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創造神の嫁探し  作者: 下手の横好き
111/181

アリア編、その20

 「2人共そこで止まれ」


昼食を終えて散策を再開した2人に、和也の声がする。


「どうしたの?」


アリアが振り向いて尋ねてくる。


「30m先に、蜂の魔物の巣がある。

お前の格好はまっ黒だから、奴らを刺激する。

自分が駆除してくるから、ここで待っていろ」


「ナックルビーね。

何をするのか見てていい?」


「ならその間、オリビアを抱き締めていろ。

そうすれば、防御障壁が彼女も保護する」


「分かった。

オリビア様、こちらに」


「嬉しい。

しっかり抱き締めてね」


巣の10m手前で、黒い身なりの和也とアリアに反応して、魔物たちが騒ぎ出した。

和也は右の掌に赤い球体を浮かべて、攻撃してくる蜂たちをそこに吸い込んでいく。

数十匹吸い込むと、今度は直径3m以上ある巣を丸ごと魔力でコーティングし、中に居るであろう女王蜂と幼虫ごと、そこから出られないようにして、収納スペースに放り込む。


「何今の赤い球?

蜂なんか吸い込んでどうするの?」


オリビアが興味深げに尋ねる。


「自分のダンジョンで使う」


「子供達に!?」


「いや、それとは別のダンジョンだ」


「複数持ってるの!?」


「まあ、そうだな。

これ以上は秘密だ」


「えーと、オリビア様、歩きたいので離れていただけますか?」


「え~、なら腕組んでいい?」


「・・はい」


「どうする?

この階層をじっくり見ていくか?

それとも、4階層に降りる場所があれば、直ぐに降りるか?」


「そうねえ、天気もいいし、このまま暫くアリアとこうして散歩がしたいわ」


「分かった。

なら、ゆっくり進もう」


和也は2人を先に歩かせ、再度、その後ろを付いて行く。

木漏れ日を浴び、時折吹いてくるそよ風に身体と髪を悪戯されて、アリアとオリビアの2人は、楽しそうに話に花を咲かせる。

これまでは、部屋の中という密閉された空間でしかアリアと過ごせなかったオリビアは(ほんの数回、家の庭でお茶したことはあるが)、外の空気に触れながら、気兼ねなく彼女と親しくできることを、本当に喜んでいた。

アリアも、必要以上に身体に触れられなければ、オリビアを好意的に感じているので、彼女に笑顔が溢れることを、素直に喜べる。

和也は、そんな2人に口元に笑みを浮かべつつ、周囲に軽く気を配る。


「100m先で誰かが戦闘している。

迂回するか?」


「助けてやらないの?」


「その価値があれば吝かではないが・・。

それに、助けが必要とも限らないしな」


オリビアの問いにそう返す和也に、彼女は言う。


「とりあえず見に行きましょう」


和也の思考を熟知しているアリアが何も言わないので、彼女を引っ張るように歩いて行く。

アリアと和也は顔を見合わせ、苦笑する。


「赤の他人なのに、随分熱心だな」


「だってここなら、うちの町の住人である可能性が高いでしょう?

ここまで来れる優秀な納税者を、できれば1人でも減らしたくはないわ」


「成る程」


現場に着くと、男が1人で数匹のメタルリザードを相手にしていた。

そこそこ腕が立つようだが、如何せん相手の数が多い。

既に何か所か血を流している。


「助けが必要か?」


男にジャッジメントをかけた和也が、瞳を蒼くしながら尋ねる。


「頼む!」


和也達に気付いた男が、安心したように言ってくる。

和也は、掌に浮かべた赤い球体に魔物たちを吸い込むと、男の傷を癒し、その手に銀貨6枚を握らせる。


「これは?」


礼を述べようとしていた男が、手の中の銀貨を見て、不思議そうに尋ねてくる。


「弱い魔物でも、1体の首で銀貨1枚になると聞いた。

6体いたから6枚。

証明部位を残せなかったからな」


「いや、1人では倒せなかったのだから、私に分け前を受け取る資格はない。

傷まで治してもらったんだし、尚更だ」


「家で待ってる者の為にも、少しでも必要だろう?

