R-18ではない兄妹
「夕実。少し本屋に行って来る。留守の間暇だからってまた壁に穴開けるなよ?」
「えぇー、兄貴が居ないと誰が僕の相手になるのさー」
そう言って、妹の三条 夕実はソファーの上で力なく腕を振り回してうなだれている。
今日は学校も休み、夕実は少し大きめのピンク色の襟付きTシャツとスポーティーな柄の短パンを履いてくつろいでいる。腰まで伸びる白くて長い髪は首元らへんでゴムで止めまとめてある。
「帰ってきたら稽古つけてやるから……それまで大人しくしてろ」
軽く嗜めてなんとか夕実を振りほどこうとする。
「またなんで本屋なんて行くのさ?まだ積んでる本とかたくさんあるじゃない?」
俺が外出するのが気に食わないのかなんとかして、俺を家にとどめようとしてくる。
「馬鹿なこと言うな、もうこの前買ったエロ本も読み飽きたんだよ。また新しいエロ本でも買ってきて人間の生態を勉強しなければならないんだよ、俺は」
軽く決めて俺は夕実に背を向けて出立の準備をしようとする。
「はぁ……ほんと好きだね。そんな本ばっかり読んでないで体動かしたほうがいいよ?」
俺がエロ本を買いに行くといったら頑として絶対に決行することを知っている夕実は、嘆息をして諦めた様子だった。
そう、俺にはエロ本がないと生きていけない。
なぜなら
「馬鹿言え、どの書物を読んでも変わらないものがある。それは、『人類皆エロス』。と言うことだ。この前読んだエロ本にもそう書かれてたしな」
暫く、夕実の反応は無かった。
俺も何故そんな反応されているのかも想像がつく。なぜなら、いつも夕実にこの言葉だけは言い聞かせているからだ。
果たして、これを聞いて夕実がなんと思っているのか。真意はいかなものかわからないが、これを言えば大抵諦めてくれる。
「ま、いいよ。その代わり帰ってきたら僕とちゃんとヤることヤやってよね?」
「分かってるよ。ちゃんと満足いく待てヤってやるから大人しくしてろ」
こうして俺、三条 手虎は高校2年生という立場でありながら行きつけの本屋へと足を運ぶのであった。
☆
手虎「なぁ、俺って老けて見えるか?」
夕実「いや、兄貴はどちらかと言うとエロイ顔かな」
手虎「それは喜んでいいのか?」
夕実「喜びなよ。人類皆エロス、なんでしょ?人間らしい顔ってことじゃない?」
手虎「それもそうか……………いや、しかしそれはエロくな顔というのが一体どういったものなのか…」
夕実「理屈っぽいのは僕分かんない」
手虎「(先に理屈をこねたのはお前だろう)」
☆
「ただいま~」
「おかえり…」
行きつけの本屋の手提げ袋を持って俺は帰宅した。
夕実の声は少ししょげたような声で元気がなくなっていた。大抵こういう場合に起こっている事象は把握している。
「またやったのか?」
リビングへと足を運んで実際にしょげている夕実を見つける。
「ちょ、ちょっと兄貴がやってたことを真似てみたら…その、なんか知らないけど壁に穴が空いていたって言うかなんていうか、つまり、前にも兄貴がやっている行為をして穴が空いていたってことは本当は僕がやったように僕が錯覚しているだけで実際のところは…」
もぞもぞとソファーにうずくまりながら俺の顔を見ないで言い訳を述べる夕実。ウサギのような狸のようなぬいぐるみを抱きかかえながらもじもじする様は暴れていたにしては女々しくて可愛くも見えた。
「ったく、夕実はまだ周りの物体に対して衝撃を与えないで飛ぶ技術がないのにやるからだ……」
リビングは少し開けた場所で、東側の壁はモノも置いてなくて倒立ぐらいはできるようになっている。
そこに向けて夕実は、思いっきり走って壁を蹴ってバック中をしようとしたわけだ。そして、案の定失敗して壁には穴が空いている。
現場検証をしに壁まで行くと、完璧に貫いていないもののヒビと少しだけ陥没している。
「あぁあ、誰がこれを直すと思ってんだよ…」
「僕です」
「よくおわかりで、当然だな。自分で壊したものなんだから自分で直せよ?」
笑みを浮かべて俺はもじもじしている夕実のもとへと向かう。
「ほぃよ」
そういって、ソファーにうずくまる夕実に一冊の本を丸めて頭にぶつけて渡す。
ポスン。
軽く当たったはずだった。
「いったぁぁぁーーーい!」
勢いよくちょび髭危機一髪でハズレを引いたように起き上がり、ウサギ狸を放り投げてきた。
軽く避けてうさぎ狸はうつ伏せになって落ちた。
「どうした?」
軽く当てたはずなだというのに、痛がる夕実を不思議に思い夕実の頭を触ってみる。
「……………………壁に穴空いてびっくりして頭から落ちた…」
涙目になって俺の顔をじっとりと見つめてくる。
