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0010 ましろちゃんとデート。

 気がつけばすっかり寝ていた。

うるしちゃんは、もういなかった。

ボロの方を見ると電光掲示板に「ウルシサンカラ デンゴンガ アリマス」と表示されていた。

「ボロ、伝言ってなに?」

ボロはピコと言うと

「おっはー! 早速行ってきます! トリトンもバイト頑張ってねー!」

ん?

「ボロ! 漢字で表示できるの?」

「ハイ デモ カタカナノホウガ ロボットッポイカナー ト オモイマシテ」

そんな演出いらないし!

っていうか昨日のドライアイが憎らしい……

「今後は漢字とひらがなで表示してよ。その方が見やすいし」

「承知しました」

途端にロボットっぽくなくなった。

「じゃあ僕は銭湯に行ってきてそのまま出かけるから。うるしちゃんが帰ってきたら、お疲れちゃ~んって言っておいて」

「承知しました」


 家を出て階段を降りると管理人のおばさんがいた。

「ショート君。あのさ、言いづらいんだけど……」

言いづらいなんて、なんでもずけずけ言う管理人さんらしくないな。

「なんですか?」

「もし寂しかったら、私が話し相手になってあげてもいいんだよ」

「え?」

「ショート君の独り言がすごく聞こえてくるから」

ああ。

うるしちゃんの声も僕しか聞こえないし、ボロは電光掲示板だしね。

「大丈夫ですよ。今後は大きな声を出さない様に注意します」

「そうかい? 寂しかったらいつでも言うんだよ。なんてったって私はあんたのお母さんからよろしく頼みますって言われてるんだから、なんかあったら私の顔が立たなくなるよ。わかった? いつでも相談にのるからね!」

 ここぞとばかりに一気に話される……僕は適当に返事をすると自転車を出した。

 呪いのこととか相談したら、管理人さんが解決してくれるんだろうか……


 銭湯で隅々までよーく洗って、髭もきれいに剃って、3回ほど歯を磨いた。


 なるべく汗をかかないようにゆっくりと自転車をこいで、待ち合わせ場所の駅に着いた。

約束の時間まで、まだ40分もある……

 スポーツドリンクを買って日陰で休んでいると、後ろから肩をトントンと小さく叩かれた。

振り向くとましろちゃんが満面の笑みをしながら立っていた。

「トリトン君、早いねー!絶対私の方が先だと思ってたのにー!」

 か、かわいい!

ましろちゃんのかわいさに胸がキュンキュンした。

これって、もしかして……


「さあ、トリトン君はどこに私を連れて行ってくれるのかなぁ」

しまった! どこに行くか全然考えてなかった!

 僕は頭をフル回転させた。

「あのさ、ましろちゃん……。子供っぽいかもしれないけど、ちっちゃい動物園がある公園とかどう?」

それくらいしか思いつかなかった。

「えー! この近所にそんな所があるの? 行ってみたい!」

 ましろちゃんが知らない所でほっとした。


「じゃあ、私はこれの後ろに乗ればいいかな?」

自転車を指さしている。

 僕は真っ赤になりながら頷くと、自転車にまたがった。

 ましろちゃんは横向きに荷台に座ると、僕のお腹に両腕をまわした。

ましろちゃんが密着してる。

ふたつの膨らみが背中を刺激する……

自転車を走らせる前から、汗だくになった。


「大丈夫? 怖くない?」

僕はよろよろしながら自転車を操縦した。

「全然平気! トリトン君、もっと飛ばしていいよ!」

 僕はスピードを上げた。

ましろちゃんは、気持ちいいーと言った。

 道路のせいで自転車がガタガタ揺れるたびに、ましろちゃんの胸が僕の背中にこすれる。

僕も気持ちいいーと言いそうになった……


 飛ばしたせいかすぐに動物園のある公園に着いてしまった。

もう……着いてしまった。

 自転車を降りると「わくわくするなぁ」と言いながら、ましろちゃんが僕の腕にしがみついてきた。

 またもやましろちゃんの胸が!

 さっきからこんなことばかり考えてる……

僕は変態か!



「ここはね、ちっちゃい動物園だから象とかキリンとかそういう大きいのはいないんだよ」

だから入場料もタダ。

「そうみたいね。でもかわい動物がいっぱいいる~!」

 腕を組みながら、プレーリードッグやリスザルやヤギや羊など、比較的珍しくもない動物たちを、僕らは時間をかけてゆっくり眺めた。

 こんなに動物の姿をゆっくり見るなんてそうそうないなぁ……。カラスは別として……


「ちょっと暑いし、ソフトクリーム買ってくる! トリトン君も食べるよね?」

僕は頷いた。

 お金を出そうとすると、いいからと言ってましろちゃんは行ってしまった。


ふと周りを眺めるとアヒルがいる小さな池があった。

アヒルもそんなに珍しくないよな……

 あれ? 列をなして水に浮かんでいる白いアヒルの中に、一匹だけ茶色くて小さな鳥がいる……。

みにくいアヒルの子みたいだな……

 ぼんやり眺めていると茶色い鳥が僕の方に向かってきた。そして僕の目の前で、キュというような鳴き声を出した。

 ん?何か言いたいのかな……

 そんなわけないか、うるしちゃんじゃあるまいし……

と思いつつも、僕はキセルをくわえてみた。


「何か言いたいの?」

「お前、やっぱり俺の言葉がわかるのか! なんかそんな気がしたんだよ!」

マジですか!

「このキセルをくわえると、話せるようになるみたいなんだ」

「そっか! 面白いな、そのキセル! 俺の名前はイッキ。お前は?」

なんか鳥のくせに生意気だな……ま、いいか。

「僕は鈴木鳥屯(とりとん)。あだ名はショート。君はあのー……もともと人間だったの?名前もあるし……」

「はぁ? 何言ってんの? 俺はもともと鳥だし。名前はあって当然だろ! あっちのアヒルは優って名前だしな! アヒル優! うひゃひゃ!」

 なんかイライラする……


「で、イッキは僕に何が言いたかったの?」

「別にないけど? あ、でもどうせなら自慢しちゃおうかな! 俺は変身できるんだよ! うひゃひゃ!」

変身?

もしかして……

「巨大化できるとか?」

「なに言ってんの? そんなこと出来るわけないじゃん! 俺の変身はもっとすげーけどな!」

巨大化より凄いって、アレを見てないから言えるんだよ。

「おい、ショート! 知りたくないか? 俺の秘密……。もし知りたかったらそこにある一袋100円の餌を2袋買ってくれ! それで俺にくれ!」

なんか騙されてる気もするんだけど……


 僕はきっちり200円を箱の中に入れて、餌を2袋取った。

「よーし。ゆっくりだ。それを袋のままゆっくりこちらに向かって投げろ!」

お前は刑事ドラマか!

餌をゆっくりイッキに渡した。

「よし! じゃあ教えてやろう! 俺はな、こう見えて……」

「トリトン君、お待たせ! やっぱり暑いからみんなソフトクリーム食べたいんだろうね! すごい行列だったよ!」

 ましろちゃんが帰ってきた。僕は慌ててキセルを外した。

イッキの方を見ると何か話したそうだった。僕は後ろ髪を引かれる思いでその場を後にした。


※作者からの余計なお世話コーナー。


実はモデルとなっている公園がありますw

江戸川区の葛西にある行船公園という所です^^

いい公園ですよw

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