キノコ狩りも手伝ってやるから、早く家に帰ってやれ」


「何故それを?」


驚く男の問いには答えず、和也はオリビアに声をかける。


「1時間くらい、この辺りでキノコ狩りをしてみないか?

君はアリアと一緒でいいから」


「いいわね。

宝探しみたいで、何か楽しそう」


和也達の会話が聞こえたのか、珍しく彼女はすんなりと同意する。

少し強引ではあったが、和也達の善意に感謝し、その男は元々の目当てであった、キノコ狩りを再開する。

だがそれは、本来のものとは随分趣が異なった。

透視を用いて、広範囲を探索する和也のお陰で、男は、探すというより、指示された場所まで取りに行く感じになる。

移動途中で魔物に出会えば、それすら和也が駆除してくれる。

あっという間に、大きな袋一杯にキノコが溜まる。

アリア達の方も、和也が敢えて男に取らせなかった数個を無事に見つけたようだ。


「これを持って行け」


和也は男に、小瓶に入った薬を渡す。


「君を待つ人の身体を治してくれる」


「!!」


何だろうと小瓶を眺めていた男が、はっとして和也を見る。


「ではな」


次の瞬間、男の姿が消え、再び和也達だけになる。


「嘘、転移した!?

そんなに強そうに見えなかったのに・・」


「人は見かけによらないということだな。

優秀な納税者を失わずに済んで、良かったではないか」


「それは、まあ、そうなんだけど・・」


未だに信じられないという顔をしているオリビアの隣で、誰の仕業か分かっているアリアは、ただ嬉しそうに微笑んでいた。




 気が付くと、男はギルドのすぐ近くにいた。

どうやら転移で送られてきたらしいと男が理解するまで暫しの時間を要したが、何とか気を落ち着けて、採取したキノコをギルドに売りに行く。

1本銀貨1枚で売れる高級品なので、大きな袋に目一杯に入れたキノコは、全部で金貨1枚になった。

さらに、本来ならそれで妻のための薬を買うつもりであったのに、あの少年がそれまでくれたお陰で、手にしたお金が丸々手元に残る。

男はそれで、妻の好物を買うと、急いで家に帰った。


「ただいま。

体の具合はどうだい?」


ベットで横になっていた妻に、男は優しく語り掛ける。


「迷惑かけて御免なさい。

薬を飲んだけど、前程には効かなくなった気がするの」


「・・そうか。

じゃあ、これを飲んでみてくれ」


男は、和也に貰った薬を、躊躇(ためら)いなく妻に飲ませる。

本来なら、あんな場所で初めて会った者に貰った薬を、大事な妻に直ぐ飲ませるような男ではないが、僅かな時間とはいえ共に行動した和也の人柄を信じ、躊躇(ちゅうちょ)なく口にさせる。

飲んでから少しすると、妻の顔色が見る見る良くなった。


「・・どうだ?」


「・・信じられない。

もう何処も痛くないし、身体全体のだるさも消えた。

凄く身体が軽いわ。

それに、久しぶりにお腹も空いてきた」


「そうか!

君の好物を買ってきたんだ。

沢山食べてくれ」


嬉しそうに、食べ物をテーブルに並べる彼。

それを美味しそうに食べながら、妻が申し訳なさそうに尋ねてくる。


「でもあの薬、凄く高かったんじゃない?

今までの物とは、何か根本的に違う気がするもの」


「それがさ、地下迷宮の3階層で危うく複数の魔物にやられそうになった時、助けてくれた人がいて、その人が、一緒にキノコを探してくれたばかりか、あの薬まで只でくれたんだ。

帰りもすぐ近くまで送ってくれて・・」


「御免なさい。

言えた義理じゃないけど、1人であまり危ない事しないで。

あなたに何かあったら、私・・」


「謝るのは止めてくれ。

病気になったのは、君のせいじゃない。

君だって、もし僕が病気になれば心配してくれるだろう?

