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0015 うるしちゃんを元の姿に。

「あのさ、楽しそうな所を悪いんだけどさ、俺からしてみりゃ、全部ショートの独り言なんだよな!」

あ……

ピッチャーさん……

いるの忘れてた……

「すみません! 彼らの会話、聞こえないんですよね」

「まあ、頭のいい俺は、お前の独り言でだいたい把握出来てるけどな! これでも子供の頃は神童って呼ばれてたんだぞ!」

神童……

「おいショート! なんかこいつ(コウモリ)が、さっきの禁煙パイプをおじさんに渡してみてって言ってるぞ!」

グランデが使ってた奴か……


「ピッチャーさん。ちょっとこれをくわえてもらってみていいですか?」

「うん? こいつ(グランデ)と間接キッスするのは嫌だけど、まあ、いいか!」

間接キッス……

「うるしちゃん。試しになんか喋ってみて!」

「おじさん! あたしの声、聞こえる? おじさんにはホントに助けてもらったよ! 感謝してる! ありがとう!」

「感謝してるんだったら、また巨大化して、今度こそおっぱい触らせてくれよ!」

どうやら聞こえてるようだ……


「で? なんだっけ?」

コウモリが必死にピッチャーさんに喋っている。

「なるほど! じゃあお前が死ね! それで解決だな!」

え?

「ピッチャーさん、コウモリの声が聞こえるんですか?」

「え? ショートは聞こえないのか? まあ、俺はニュータイプだからな!」

ニュータイプ……

「違うよ! おじさんがくわえてるパイプは、完成品なの! だから誰でも、誰とでも話せるんだって! きゃはは!」

完成品か……

僕がこれをくわえてたらイッキの通訳がいらなかったのに。


「僕はこのコウモリを殺すようなことをしたくないんです。そりゃ、悪いこともしましたけど……。でも、復讐は復讐を呼ぶっていう言葉もあるし、殺生も良くないですよ!」

「わかった、わかった。そう熱くなるなって! お! いいこと思いついたぞ! 俺に乗り移ればいいんだよ! 俺はよ、もしこいつに乗り移られたって自分を失わない自信がある。っていうかさ、もうとっくの昔に自分を失ってるから、どうでもいいんだけどな!」

「ピッチャーさん……」

「でさ! ショート、酒持ってない?」

酒が飲めればそれでいいのか!


「ん……うん?」

 グランデが目を覚ました。

 僕も、うるしちゃんも、イッキも、ピッチャーさんも身構えた。

「おお! ショートじゃないか! 久しぶりだな! 元気にしてた? またそのうちショート&グランデのスタバコンビで遊ぼうぜ!」

 グランデは全裸のまま立ち上がり僕に寄って来た。

これはグランデだ……

間違いなくグランデだ!

「ショート……俺は何で全裸なんだ? それに……。ん? あ、ボロじゃないか! お前、精密機械なのに、なんで砂浜なんかにいるんだよ! それにましろもいるじゃないか! ダメだろ! 外は危ないんだから家の池でおとなしくしてなきゃ! 怪我してるぞ! おい! ましろ! 大丈夫か?」

ましろちゃんは泣いた。

良かったね、グランデが元に戻って。

ピコ……

「勝人さんが、元に戻りました! 嬉しいです!」

ボロも喜んでいる。


「とりあえず、お前。これ使え! 今日仕入れたばかりだから臭くないぞ!」

ピッチャーさんは、グランデに新聞紙を渡した。

グランデは慌ててそれを腰に巻いた。

「あ、ありがとうございます! なんとお礼を言ったらいいか……そうだ! 俺の家に来ませんか? きちんとお礼をしたいので……」


 グランデの車に僕とピッチャーさんと怪我をしてるましろちゃんが乗った。

オープンカーで良かった。

臭いが充満しないから……

 イッキは餌を食べにいったん公園に戻ると言って飛んで行った。

コウモリとうるしちゃんは、明るみかけた空を飛んでついてきた。


 グランデの家に着くと、グランデはピッチャーさんにお風呂を勧めた。

「風呂上りの一杯は最高ですよ!」

とグランデが言うと、ピッチャーさんは喜んで風呂に向かって行った。


 ピッチャーさんがお風呂に入っている間、ましろちゃんの手当てをしながら、今までのことをグランデに全て話した。

 グランデは複雑な表情をしていた。

「あまりにも唐突でなんて言ったらいいのかわからないけど、本当にゴメン」

「グランデは何も悪くないよ! もし誰が悪いのかを決めなきゃいけないとするなら、僕らの祖先と、コウモリが悪い。でも、もう解決したから安心して! 誰もグランデが悪いなんて思ってないから……」

