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βー11


 明けて翌日。俺は懲りもせず部室に来ている。これからやることは、昨日行ったそれぞれの事情聴取のまとめである。ちょうど今終わったところなのだが、現在の状況は、


「・・・」

「・・・」

「・・・」


 早い話が三人とも黙り込んでいる状態である。二人は何を考えているのか知らないが、きっと考えすぎなんだよ。難しく考えてもはっきり言って現状は変わらない。


「とりあえず全面的に横山の言っていることを信じるとする。そうなるとおかしいのは何だ?」


 黙っているよりはましだろう。せっかく三人で集まっているのだから、意見交換したほうがよっぽど有意義だ。


「そりゃあ、例の女の子と目撃者でしょう。三人組のほうは適当に嘘をつく理由があるけど、女の子と目撃者にはないからね」


 まあ普通の意見だな。


「確かに目撃者の人たちが嘘をつく理由はないかもしれません。でも阪中さんは解りませんよ?」


 それは昨日俺が言った意見だな。日向は驚いた表情になり、岩崎に質問した。


「阪中?阪中みゆきのこと?」

「そうですけど。言ってませんでしたっけ?」

「聞いてないよ!例の女の子って阪中さんだったの?」

「そういえば日向さんは阪中さんと同じクラスでしたね」


 そうだったのか。それでこの驚き様だったわけだ。


「それでさっきの岩崎さんが言ってたことはどういうことなの?」


 日向が話を元に戻した。


「阪中さんが横山さんを恨んでいる場合です。横山さんもその可能性を否定していません」

「それあたしも考えたけど、冤罪で警察に突き出すって、相当恨んでるでしょ?無意識のうちにそんなに恨まれるようなことするかな?」


 横山には誰かに恨まれているという自覚はない。恨みを買うような行為を取っていないのにもかかわらず、阪中から恨みを買ったということになる。つまり横山の無意識の行為によって、阪中が恨んでいるということになる。さらに横山は阪中のことを知らないと言っている。可能性は限りなくゼロに近い。


「かと言って目撃者が黒幕というのも考えられないと思うんですけど」

「確かにそうだね」


 事件の当事者は通報後すぐに事情調書を受けるが阪中と目撃者は時間差がある。だから目撃者には阪中を脅迫する時間がある。しかし目撃者は阪中を探さなければならないし、他にも目撃者がいたかも解らない。


「そう考えると一番簡単な見解は事件に無関係な人物が黒幕だということだね」


 そういうことになるな。ところで、


「阪中ってどういうやつなんだ?」

「んー、あまり知らないけどいい子だよ。大人しくて気が弱いところがあるけど素直で真面目だと思う」

「人を恨んで罠に嵌めたり、誰かを脅迫したりするやつか?」

「それはないと思うよ」


 まあ、俺も直感でそう感じたが。


「そうだとすると阪中は脅迫されている可能性が一番高いな。問題は誰が脅迫しているかだな」

「それはやはり被害者の仲間とか?ひょっとしたら目撃者も仲間だったりするかもしれませんね」


 岩崎が言っていることは、被害者と目撃者がグルということだ。もしかしたら横山を嵌めるために、阪中を襲ったのかもしれないな。


「もしくは真犯人は一人でそれ以外の人間はみんな脅迫されているだけかも」


 岩崎の意見に付け足すように日向が言う。なかなか頭がいいな。この場合も計画を練ってからの行動だと思える。事後にシナリオをでっち上げるのはほぼ不可能に近い。何にしても横山をターゲットにした計画だろうな。横山の下校を狙って網を張れば、できなくはない。だが、とても面倒な計画だ。よほどのマイナスな感情を横山に対して持っていた、ということか。

そこまで考えてから、俺はふと時計を見た。時刻はすでに五時半を回っていた。


「もうこんな時間か」


 俺の言葉につられて二人が時計を見る。


「あっ!」


 日向が叫んだ。


「ど、どうかしましたか?」

「あたし用事あったんだ!先帰るね。また明日」


 そう言うと、日向はあわてた様子で荷物をまとめ、部室から出て行った。



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