大事な人が、元気で笑ってくれてるだけで、僕は幸せなんだ。

だから・・・ん?」


話中だった男達のテーブルに、何時の間にか、1通の封筒が届いている。


「何だこれ?」


男が中を確認すると、そこには1枚の紙が入っていた。

『大切な人を守りたいと切に願う君へ』

そう書かれ始めた手紙には、とあるダンジョンの場所と、そこでの訓練の内容、すぐ近くの村での無料滞在特典などが書かれている。

しかも、期間は3か月で、夫婦2人分だった。

手紙の終わりは、『元気になって良かったな』と書かれている。

まるで、誰とは言わなくても、それが分かるだろうとでも言っているかのようだ。

最後まで読んだ男は、不思議そうに眺める妻にこう語りかける。


「元気になったなら、久しぶりに、旅をしてみないか?

先程話した彼が、僕達2人を招待してくれるそうだ」


「いいわね。

鈍った身体を思い切り動かしてみたい」


女性がそう言うと、男が手にしていた封筒に少し重みが増す。

疑問に思って逆さにすると、金貨が1枚転がり落ちてきた。


「・・旅費のつもりかな?

それにしても、凄い魔力だ」


それから2日後、夫婦はとある村へと旅立つのであった。




 男がいきなり消えてから、未だ納得していないオリビアを促して、再び3階層を散策する。

ここの魔物は、倒せば皆それなりの褒賞が出るので、それを目当てにする冒険者のパーティーとも数組出会うが、係わると面倒なので、話しかけられても適当にお茶を濁して直ぐ立ち去る。

どうやら和也には何らかの基準があるようで、それを満たさない者達とは、彼はろくに話もしないのだとオリビアが理解するのに、さして時間はかからなかった。

アリアがこんな階層まで降りてくるのは初めてなので、興奮した男達の中には、和也が居るのに露骨に誘ってくる者もいたが、そんな彼らには、彼女はただ一言、『もう私はこの人の女だから』と、和也の腕を取って笑うのみであった。

男達に混じって、オリビアまでが、納得のいかない顔をしていたのは言うまでもない。

そして中には、やはり常識のない輩もいる。

言葉だけでは理解せず、己の力を過信して、直ぐに行動や暴力に訴える者。

地球のまともな法治国家に住む者ならば、たとえ力があっても、取るに足らない者を殴って失う利益と、その場の感情とを秤にかけ、正当防衛でもない限り、割に合わないと手を出さない。

例外は、現実の生活で失うものが何もない、自棄になった人間か、精神が病んだ者くらいだろう。

理性と常識を併せ持つ人達が大人しくしているのをいいことに、そういう輩が好き勝手に振る舞うのはどの世界も同じ。

いや、やはりこちらの世界の方が少し酷いか。

現に今も、和也達は数人の男達に囲まれていた。


「アリア、俺達と一緒に行こうぜ?

ここからの階層は危険だからよ。

そんなひょろいガキと子供だけじゃ危ないって。

俺達なら、夜もしっかり満足させてやれるからよ?」


こういう輩の共通点は、先ず、自分のことしか考えられない単純で幼稚な思考形態。

そして、自分こそが最高だと妄想する、病んだ頭である。

アリアが軽蔑の眼差しを向け始めた所で、和也が割って入る。


「言いたいこと言って気は済んだか?

ならさっさと道を開けろ。

目障りだ」


「なんだとてめえ!

ちょっとくらい金持ってるからっていい気になるなよ?

この階層には監視カメラはねえぞ?

ここでお前が消えても、誰にも分らねえよ。

残りの2人は、俺達がきっちり躾てやるからな、うひゃひゃひゃ」


「・・今のはどういう意味だ?」


突然無表情になった和也が、馬鹿笑いしている男達に静かに尋ねる。

魔力に敏感な者なら、周囲の気配が一変したことに気付いたであろう。

世界に満ちる魔素が、精霊が、まるで息を潜めたように、静かに怯えている。

アリアも、難を避けるように、黙ってオリビアを抱き締め、彼から少し離れた。


「そんな事も分からねえお子様なのか?

犯しまくって・・」


ドギャッ。

話していた男の、首から上が潰れて、身体ごと吹っ飛ぶ。


「「なっ!?」」


和也達を囲んでいた男達から、一様に驚きの声が上がる。


「自分の前で、よくもそんな事が言えたものだ。

よりによって、自分の大切な者を犯すだと?

