々と背筋を伸ばし、何も恥ずべきことはしていないという姿勢でいたのが印象的ではあった。


 その墓には、1年を通じて様々な花が咲き誇る。

わざわざ海外から、毎年献花に訪れる人もいる。

彼らが育て、命を救った人々は優に3000を超え、その生きざまを瞼に焼き付けた者達が、次世代の人材を育て、世に送り出していく。

世の理を超え、1人の女性を救った和也の想いが、この地に枯れることのない、美しい花を咲かせたのであった。




 余談ではあるが、ここで彼らの、この世界最後になる遣り取りを記しておく。


「ライフワークだった例の遺伝病も既に克服したし、そろそろ引退しようと思うんだが」


「じゃあさ、私と第二の人生を歩んでみない?」


「え、今から?

一体何をするんだ?」


「御剣様の眷族になって、取り戻した若い身体で、いろんな世界を旅したいの。

御剣様の本拠地である、惑星にも住めるんだよ?」


「・・冗談じゃない!!

死んでからまで奴にこき使われるのは御免だね」


「だから死なないって。

これからは自由に過ごせるし、私と一緒に門を潜るだけ。

簡単でしょ?」


「嫌だね。

絶対に嫌だ」


「ふ~ん、そう。

なら私一人だけで行くね。

御剣様のメイドになって、永遠に可愛がってもらうんだ」


「!!!」


「じゃあね。

さよなら」


「待ってくれー。

俺を置いて行かないでくれー」


現れた門を潜る振りをした私を、追うように走ってきた彼をひらりとかわして、その背中を突き飛ばす。


「ああ~っ」


「フフフ。

これからも、ずっと2人でいようね」


予め用意してあった、子供達宛の遺書を部屋に残した私は、姿の見えなくなった彼の後を追い、静かな足取りで、光り輝く門を潜るのでした。


頂いたご感想に、そろそろ主人公メインの話をとのご希望がございましたので、予め考えていた2つの内の1つ、ダンジョン編を書いていこうと思います。

お暇な時、少し時間が空いた時など、僅かでも皆様の時間潰しのお供になれば幸いです。

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