記念すべき最初の星にて、その7
和也が今度こそはと口に出したその言葉は、周囲の者達に皆一様の反応をさせた。
初めに驚愕、次いで警戒の表情である。
この世界には召喚魔法などというものはなく、もしそんな事が可能であれば、世界の軍事バランスを覆しかねない大事である。
また、魔法に関しては、この国が世界の最先端であるとの思いが強いエルフ達にとって、自分達の知らない大規模魔法があるという事実は看過出来ないものであった。
当然、召喚魔法自体が存在しなかったのであるから、和也が地球で頻繁に盗み読みしていた、ライトノベルなる小説によく出てくる、チートなる能力補正の概念は彼らにはないし、実際に存在もしていない。
ただ、他の世界から好きな時に戦力を増強出来る程度の認識しかないが、それで十分なのだ。
彼らの次なる関心は、一体どの国が和也を召喚為しえたのかである。
女王の隣で話を聞いていたエリカは、和也が1人で魔の森を抜けて来た際、誰も同伴していなかった事、この国に仕事を探しに来たと言っていた事から、話がおかしい事に薄々気が付いているが、障壁の魔法をあっさり抜けて来た事もあり、未だ沈黙を守っていた。
しかし、そんな事を知らない女王は、そういう訳にはいかない。
国にとっての重大事項をより正確に把握すべく質問を重ねた。
「そなたは今、異世界から召喚されたと申したが、一体どの国に召喚されたのじゃ?
そなたを召喚した者はどうした?」
今度は和也が困る番であった。
観察と称して彼が盗み読みしていた本では、大抵主人公が事故で死んだり他の生物に転生したりして異世界に行くが、彼らを異世界へと送り込むのはその本で神と呼ばれていた存在であり、言わば自分の事なのだ(自分は髭を生やした年寄りでも、やたらと寛大で親切な女神でもないが)。
読んでいる時は、その星の人間の想像力の高さに感心し、よくここまで思いつくものだと驚いたものだが、実際、自分はこの世界に限らず、まだ何もしていない。
また、国王が魔術士に召喚させるパターンもあるが、その場合は大抵勇者としてであり、倒すべき魔王なり敵なりがいるのだ。
自分が読んでいた本では、どちらにせよ、召喚されたと言えば周りが変に納得してくれて、召喚される前はともかく、召喚後の深い人物設定は、能力値以外ほとんど必要なかった。
少し考えて、やはり国に召喚される設定よりは自由度が高そうだと判断した和也は、神による召喚を選んだ。
「国ではなく、この世界の神によって召喚されました。
神は自分を召喚する際、この世界に着いたら自分の好きにして良いと言われましたので、とりあえず生活するためのお金を稼ごうと、仕事を探しにこの国に来ました」
今度の和也の発言には、直ぐに反応出来る者がいなかった。
エリカでさえ、彼女にしては非常に珍しい事だが、絶句していた。
この世界にも当然、一部の国や人種で、神を信仰する習慣はあるが、その姿や声を見たり聞いたりした者は神官ですら居らず、和也の言っている事が本当なら、歴史的な大事件である。
教団のある国に知られれば、どんな事をしても和也を拉致しに来るだろう。
暫し呆然としていた女王は、和也をこの国に留める事の利益と不利益を秤にかけながら、どうしたものかと今後の対応を決めかねていた。