【エルザ=エインズは楽しくお遊びをする】 2
勝負にこだわり諦めようとしないファリー夫人は、新たな考えを思い付いてエルザに言う。
「エインズ夫人、もしよろしかったらダーツでもやりませんか? 面白いですよ」
「ダーツですか?」
「ええ、ここには広い遊技場もありまして、ダーツを始めとして様々なゲームが出来ますのよ」
「でも私、自信ありませんわ。ダーツってルールとか難しいでしょう?」
「大丈夫ですよ、お遊びですから。ゲームを楽しみましょう」
「そうですか? ではお遊びなら」
ファリー夫人はほくそ笑んだ。
今度こそ恥をかかせてやるわ。
結果として、そのダーツでファリー夫人はエルザに負けた。
エルザは全てのダーツを的の中心部に当てて、最高得点を叩き出したのである。
観衆は沸いていた。ファリー夫人は地団駄を踏んでいた。悔しくて悔しくて堪らないので、もう一度エルザに提案する。
「エインズ夫人、次はビリヤードなんかどうです?」
「でも私……」
「大丈夫です、お遊びですから」
「それなら……」
ファリー夫人はエルザに負けた。
ファリー夫人はどうしてもエルザに勝ちたかった。だからその後もファリー夫人は様々な勝負をエルザに仕掛けていき、しかしことごとく負けていった。
「凄いですわ!」
「流石エインズ夫人ね!」
「ありがとう皆さん、私もここまで上手くいくとは思いませんでしたわ。運が良かったのね」
観衆はエルザを褒め称え、エルザはにこにこと素直に賛辞を受け止めていた。
「キーッ! 何よ何よ何よ何でなのよ!」
ファリー夫人は金切り声で地団駄を踏み、そばの壁を蹴りつけていた。
○
エインズ邸、アイラの私室。
片手に紅茶を持ち、もう片手を頬に当てながら、エルザは心配そうな声を出していた。
「ねえ聞いて頂戴、アイラ」
「どうかしたのですか、お母様?」
「友達のファリー夫人が旦那さんと大喧嘩したらしくて離婚しちゃって、それまでお付き合いしていた方々とも疎遠になって、どこかに失踪してしまったらしいのよ」
「それは大変ですね」
「良いバイオリンも貸してくれたし、私とも一緒にダーツやビリヤードで遊んでくれた良い方でしたのに。聞いた噂では、川で発見された死体が彼女だとか、遠国で乞食や娼婦に身を落としているだとか、人知れず魔物や野盗に襲われて殺されてしまったとか、色々言われているのよ」
「それは可哀想ですね」
「心配だわ。ただの噂で、せめて生きていると良いのだけど」
アイラは静かに紅茶を飲んでいた。
(今日はアールグレイか、美味しいわね)
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