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αー6


 あたしは今日も一日保健室で過ごし、放課後、例の部室の前にいた。ホームルームの終わりを告げるチャイムが鳴ってからもう二十分も経過していた。鍵を持っていないあたしは、待ちぼうけをくらっていた。


 何をしているんだろうか、あの二人は。さすがに掃除も終わっているだろう。あー、掃除といえばあたしの机やロッカーはどうなってんだろうか。もうどうなってもいいけど昨日の朝の時点でベトベトドロドロだったからなぁ。もっとグロテスクになっているかもしれない。ちょっと見てみたい気も・・・やっぱりしない。どうあれあたしはバカにされるのが大嫌いだ。タマネギより嫌いだ。


 ところで今あたしはマイナーな部活動ばかりを集めた旧館というところに来ている。十年くらい前に生徒の大幅増加により新たに建てられた校舎があるのだが、その際に使われなくなった旧館をこうしてリユースしようということになったらしい。よって旧館にはほとんど人がいない。誰かがやって来たら、その足音でたちどころに解ってしまう。


 何でいきなりこんな話をしたかというと、今足音がこの旧館に響き渡っているからだ。しかし何かがおかしい。音に一定のリズムがない。例えるならば、リズム感のないドラマーによって奏でられているエイトビート自己アレンジバージョンって感じ。


 その妙な足音が近づくにつれ、あたしは力が入り、身構えていたのだが、現れたのはあたしの待ち人である二人に相違なかった。


 岩崎さんは普通に登場したのだが、成瀬は後ろ向きだった。どういうことかというと、成瀬は岩崎さんに首根っこをむんずと掴まれ、そのまま引きずられて来たようだ。


「お待たせしました。少し成瀬さんの捕獲に手間取りまして」


 捕獲って・・・。


「おい!いい加減に手を離せ」


 成瀬は相変わらず後ろ向きで、そのままの体勢で叫んでいた。岩崎さんはしぶしぶという感じで手を離した。成瀬はこちらに向き直りながら制服の襟を直した。そしてようやくあたしの存在を確認。さて、どうしたらいいのか。


「こちらが我々TCCの新たなる仲間、日向さんです!」


 あたしが悩んでいたら、岩崎さんが紹介してくれた。しかしなんだかくすぐったい。一度会っているわけだし。


「日向?」


 成瀬は首をかしげる。


「そうです!かの有名な日向コンツェルンの一人娘さんです!」


 岩崎さんはあたしの代わりに答えた。そしてあたしの代わりに自慢げに胸をそらした。


「あんたが威張ってどうする」


 あたしも同感だ。


「で、日向のお嬢さんがこんな普通の高校で何をしている」

「ああ、別にあたしも来たくなかったんだけど、社会勉強っていうことで無理矢理編入させられたの」

「なるほど。で、ここにいる理由は?」


 あんたが呼んだんだろ、だから。


 岩崎さんもそう思ったようで、成瀬に抗議していた。


「成瀬さんが呼んだんじゃないですか?」


 何やら怒っていらっしゃる。この人の機嫌は本当にコロコロ変わる。


「俺は勧誘したわけじゃないんだが」


「どういうことですか?」


 あたしには意味が解っていたが、ここは黙っていた。成瀬は、まあいいや、と言って岩崎さんによって開錠されたドアを開け、中に入っていった。あたしたちも後に続いた。



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