「ショートお前……なんか変わったな。前のショートは優柔不断っていうか、キョドってるっていうか……」


 僕が、変わった?

 変わったかもしれない。

 うるしちゃんのお陰かな……


「いや~いい湯だった! で? ビールはどこ?」

白いガウンを着て、髭もさっぱり剃ったピッチャーさんが出てきた。

臭わない……まるで別人のようだ……

 グランデがビールを渡すと一気に飲み干し、おかわり!と言った。

 ピッチャーさんは、立て続けに3本もビールを飲んだ。

「うー。なんか眠くなってきた。」

 ちょっと待って!

 うるしちゃんを人間に戻してあげなきゃ!

「いいよ、トリトン。今日はおじさんのこと、ゆっくり寝かせてあげよう」


 さすがにグランデの家で寝かせるのは気が引ける。

「グランデ。僕とピッチャーさんを僕の家に送ってくれない?」

「いいよ。それと、ガウンは着ていっていいから。」

 半分寝ぼけてるピッチャーさんを抱えながらグランデの車に乗った。

 空がずいぶん明るくなってきた。


 すっかり寝てしまったピッチャーさんを2階の部屋に運ぶのをグランデに手伝ってもらい「また今度絶対会おう」と約束すると、グランデは帰って行った。


「ねぇトリトン、やっと落ち着いたね」

うるしちゃんも疲れたよね……

「人間になったら、もっと落ち着くよ……」

そうだ!

あのパイプでコウモリと話してみよう!

僕はパイプを水できれいに洗ってくわえた。


「君は、悪いことをした。これは、わかってるよね?」

コウモリは頷いた。

「でもね。僕は君を懲らしめようなんて思わないよ。君も辛かったと思うんだ。先祖代々からの期待を一身に受けてさ……」

「俺は自分の能力を恨みました。何も期待されないで、ただのコウモリとして生まれてきた方がどれだけ幸せだったか……。でも、一族の……コウモリたち全ての期待を裏切れませんでした。空を、大地を取り戻したいという気持ちもありましたし……。」

 僕は幸せなんだな。

 親から何も期待されてないし……

「それで、うるしちゃんを人間に戻す話なんだけど……。この人(ピッチャーさん)は、自分に乗り移ればいいって言ってくれたけど、やっぱり僕に乗り移って欲しいんだ。」

「トリトン、なに言ってるの! ダメだよそんなの! 悪魔になっちゃうかもしれないんだよ!」

僕は首を横に振った。


「もう君は、悪いことはしないよね? 僕は君を信じたいんだ! もし良かったら僕とうるしちゃんと一緒に暮らさないか?」

「一緒に暮らせるなんて嬉しいお誘いですが、俺とあなたとうるしさんで暮らしたら三角関係になっちゃうかもしれませんよ」

え?

三角関係?

「冗談です」

コウモリにまでからかわれた……

うるしちゃんは笑っている。


「金輪際、悪いことはしません。うるしさんを元の姿に戻したら、ショートさんの体からすぐ出て行きます。約束します」

「わかった。じゃあ今すぐやってくれるね」

「はい」

 そしてパタパタと飛んだ。

「じゃあ、行きますよ! イヒヒヒ!」

「ちょ! ちょっと待った!」

「冗談ですよ」

くそー……


 コウモリは煙のようになって、僕の口から入ってきた。

 そして意識が遠くなった……



※作者からの余計なお世話コーナー。


当初、勢いで書いたピッチャーさんが、ここまで活躍するとは、作者も予想してませんでしたw


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