・・教えてやる。

自分はな、その類の愚行が1番嫌いだ。

現実に見るのは勿論、本で読むのも、人から間接的に聞くのもな。

だから、少しでも生き延びたかったら、自分の前で、決してそういう話をしないことだ。

もう、遅いがな」


「「ひっ」」


和也が纏う怒りと憎しみのオーラが、晴れていた天候をも闇に変え、底冷えする冷気と共に、男達に死を宣告する。


「ま、待ってくれ。

俺達はまだ何もしていない。

ただそう思って、口に出しただけだ。

だから、殺される程の罪にはならないだろう?

ここで俺達を殺せば、お前の方が罰せられるぞ?」


和也が纏う、どす黒いオーラに怯え、尻餅をついて後退ろうとする男が苦し紛れに口にする言葉に、和也は答える。


「誰に?

・・ごみにしては多少知恵が回るようだが、そんなへ理屈は、どこぞの星の、形式ばかりこね回す国でしか通じん。

もし自分が弱ければ、お前達は嬉々として実行に移したのだから、結果無価値を採らない自分には、お前の言葉は考慮に値しない。

暇潰しにするような、罪のない空想とは根本的に違うのだからな。

考えてもみろ。

軍を引き連れて、自国の民を皆殺しにしようといきなり攻めて来た敵が、いざ戦おうとした際、どうもこちらの方が強そうなので、何もしないで帰るから許せと言ったなら、何の落ち度もないのに攻められそうになったその国は、只で許すと思うか?

放っておけば、また攻めてくるかもしれないのに?

こちらが油断すれば、掌を返してくる可能性が高いのに?

そんな選択をするのは、被害が己には直接関係がないと考える者だけだ。

自分はそうではない。

だから、・・さらばだ。

大いなる慈悲を持って、輪廻の環に加わる権利だけは与えてやろう。

もっとも、人として生まれ変わるかは分からんがな」


所持金と武器だけを残して、男達が瞬時に燃え尽きる。

その怒りの炎の前に、彼らは、悲鳴すら上げることができなかった。

和也は、残されたそれらを浄化して収納スペースに放り込むと、気を落ち着けるように、ゆっくりと瞼を閉じる。

それに応じて、夜のように暗かった空が、再度光を取り戻していく。

風が穏やかに吹き始め、周囲の気温が正常に戻る。

和也の発する声以外、無音のように感じられた世界に、様々な音が蘇る。

恐る恐る、魔素や精霊達が、和也の周りに近づいて来ては、やがて安心したように散って行く。


「随分怒ってたわね。

あなたのあんな顔、初めて見たわ」


オリビアを抱き締めていた腕を解き、和也の傍に寄って、その手を静かに握るアリア。


「有難う。

私のこと、大切だと言ってくれて。

・・とっても嬉しかった」


「自分が怖くはないか?

自分は、それが正しいと思えば、躊躇いなく人を殺すぞ?」


「そんなの、何時の時代でも、何処の世界でも、よくある事じゃない。

自分を殺そうとする相手に、何で手加減する必要があるの?

大事なものを壊そうとする人に配慮して、それを失ってしまう方が、ずっと愚かだと私は思う。

彼らは生かしておけば、きっとまた、他の誰かに同じことをした。

ここでいなくなってもらう方がいいわ。

オリビア様も、そう思うでしょう?」


「勿論よ。

私が必要なのは、善良な納税者。

悪貨は良貨を駆逐する。

あんなのを生かしといても、害にしかならない。

私のアリアを汚そうとしたあいつらに、この私が、生きる権利を与える訳がないじゃない」


「・・でも貴方、こちらの想像以上に危ない人のようね。

流石の私も、もう貴方と喧嘩しようとは思わないわ。

仲良くしましょうね」


あの状況の和也を見て、さらっとそう言えるオリビアを、アリアは嬉しそうに抱き締める。


「いきなり何?