「それ、修理の仕方が書いてある本だから。しっかり読んで直せよ」
ソファーに前に置いてあるガラスのテーブルに買ってきた本を置いて指を指して渡す。
タイトルは『壁紙張替えの匠』と書かれた雑誌。
「兄貴!」
少し元気になったのかこちらを向く余裕ができて俺の方へと笑みを向ける。
「ま、出かける前に約束したし、ここまで破壊したってことは随分溜まってたんだろ?」
壁に穴を空けるなんてことは近頃はあまり無かったはず、それだけ溜め込んでいたとなると明日には家が壊されてそうだ。
「うへへへ、当然でしょ?昨日はずっと原子炉に関する本を読んでて兄貴全く相手にしてくれなかったじゃない」
さっきまでの夕実とは全く雰囲気が変わりいつの間にか欲求不満の夕実が俺の前に仁王立ちしていた。顔はにやけて嬉しさからか武者震いすら見て取れる。
「はっ、いくらでも相手になってやろうじゃねぇか。いつになったら俺が満足できるような体になってくれるのか楽しみにしてるんだぜ?これでも」
俺も立ち上がり二人の間に火花が散り始めていた。
どちらも衝動を溜め込んでいたため、今回はかなりの試合になりそうだ。
「どこでする?」
無い胸を張って夕実は場所の選択権を俺へと渡してくる。
「どちらでも」
「じゃぁ、ベランダ!」
即答された。
もう場所の選択は心で決めていたのだろう。そもそも、場所の選択権を与えてもらえることも加味されていたのかもしれない。中々面白くなりそうだ、これは。
「ベランダか…あまり声を出すなよ?ご近所に迷惑かけることなるしな」
「冗談…声を荒げるのは兄貴の方だよ!今日は!」
そうはき捨ててベランダへと向かう夕実。
そこで俺は一言。
「弱点はもう晒している夕実の方が不利なんじゃないのか?」
「…………こんなたんこぶ…別に弱点じゃないし…」
声が震えている。俺に背を向けて微弱ながらひるんだ様子を見せる夕実。
だが、そのまま俺達はベランダへと到着していた。
そして、二人ともけん制しあえる立ち位置に立って、拳を握って構える。
「「いざ!」」
その掛け声とともに俺達は『喧嘩』をおっぱじめた……。
☆
夕実「兄貴の部屋ってもう図書館だよね」
手虎「馬鹿言うんじゃねぇ、エロ本を置いてる図書館なんてねぇよ」
夕実「………………………それもそうね」
☆
「はぁぁぁあ!せいっ!はっ!ほいほい!」
正面から攻めてきた夕実は威勢よく二発拳を打ち込んできた。その後に、片足を軸としてもう片方で顔まで上がってきそうなほど足を上げて蹴りを往復させた。
足の上がり方から武術に対しての錬度が見て取れる。
「はいとった」
全てを避けてから、最後の往復の蹴りを掴み。上がった状態で夕実の足を固定する。
片足が上がっていると、軸が取ることもできずもう片足の方を動かすとすぐさま倒れる。
それを恐れて、次は俺に向かって片足で力強く地面を蹴って飛び掛ってきた。
「まだまだぁぁ!」
活気に溢れた声が近所に広がって、すでに近所迷惑のことなんて考えなくなっていた。
ジャンプすると俺の肩の位置まで一気に飛び上がり、左足で俺の首に巻きついてきた。
構図的には肩車とほぼ同じ形になり、一転し首を取られて危険な状況に俺が陥った。
「ほい」
そこから、俺は前へと駆け出して首に乗っかった夕実を後ろ側へと振り落とそうとする。
がしかし、夕実はがっちりと俺の頭を掴んで離れようとしない。腕を俺の額に巻きつけて完璧にくっついている。
「離れないもんねぇ!絶対に離れないんですもんねぇ!」
強がりを言ってその場から離れようとしない。
「別に離れないのはいいんだけどさ、あんまり無い胸を押し付けるのはやめてくれないか?」
「へ!?え!?」
「頭に当たってるんだけど」
「…お、押し当ててるんですー!これで兄貴を興奮させて冷静さを取り乱せる作戦なんですー!」
そういうと、力は弱まるばかりかさらに強く締め付けてくる。首もさらに締め付けられて意識が飛びそうなほど締め付けてくる。
「お、おい、別に俺は夕実の胸なんかで興奮するなんてことは…」
夕実の顔は真っ赤に染まって手虎の首をさらに強く締め続ける。ここで、もう手虎の意識は半分飛んでいた。
「あ、兄貴の好きなエロスだからべべ別にいいーんじゃないのー!?」
声が裏返って恥ずかしさが満潮に達していることが見える。だがもう、手虎の意識はなくなっていて倒れる寸前。
「兄貴?まさかもうギブア…」
そこまで言った瞬間、手虎は意識を失って後ろへと体が倒れていった。一緒に夕実の体もそのまま後ろへと倒れて行きたんこぶが出来た場所からまた床に頭をぶつけた。
ゴスン!
