【レニー=ラインとグロリアは似た者同士】 2
「さっき誰かと一緒に来たの?」
小さな長方形のチョコを食べながら、アイラはグロリアに聞いていた。
アイラのそばに控えているグロリアが答える。
「レニーです。廊下の途中で会いました。お分かりでしたか」
「貴女がドアの前で止まった後、キャロルの部屋に向かう足音が聞こえたから。レニーだとは思ったけど、一応ね」
「さすがお耳がよろしいですね」
「地獄耳というべきかもね」
「ご謙遜を」
アイラは紅茶を一口飲んでから。
「でも話をしている気配はなかったわね」
「話すことはありませんでしたから」
「そう? 他の使用人は割と世間話とかしてるわよ。ジェシーとか」
「彼女は明るく、気さくな性格ですから」
「そういえば、貴女が皆と世間話しているの、あまり見たことがないわね。まあ、いつも私のそばにいるからってのもあるけど」
「話し掛けられれば、応じます。必要があれば、私からも話し掛けます」
「ふうん」
この『ふうん』は興味がないことをスルーする声音ではなく、その逆、むしろ興味を抱いた声音だった。
「さっき、レニーは話し掛けてこなかったってこと?」
「正確には、ここに来る前の廊下で話自体は少ししました。アイラ様のティータイムかと聞かれ、私が答えた後、私がキャロル様の洗濯の帰りかと尋ねて、彼女が肯定しました。それで話は終わりました」
「みじかっ」
「それで充分でしたから。レニーもそれは分かっていましたので」
「ふーん。なんか熟年夫婦みたいね。言わなくても以心伝心的な」
「ご冗談を」
アイラはまた紅茶を一口飲む。
「もしかして、レニーと知り合いだったの? この屋敷に来る前に」
「……何故そのようにお考えで?」
「何となくね」
「…………、庭師の一人がそうであったように、エインズ邸には何人か、私が見聞きしたことがあった者がいることは確かです」
「お父様が時々拾ってくるからね。野良猫を拾うみたいに。お父様的には、強い使用人が増えて防犯に役立つって思ってるんでしょうけど」
「ですが、レニーのことはエインズ邸で初めて見ましたし会いました。彼女も同様だったようです」
「ふうん」
「無論、私が気付いていないだけで、実は噂で聞いたことのある者……顔までは分からなかった者の可能性はありますが」
「確かめないの?」
「その必要はございません。いまはエインズ家を守る使用人である。それだけで充分です」
「流石ね」
アイラは納得したようにチョコを口にした。
○
街なかの道にて。
グロリアとレニーは二人並んで歩いていた。
アイラとキャロルの姿はなく、その場には二人だけだった。
「…………」
「…………」
アイラが二人におつかいを頼んだのである。
『グロリア、レニーと一緒にティータイムで食べるお菓子を買ってきて頂戴』
『お言葉ですが、ジェシーのお菓子は未だ充分に残っておりますが』
『それはそれで美味しいけどね。買ってきてほしいのは、期間限定のチョコレートよ』
『ならば私一人でも充分ですが』
『他にも色々買ってほしい物があるのよ。たまには市販の物も食べたいしね。レニーと手分けすれば、すぐに買えるでしょう?』
『…………、かしこまりました』
アイラ様は何かをお考えになっている。
グロリアはそう思ったが、尋ねることはしなかった。レニーと一緒に買いに行けば分かることだと判断した。
そしてそれはすぐに分かった。
自分達のずっと後ろの物陰から、キャロルの着ているものと思われる、地味で目立ちにくい服装がちらちらと覗いていたのだった。
レニーもすぐに気付いたらしく、小さな声で言った。
「あれはキャロル様ですね」
「ええ。おそらくアイラ様もご一緒でしょう。お二人で簡単な変装をして」
「アイラ様一人だけなら気付けなかったかもしれませんね」
「キャロル様が同行したいとせがんだのでしょう」




