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0013 対決。

「ねえ、グランデ……グランデだよね? 僕はどうしたらいい?」

震えないように喋るのが精一杯だ。

 足はすくんで、少しずつ後ずさってしまう。

「どうしたらいい? 俺が『死ね』って言ったら死ぬのか? まあ、そんなことが希望じゃないけどな」

そんなこと? 僕が死ぬことが、そんなこと?

「じゃあ、何が望みなんだよ! どうしたらましろちゃんを解放してくれるんだよ!」

「ははぁ……。ショートお前、この女に惚れてるのか?」

「そんなの!……そんなのどうだっていいじゃん! トリトンが惚れてようが、惚れてなかろうが、女の子に刃物なんか向けたらダメだよ!」

うるしちゃんの言う通りだ。

「そうだよ! 刃物はダメだ!」


「そうだよ? あ、そのカラスか……どれどれ……」

グランデは首からぶら下げていた、禁煙パイプみたいなものをくわえた。

「ほら! そこのカラス! 喋ってみろ!」

あれは、このキセルみたいなものか……

「誰のせいでカラスになったと思ってるの? カラスになりたくてなったんじゃないんだから!」

「ほほう。気の強そうなカラスだ。なんだっけ? お前はブラッディ・ブラックを壊滅させるんだったっけ?」

え?

なんでそんなこと知ってるの?


「なめんなよ! お前らごときに、この俺が倒せるとでも思ってるのか? 出来の悪い冗談だな! ふはははは!」

「やっぱりブラブラ団は、君と関係があるんだね。いったい何をするつもりなんだ!」

その名前(ブラブラ団)で呼ぶなーーーー! 汚らわしい! この女がどうなってもいいんだな!」

グランデはナイフを振り上げた。

「ダメだ! ダメだ!」


「ん……うん……」

あ、ましろちゃんが目を覚ました!

「キャー! どうなってるの? あ! トリトン君? 助けて!」

「やっと目覚めたか……ジタバタ動くなよ。手が滑ってグサッとやっちまうかもしれないからな!」

そんなこと……

そんなことさせるか!

「ましろちゃん! 大丈夫! 大丈夫じゃなかもしれないけど……でも……僕がなんとかするから!」

「ショート、大きく出たな! お前がなんとかする? なんとかできると思うか?」

自信はない……

「僕に用があってこんなことをしてるんだろ! だったら関係ない子を巻き込むなよ! ましろちゃんが助かるなら何でも言うこと聞くから!」

「何でもと言ったな……じゃあお望み通り、俺の要求を言ってやる! 感謝して聞けよ! 俺の望みはふたつだ!ひとつ……ブラッディ・ブラックのことはこれ以上詮索するな! 色々と嗅ぎ回ってるだろう? そのカラスを使って。ふたつ目! お前が持っているスーツケースを俺に返せ! あれはもともと俺の物だ!」

「え~、なに? あんたって女装の趣味があったの? あのかわいい洋服をあんたが着るっていうの? きも~~い! きゃはは!」

「うるせー! カラス! つべこべ言わずに俺に渡せばいいんだ!」

「あれ、もう捨てちゃったよ! ゴミだと思ったから! きゃははは!」

「嘘つくな! まだショートの部屋にあるのは、知ってるんだからな! なあ! お前見ただろう? ましろ!」

へ?

どういうこと?

僕は意味がわからず固まった。

うるしちゃんも、ましろちゃんも、固まっている。


「なあ! ましろ! 見ただろ? 返事しろ!」

 ナイフをましろちゃんに向けた。

 ましろちゃんは、震えながら頷いている。

「どういうこと? 全然わからない! 全っ然わからない!」

僕は自分でもビックリするぐらい大きな声を出した。


「勝人さん……もうやめて! 私、これ以上誰も傷つけたくない! もうトリトン君の気持ちをもてあそぶようなことはやめて!」

「ましろ、てめー! 誰のお陰で人間になれたと思ってんだ! 俺んちの池に泳いでるだけの白鳥を人間にしてやったのは誰だ!」

は、白鳥? ましろちゃんが?

「こんなことなら私、人間になんかならなきゃ良かった! 断れば良かった! トリトン君、すごくいい人なんだよ! それに私……」

そう言うと、ましろちゃんは反り返って、大きく息をはいた。


 ええ~~!?

 ましろちゃんはどんどん小さくなり、白鳥になった!

「トリトン君、ゴメン! 私、あなたのこと騙してた! でも、信じて! あれは……あれは本当の気持ちだったから!」

「ましろ! 勝手に鳥に戻るな! くそー! 計画がメチャクチャじゃないか!」

計画……

今はそんなことどうでもいい!


「ましろちゃん! こっちへ来るんだ!」

「そうはさせるか!」

グランデはナイフを振り下ろした。

こっちへ飛んで来ようとしたましろちゃんの翼をナイフがかすめた。

ましろちゃんの羽が一気に赤く染まった。

僕はましろちゃんに駆け寄った。

「トリトン君、ごめんなさい。騙すの本当に心苦しかった……でも、勝人さんの事も何とかしてあげたかった……」

「ましろちゃん、いいから……それより傷が心配だよ……」


「グランデ! てめぇ! 許さない! 絶対に許さないぞ!」

「許すとか許さないとかそんな立場なのか? それよりも俺に謝ることになるのは、ショート! お前の方だ!」

 グランデは右手をスッと挙げた。

すると四方から黒い鳥がグランデのほうに集まってきた。


カラス……!?

