【キャロル=エインズの相談事】 2
学園長もオーナーも難しい顔をしていた。
「デリー=ドロパウト、イェール=ヤード、そこに座りなさい」
学園長が発した言葉に、イェールは即座に悪いことだと直感したが、デリーは嬉々としていた。
「学園長、さあお褒めになってくださいな。私か彼がテストで首位を取ったのでしょう」
「はあ?」
「だってそれ以外に考えられませんもの。もちろん私達は常日頃、皆に自慢出来るようなことばかりしていますが、最近の学園長に褒められることといえばテストくらいですからね」
「君は何を言っているのかね?」
「あら違いましたの? では職員室で馬鹿面して寝ていた野良猫を追い出した功績を称えてくれるのかしら?」
「!」
学園長の顔が険しくなった。
「君だったのか、私の大事な飼い猫を野外に追い出したのは。猫好きな来客が、事前に私の飼い猫を見てみたいと言っていたから連れてきていたのに……馬鹿面だと……⁉」
「「⁉」」
デリーが言い訳する。
「あ、あらそうでしたの、それはごめんあそばせ。でもそんなに大事なら職員室なんかに寝かせてないで、目を離さずにしていなさいな。短慮な学園長にも落ち度があると思いません?」
「……確かに目を離さずにいるべきだったと深く反省しているよ。まさか教師に報告や相談もせずにいきなり追い出す学生が、我が校にいたとは思っていなかったからな!」
学園長は拳を握ってぷるぷると震えていた。
オーナーが学園長に言う。
「学園長、お気持ちはお察ししますが、いまは本題を」
「…………、そうでしたな。デリー=ドロパウト、イェール=ヤード、お前達への話というのは他でもない」
学園長が二人に言った。
「お前達二人は今日付けで我が校を退学してもらう」
「「⁉」」
「もし転学したいというならいま申し出なさい。どこか知り合いの学園を紹介しよう」
「ちょちょちょ、ちょっと待ってください!」
焦った声を上げたのはイェールだった。
「何でいきなり退学なんですか⁉ 僕何も悪いことしてませんよ⁉」
「デリー=ドロパウトから聞いていないのか? 昨日、彼女はキャロル=エインズに『金輪際視界に入るな』と言ったそうだ。だからキャロル=エインズの視界に入らないように、お前達を退学させることにした」
「そんな⁉」
イェールがデリーに声を上げた。
「それは本当かい⁉ 何てことを言ってくれたんだ!」
「黙りなさい! 金しか取り柄のない小市民が!」
「っ⁉」
デリーが学園長に食って掛かった。
「そんなの横暴よ! 何で私が退学しなきゃならないの! あいつが退学すべきでしょ!」
「話はキャロル=エインズから聞いている。周りにいた学生も同じことを言っていた。滅茶苦茶を言っているのは君だろう」
「私は由緒あるドロパウト男爵家の娘よ! こんな理不尽が許されてたまるものですか! この学園にだって多額の寄付を」
「知らないのか、君は? キャロル=エインズはドロパウト男爵家なんか足元にも及ばない歴史と財産を持つエインズ公爵家だぞ。君の家の十倍以上の寄付もしてくれている」
「⁉」
「キャロル=エインズ自身も品行方正、学業優秀、皆から慕われている学生で評判も良い。我が校が彼女を退学させる理由は微塵もない。それに比べて君ときたら……」
「な、な、な、私を馬鹿にする気⁉ 分かったわ! さてはあんた買収されてるのね! あんな醜い雌豚なんかの言いなりになって! 気持ちの悪いオッサンが!」
「…………」
びきり。学園長の額に青筋が浮かび、眉がぴくぴくと痙攣した。




