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αー4


 一時間目の始まりを告げるチャイムが鳴ったとき、あたしは教室にはいなかった。今保健室にいる。体調不良ではないが気分は悪かった。もうやってられん。本気で辞めたい。


 あたしは生まれが生まれだからかもしれないが、人一倍プライドが高い。バカにされるのはピーマンより大嫌いなのだ。昨日の放課後のことが気になったから一応来てみたが、来なきゃよかったね。


 とりあえず学校に着いたらまず教室に行ったのだが、そしたらまたあたしの机がドロドロのベトベトになっていた。あたしはキレた。 自分の机を思い切り蹴飛ばし、クラス中の注目を集めると、感情を押し殺した低い声で言った。


「これやったの誰?」


 シーンと静まり返った教室はみんなうつむいてあたしを見ない。一人ひとり問い詰めてやろうかと思ったが、その必要はなかった。


 窓側からくっく、っと声を殺したような笑い声が聞こえてきた。その声の主は気持ち悪い笑みを浮かべながらあたしに近づいてこう言った。


「ごめんねー。俺たちみんな知らないんだー」


 あたしの目の前に出てきたのは三人。典型的な遊び人の様相だった。金髪ロンゲ。制服をだらしなく着て、しゃべり方までだらしない。名前なんて全く知らないけどあたしは直感で思った。


「あんたら、なんか知ってるでしょ?」

「言ってんだろ?みんな知らないって。朝来たらこうなってたの」


 一番でかい奴が答えた。やったかどうか知らないが、何か知っているのは明らかだった。


「うそつけ。答えろ」

「しつこい」


 気に触ったのか、声色が変わった。怒りの混じった低く脅すような声。だけどあたしはそんなんじゃびびらない。もう一言言ってやろうとしたら誰かが間に入ってきた。


「もういいだろ。そんなにケンカ腰になるな」

「山内」


 誰かと思えば、そいつはいつぞやあたしに告白してきた調子乗りボンボンだった。山内か。一番初めに言った奴が正解か。山内は金髪三人組を言いくるめると、あたしのほうに振り返った。


「ごめんね。あいつら本当に短気で」


 そんなことはどうでもいい。短気のほうが扱いやすいし。


「あんたは知らないの?」


 あたしは転がっている自分の机を指差して聞いた。山内は申し訳なさそうな顔をして、


「ごめん。知らないんだ。あいつらが言ってたことは本当だと思うよ」


 と言った。あたしは全然納得してなかったが、適当に返事をした。みんな知らない?うそに決まっている。全員がグルになっているに違いない。


 あたしは呼び止める山内の声を無視して、ドアに向かった。教室を出て階段の前で担任に会ったがそれも無視して保健室に向かい、今に至るというわけ。


 さっきは頭に来たけどもういいよ。許してあげよう。教師はもちろん、おじい様にも言わないであげる。良かったね、あたしが寛大で。心が広くて。温厚で。


 何となくいろいろ考えていたけど、気が付いたら寝ていた。起きたら外は暗くなり始めていた。どうやらあたしは七時間以上寝ていたらしい。楽しみにしていた昼食も食べ損ねた。おなか減った。仕方ない、帰るか。


 保健室には誰もいなかったからそのまま出て、教室に向かった。


 机は朝のままだった。必要なものをかばんに詰め込み、口を閉じようとしたとき、一枚のプリントがひらひらと床に落ちた。それは昨日の放課後、屋上で変なやつにもらったものだった。


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