ブラブラ団のカラスたちだ!


「おい! 野郎共(ブラッディ・ブラック)!」

「イエス!」

イエス! ってちょっとカッコいい返事だな……

ってそれどころじゃない!


「さて、お前らが態度を改めないなら、こいつら(ブラッディ・ブラック)をけしかけるぞ! 俺の一声で、こいつらは……」

「何だよ! 騒がしいな……。ここいらへんは俺の縄張りなんだぞ!……お! ショート! ショートじゃねえか! 酒、持ってねえ?」


ピッチャーさん! ピッチャーさんがグランデの隣に現れた!


「く、臭い……今大事な所なんだよ! 邪魔するな! この酔っぱらいホームレス!」

「お前さ、パイポなんかくわえて生意気なんだよ! ほら、俺によこしな!」

ピッチャーさんが禁煙パイプを奪い取った!

「ピッチャーさん! それ! 僕にください!」

「お! よし! エースで4番の腕がうなるぜ! いくぞー!」

レーザービームの様に僕の胸元にパイプが飛んできた!

「ナイスキャ! ショート、お前なかなかやるな!」

「くそオヤジ! ふざけんな……」

「うっせえよ! くそガキ!」

ピッチャーさんはグランデの口を塞いだ。

グランデはオエ〜オエ〜と言っている……


「今がチャンスだ! うるしちゃん!……どうしよう。」

「もう! 行くよ! 私に乗って!」

うるしちゃんが巨大化した!

 僕は慌ててリュックを投げ捨てて、うるしちゃんの首につかまった。


バサッ!

飛んだ!

ブラブラ団がこちらに向かって飛んでくる!

グランデの指示がないせいで、バラバラに飛んでいる。


「うるしちゃん! どうしよう!」

「トリトン! ナイフがあるでしょ!」

あ。

腰に付けたペーパーナイフがあった。

一か八か!

 僕はナイフを手に持った。

そのままカラスの塊に突っ込んで行く。

「うおー! 近づくと怪我するよ! ほらほら!」

 僕はペーパーナイフをこれでもかというくらい振り回した。

 ブラブラ団はひるんだ。

「おい! ブラッディ・ブラック! それはペーパーナイフだ! 恐れるな!」

グランデが大声を出した。

「お前はうるさいんだよ!」

ピッチャーさんが、今度は自分の上着をグランデの顔に巻き付けた。

「ウギャーーーー!」

あれは……

あれは僕でも耐えられないと思う。


 グランデの指示を受けてブラブラ団がまとまってこちらへやってきた。

ヤバい!

「おい、カラス! 巨大化するなんて、お前もなかなかやるじゃないか! さーて。んじゃ、そろそろ俺の出番かな……」

 気がつくとイッキが僕たちの隣を飛んでいた。

「さっきの変身で一袋。もう一回で二袋分な! これで貸し借りなしだぜ! うひゃひゃは! 目をつぶってな!」

 イッキが変身を始めた。

光る炎がイッキの体にあふれてきた!


 目をつぶらなきゃ!

 目をつぶっててもまぶしいのがわかる。


「目が!目がぁーーー!」

どこかで聞いたことあるようなセリフが聞こえてきて、その後、周囲がシーンとなった。


 僕は少しずつ目を開けた。

ブラブラ団はどこに行ったのか、全員いなくなっていた。

「ショート! あいつらしっぽもないのにしっぽ巻いて逃げて行ったぜ! うひゃひゃ!」


「くそー! こうなったら!」

グランデは全裸になり、大きく息を吸った。

みるみる内に肌の色がどす黒くなり、翼としっぽが生えてきた!!!

人間じゃ……ない!

「ショートォォォォォ! ホームレスのせいで鼻の奥が痛いぞ! 光る鳥のせいで涙が止まらないぞ! お前のせいだァァァァ!」

完全に悪魔の声になっている。

「今からそっちにいくからな!」

 グランデ……いやグランデじゃない! 悪魔だ!

 悪魔が翼を広げてこちらへ飛んできた!

「テメーラ調子に乗りやがって! ざけんじゃねえぞうーーーーーーーー!!!!」

凄く大きい声で、空気が震えた。

 うるしちゃんが震えているのがお尻から伝わってくる。


「うるしちゃん! とりあえず、地面に降りよう!」

「やだ! あたしとトリトンで、コイツを倒す! どうすればいいかわからないけど、こいつを倒す! あたしやましろちゃんみたいな子を、これ以上出しちゃいけない!」

うるしちゃんは悪魔を睨んだ。

もう、やるしかない!


※作者からの余計なお世話コーナー。


禁煙パイプって聞き慣れないですよね^^;

でも「パイポ」は商品名だし……


どっちが通じやすいんでしょう^^;

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