私に惚れた?」


「ええ、今までの倍くらいには。

それでもまだ、和也さんの半分にもなりませんけど・・」


「一言余計よ」


オリビアも、嬉しそうにアリアに腕を回す。

和也は完全に心を落ち着け、怯えさせた精霊達を、魔力で撫でている。

3人は、そうして暫し、時を過ごすのであった。



 「もうじき暗くなるな」


地下迷宮でも、3階層以降には、きちんと夜がある。

昼に陽の光を、夜に暗闇と静寂を求めるのは、魔術師といえど人である以上、変わりはない。


「この階層は、まだ人が多い。

4階層まで行って、そこで夜を明かそう」


「足手纏いを含めたこの人数で、初日にそこまで行けるのは、きっと、貴方くらいね」


「何だ、珍しく殊勝じゃないか。

落ちている物でも食べたのか?」


和也がからかうと、オリビアは乾いた笑いを漏らす。


「この階層の魔物を、ほとんど睨むだけで追い払えるなんて、ギルドが知ったら大変よ?

そういえば、貴方、ランクが無いのよね?」


あの後、何度も魔物に遭遇したが、知性の無いもの以外は、和也が鋭い視線を向けるだけで逃げて行った。

向かって来たものは、例の赤い球体に吸い込まれている。


「人様に自分を評価付けされようとは思わん」


「お父様に貴方を会わせるのは、止めた方が良さそうね。

私の夫にされそうだもの」


「自分はロリコンではない」


「?

どういう意味?」


「子供には興奮しないという意味だ」


「馬鹿!

私は子供じゃないわよ。

もう15で、あと3年で結婚だってできるんだから」


「したいのか?」


「アリアとならね」


「この国では、女性同士の恋愛は隠れてするものだと認識していたが、君は随分明け透けなのだな」


「別に恥ずかしい事じゃないもの。

それに、上流階級の女性には、結構多いわよ、そういう趣味の人」


アリアに視線を向けると、苦笑でもって、その発言を肯定していた。

無駄話をしながら歩いている間にも、どんどん暗くなってくる。

和也は透視でさっさと4階層への通路を探すと、そこへ降りていく。

広い平原の先には深い森があり、丈の長い草に隠れていた数匹の魔物を球体に吸い込みながら、ここからは和也が先導して歩く。

念のため、オリビアにも防御障壁をかけておき、キャンプに適した場所を探す。

そして、森の入り口に、平らで適度な広さを持つ場所を見つけると、和也は収納スペースからテントとトイレを取り出し、設置する。

テントの中は、ベニス達に用いたのとは異なり、背の低い、大きめのベットにしてある。

女性陣が休むための準備に入る中、和也は外で大きな石や木の枝を転移させ、即席の囲炉裏を作ると、そこで鶏肉やキノコ、ソーセージ等を焼いて、湯を沸かす。

かぶりつけるように、汁を受ける皿とおしぼりを用意し、2人に渡してやる。

熱々を頬張る2人を尻目に、食後のレモネードを作ると、1人で先に飲み始めた。

空に星はないが、濃い緑の匂いと、それを運んでくる適度な風が、障壁を通して入って来る。

食べ終えた2人に浄化をかけると、早々にベットに潜り込む。

大きいとはいえベットは1つしかないが、外でいいと告げる和也を、2人が引き込んだ。

入り口から、和也、アリア、オリビアの順に並んで横になる。

オリビアは、初めてアリアと一緒に寝られることに、とても喜んで、ずっと彼女の腕を抱え込んでいた。

暫くして、興奮が冷め、話疲れたオリビアが眠りに就くと、アリアが空いている方の手で和也の手を握り、小さな声で告げてきた。


「今まで八つ当たりして御免なさい。

あなたが何時までも抱いてくれないから、少し焦れていたの。

・・でも、今日の事で分かった。

あなたはちゃんと私を愛してくれてる。

大事にしてくれてる。

だから、これからは大丈夫。

あなたがそうしてくれる日を、ゆっくり、信じて待てる。

・・おやすみなさい」


アリアのキスを頬に受けながら、和也もまた、眠るまでの一時で考える。

自分を曝け出してもなお、己を信じてくれる人がいる。

それがどれ程、心を満たしてくれるものなのかを。

それがどんなに、気持ちを癒してくれるものなのかを。


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