【キャロル=エインズの相談事】 1
「私の彼に色目を使わないでくれないかしら?」
「…………はい?」
学園内にあるレストランで昼食を食べていたキャロルに、一人の女子学生がやってきてそう言い放った。
「……誰のことですか? そもそも貴女誰ですか?」
「まあしらばっくれちゃって。面の皮の厚いこと」
キャロルは目の前に立つ女子学生のことを本当に知らなかった。見覚えすらない。
キャロル=エインズ。アイラ=エインズの妹であり、貴族家や富裕層が通っている学園の学生である。
エインズ家は名高い公爵家ということもあり、キャロル自体は学園でそれなりに有名であった。
「他の方と人違いしておられませんか?」
「そんなはずないでしょ、私を馬鹿にする気? 私は由緒あるドロパウト男爵家の令嬢、デリー=ドロパウトなのよ!」
「はあ」
……エインズ公爵家のことは知らないんですね?
「私の付き合っている彼が貴女の方ばかり見ているのよ! 芋臭い貴女ばかりをね! どーせその間抜けな面と貧相な身体で誘惑したに違いないわ!」
「……貴女よりは豊満だとは思いますけど……」
「黙りなさい!」
容姿も貴女よりはマシだと思いますけど……。
しかしそれは言わなかった。
「そもそも、だから貴女の彼とやらは誰なんですか?」
「まだすっとぼける気! どれだけ厚顔無恥なのかしら!」
「いえ、ですから」
「私の彼はそんじょそこらの爵位持ちなんかでは到底足元にも及ばないくらいの超金持ちのヤード家の長男、イェール=ヤードなのですのよ! 貴女なんかでは釣り合うわけもない月とスッポンですわ!」
……聞いたことない。
周囲で聞いていた者達は皆こう思った……確かに月とスッポンかも。
「とにかく今後一切金輪際私と私の彼の視界に入ってこないでくれるかしら! もし視界に映ったら貴女の家諸共容赦なく制裁致しますからね!」
「えぇ……視界に入るなって、無茶苦茶な……」
「黙りなさい! 本来なら貴女なんか私と会話する権利も立場もないんだから! とにかくそういうことだから覚悟しておきなさい!」
「はあ……」
「フンッ! こんな馬鹿女の相手なんかして時間を無駄にしてしまったわ!」
捨て台詞を吐いてデリーは去っていった。
周囲の注目を集めるなか、キャロルは深い溜め息を吐いていた。
(学園長とオーナーに相談しよ……)
○
学園長室に二人の学生が呼び出されていた。昨日、キャロル=エインズに食って掛かっていたデリーと、その恋人のイェールだった。
「きっと一昨日のテストで首位になって褒められる為に呼び出されたのよ」
「そうかなぁ、僕はあんまり自信がなかったんだけどなぁ」
「何弱気になってんのよ! 貴方は高貴な私の恋人なんだからしっかりしなさい! 私に恥をかかせないでよね!」
「分かったよ……はぁ……」
そんなことを言いながら二人が学園長室に入ると、そこには学園長の他にももう一人の姿があった。学園のオーナーの姿だった。




