証
世界は静寂に包まれていた。
各々の一族に別れひっそりと暮らしていた。いつまでもその静寂は続かなかった。いや、続くはずがなかったのだ。
私は何のために生まれたのか。母のため、父のため、あるいは厄を生むためか…。私は答えを探している。
父の名はユウキ、母の名はマコ。 ユウキは漢字にすると雄鬼、魔子。魔族と鬼族の子供など一族の主たちがが許すはずもなかった。父と母はひそかに一族を抜け、二人だけで暮らし、私を産むことを決意した。その時に漢字の名を捨てたらしい。
私は薄暗い山小屋で生を得た。名前を得たマキという、漢字にして魔鬼。忌むべき名を与えられた。漢字などいらなかった。魔族と鬼族の子供だとすぐにわかってしまうような漢字の名。このまま暮らしていくなら必要ない名。
幼少時代、私はあらゆることを教え込まれた。
母からは魔法を、父からは体術を。生き残るためだと教えられた。
「父よ、私は子供らしくないのか?」
「いや、鬼の子は皆お前のように淡々としている。なぜそんなことを聞く」
以前母に子供らしくないと言われた事を父に伝えると、
「魔族の子は皆、好奇心旺盛と聞くからな」
なるほど。鬼の子だからか。私の頭にある2本の角。それが鬼である証。
「私は母には似ていないのか」
ぽつりと呟いた。父に聞こえないように言ったつもりだった。
「マキはマコにも似ているよ、例えば、容姿」
容姿と言われて思い付くのは身体中の痣。
「この痣か……」
「それはただの痣ではないわ」
話を聞いていたであろう母が会話に混じってきた。
「ユウキ、マキを独り占めするなんて酷いわね。私だけ仲間外れなの?」
「いや、独り占めしたつもりではないのだが。すまない」
このなんとも言いがたい父と母の雰囲気。心地が良い雰囲気。
「マキ、その痣は……身体中に広がるその紅い痣は、痣ではないのよ。」
「痣じゃない?」
母の言葉の意味がわからない。
「それは魔族の子だからあるもの。魔法を使うための陣。刻印と呼ばれるものよ。普通の魔族の子供は親の刻印を受け継ぐのだけれど、私の刻印とは違うわね」
魔族と鬼の子だからか。母の刻印を受け継がなかった。なぜか悲しかった。
「その刻印は、どの魔族も持っていないわ。刻印の種類はそんなに多くはないわ。刻印を見ればどの家の子かわかってしまうのものなのよ。」
「そう」
つまり、この刻印を持つのは私だけ。
「色も普通は黒なのだけれど」
普通ではないことくらいわかっている。
「鬼の角も普通は白か黒だが、マコは赤いな」
そう。私は普通ではない。
白くも黒くもない赤い角。誰も持たない模様の赤い刻印。鬼族と魔族の混血である私の証。
生まれてはならなかった子の証。