今回も中々のクリーンヒット。
倒れた手虎は夕実の股に顔を埋めて気を失い、双方共倒れで終わった。
その後、母が帰ってきてその場を見た母は、何故か興奮していたとか。
☆
母「手虎!?夕実!?……………兄妹で一体何をしているのかしらこの子達…夕実の秘部に顔を埋めて手虎ったら……さすが私の子ね…兄妹でしちゃうなんて二人とも母さんの血を継いでるだけはあるわね」
☆
☆おまけ☆
私は三条さんの家の隣にして手虎君と同じ学年の女子生徒。
いつも三条さんの家は窓を開けて家族で話すから全て話が筒抜けなのだ。
そこから、三条さんの兄妹たちの秘密を知ってしまった。
『ま、出かける前に約束したし、ここまで破壊したってことは随分溜まってたんだろ?』
『うへへへ、当然でしょ?昨日はずっと原子炉に関する本を読んでて兄貴全く相手にしてくれなかったじゃない』
「た、大変……手虎君…夕実ちゃんの性欲処理なんてしてるの!?」
『はっ、いくらでも相手になってやろうじゃねぇか。いつになったら俺が満足できるような体になってくれるのか楽しみにしてるんだぜ?これでも』
「確かに夕実ちゃんは胸が無いものねぇ…で、でも満足できるような体だなんて……手虎君は大きいほうがすきなのね」
私は少し自分の胸を見て、頷いて納得する。私の胸はOK…だと思う。
『どこでする?』
『どちらでも』
『じゃぁ、ベランダ!』
「べべべべべ、ベランダーー!?!?!私の家には元々丸聞こえだけどべ、ベランダなんて近所一体に」
あたふたして、何か防護策がないか考えているうちに二人はベランダまでやってくる。
色々考えていて少し聞き逃していたがふと我に返ってすでにことが始まっていることに気づいた。
『…お、押し当ててるんですー!これで兄貴を興奮させて冷静さを取り乱せる作戦なんですー!』
『お、おい、別に俺は夕実の胸なんかで興奮するなんてことは…』
「て、て、手虎君ったら強がりいっちゃって!声に余裕が無いじゃない…」
『あ、兄貴の好きなエロスだからべべ別にいいーんじゃないのー!?』
「えぇぇぇええ!?兄貴の好きなエロスって一体なに!?どんなプレイなの!?」
そこから私はこれ以上聞いたら二人に悪いと思って、ムラムラした気分を解消するためにもヘッドホンをつけてエロゲーをすることにした。
ヘッドホンを付けた所為で母が入場したことにも気づくことができなかった。
その所為で次の日から私は母からエロゲーマーと呼ばれることになったのは全てあの三条兄妹の所為なのだ。
一切エロくありません。
作者も驚くほど純白です。
驚きの白さとはこのことか、これならTシャツの色をピンクではなく白にしておけば…
けど、一つ失態を犯したことがあるとするなら、今回は納豆巻きが出ていない点です。
みんなのオアシス納豆巻きを出せなかったことを非常に悔やんでます。ええ、本当に。