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創造神の嫁探し  作者: 下手の横好き


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エリカ編その16

 王宮の自分の部屋へと戻った和也は、エリカに心の中で話しかける。


『今大丈夫か?』


『どうかなさったのですか?

今は特に用事はございませんが』


すぐにエリカから返事が来る。


『渡したい物があるので、時間が取れるなら自分の部屋まで来てくれないか?』


『分かりました。

少しお待ちください』


エリカが来る前に、彼女の好きな紅茶でも入れておこうと、和也はテーブルの上のティーセットに手を伸ばした。



 昨夜、エリカを抱く前に、和也はエリカに尋ねたことが1つある。

子供が欲しいかどうかである。

エリカは躊躇いがちに、しかしすぐに答えた。


「あなたとの子供なら是非欲しいですが、それはもっとずっと後でいいです。

わたくし達はまだ出会ったばかり。

あなたとの、恋人としての時間も過ごせていません。

母になる前に、もっとあなたに甘えたいし、2人きりの時間も欲しい。

2人でやりたいことも沢山あるのです。

そして、もっとあなたに甘えて欲しい。

長く人の温もりを知らずにきたあなたに、孤独な時間を友として、寂しげな笑顔が似合うまでに心が冷えてしまっているあなたに、わたくしの温もりを分けて差し上げたい。

子供ができてしまったら、その時間が半分になってしまいますから。

勿論、その時はあなたに、家族というものの幸せを味わっていただきますが」


そう言って、そのたおやかな指で頬を撫でてくるエリカを襲いたくなる気持ちを必死に耐えて、和也はエリカに告げる。


「では、自分の精液には通常と異なる成分を含ませるとしよう。

エリカの美しさに華を添え、その身体能力と魔力を向上させる成分を。

・・それからもう1つ、言わねばならないことがある。

自分はもうエリカを手放す気にはなれない。

故に、エリカには人としての生を諦めてもらう。

自分の力を使って神の一員になってもらう。

さしずめ、愛と美の女神というところか。

不老不死となり、自分と共に、終わることなき時の流れの中であがき、苦しんで欲しい。

きっと、君は自分のことを恨むだろう。

だが、それでも、エリカを失う心の痛みに比べればましだ」


良心の呵責から、目を逸らしつつそう言った和也に、エリカは一度身体の力を抜いて視線を落とした。

そしてすぐに厳しい視線を和也に投げつけ、その頬を叩いた。


「あなたはまだそのようなことを仰るのですか?

わたくしがあなたを恨む?

その言葉はいくらあなたでも許せません。

死ねない?

それが何だというのです?

確かにあなたはこれまで果てしない時を生きてこられたのでしょう。

平凡で似たような毎日の繰り返しにうんざりしていたことでしょう。

でもそれはあなたが1人だったからでしょう?

これからは少なくとも2人、わたくしがいるのですよ?

わたくしだってそうです。

どんな時でもあなたが傍にいてくださるのでしょう?

決して1人にしないでくださるのでしょう?

でしたら、例えどんなに辛く苦しいことでも耐えて見せます。

その中で少しでも楽しいこと、嬉しいことを探して、あなたと分かち合います。

・・もし万が一、わたくしがあなたのことを恨むとしたら、それはわたくしを1人にした時だけです」


自分を叩いた手が痛いのか、それとも心が痛いのか、エリカは叩いた手を、胸の前でもう片方の手で包み込みながら、初めの激しさとは打って変わって消え入りそうな声で、そう付け加えた。

またやってしまった。 

自分は何回エリカに余計な気を遣わせたら気が済むのだろうか。

もういい加減エリカのことを疑うのはやめよう。

やっとの思いでつかんだ幸せを失うことを恐れ、必要以上に不安になってしまっている自分。

それは創造神としての自分の本来の姿ではない。

自分にそんな人間的な心の弱さがあったことを喜び、そのことを教えてくれたエリカに感謝しつつ、前に進むべきなのだ。

人を信じるという、強い心を育てるために。

和也は目を閉じ、心を落ち着かせる。

そして、次に目を開いた時には、その瞳が魔力で蒼穹のごとく輝いていた。

エリカの身体を細胞レベルで作り変えていく。

この世界が自分に与えてくれた、エリカという存在を極力損なうことなく、必要なものだけを改変していく。

数秒で作業が終わり、人でなくなったエリカを無言で抱きしめる。

柔らかく抱きしめ返してくるエリカを心の底から愛おしく思い、ベッドへといざなうのであった。



 丁度紅茶の茶葉が開く頃、エリカがやって来た。

その表情は何時もと変わらない。

自分の眷族として、神の仲間入りを果たした後でも、エリカとしては自分の妻であるという意識の方が強いのか、まるで気にしてないように見える。

試しに行為後、自分の腕を枕にしているエリカにそれとなく尋ねてみたが、『念話ができるのは素晴らしいことですね』という程度の感想しかなかった。

今はまだ、たいした力を授けてないが、これから自分との行為を繰り返していけば、それだけでもその能力は相当なものになるだろう。

力に溺れなければその使い方を誤ることもない。

いつもと変わらぬエリカを頼もしく思いながら、用意したペンダントを渡した。


「自分で初めて稼いだ金でエリカに何か買ってあげたくてな。

気に入ってくれるとよいが」


渡されたペンダントをしばらく見ていたエリカは、やがて一言呟いた。


「着けていただけますか?」


そう言って、両手で自らの黄金色の髪を少し持ち上げる。

まるで美しい絵画のような光景に目を奪われながらも、その芸術品のごとき首筋にペンダントを着けてやる。

思った通り、エリカの首筋によく映える。

いい仕事をしたと、自己満足に陥っていた和也の首に、エリカのしなやかな両腕が絡みつき、唇を奪われる。

初めて口づけを交わした頃の激しさはないが、ゆっくりと、しっとりと、味わうように動いてくるエリカの舌の感触は何物にも代え難く、和也を魅了するのであった。


 暫くして、やっと満足したらしいエリカが唇を離す。

艶かしい吐息をつきながら、輝く笑顔を浮かべるエリカ。


「あなたのお気持ちとこのペンダント、両方とも有難く受け取らせていただきます。

今のではお礼の気持ちが足りませんので、残りは今夜、時間をかけてお渡し致しますね」


魔獣討伐よりエリカとの夜の方が遥かに難易度が高そうだと和也が思ったのは内緒である。

公務の時間が迫り、戻っていくエリカを見送りながら、自分もそろそろ時間だなと、和也はエレナとの約束の場所へと向かうのだった。


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