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【王国内屈指の公爵家の令嬢ですが、婚約破棄される前に婚約破棄しました。元婚約者は没落したそうですが、そんなの知りません】  作者: ナロー


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【レニー=ラインとグロリアは似た者同士】 1


 レニー=ラインはキャロル=エインズの専属メイドとして仕えている。

 顔には眼鏡を掛けている。視力は別に悪くはなく、レンズに度の入っていない伊達眼鏡だった。

 エインズ邸の廊下。レニーがキャロルの洗濯した服を籠に入れて持ってキャロルの部屋に向かっていると、十字に分岐した角の先から、ティータイムに使う台車を押して来るグロリアが見えた。


「…………」

「…………」


 十字路で一瞬向かい合った二人は、挨拶も会釈も交わすことなく同じ方向に角を曲がり、廊下を並んで歩いていく。

 レニーが口を開いた。


「アイラ様はティータイムですか」

「ええ。そちらはキャロル様の洗濯ですか」

「ええ」


 それだけ話して、二人はまた黙り込む。

 長い廊下を無言のまましばらく歩いて、二人の視界の先に一つのドアが見えた。

 アイラの私室のドアだ。


「…………」

「…………」


 別れの挨拶も会釈もすることなく、グロリアはドアの前に止まり、レニーはそのまま廊下を進んで隣のキャロルの部屋へと向かっていく。

 グロリアがドアをノックした。


「グロリアです。ティータイムの品をお持ちしました」

「入りなさい」


 レニーがキャロルのドアの前に到着した頃、グロリアの姿はアイラの部屋のなかへと消えていった。


「…………」


 横目で隣室のドアが閉まるのを見届けたあと、レニーは目の前のドアをノックした。



「レニーって、グロリアさんと仲が悪いの?」


 机の前に座って本を読んでいたキャロルが、ふと気になったというように顔を向けてレニーに聞いた。

 レニーは衣服をクローゼットのなかにしまっていた。


「いいえ。どうしてそのようなことを?」

「だって、グロリアさんがいると無愛想になるから」

「私はいつも無愛想ですが」

「自分で言うそれ?」


 本を閉じて、キャロルはレニーに身体を向ける。

 読書よりも興味を持ったようだった。


「もしかしてグロリアさんのことライバルだと思ってるの? 同じメイドとして」

「…………、いいえ」

「あ、ちょっと黙った」

「……ライバルだと思っていないことは本当です。しかし確かに、意識していないと言えば嘘になります」

「つまり?」

「言葉での形容や表現は非常に至難ですね。エインズ家を守る為の同僚としては信用していますが、私個人としては気の抜けない同業者……という感じでしょうか」

「ふーん。なんか似た者同士みたいに見えるけどなあ」

「ご冗談を」


 思い付いたようにキャロルが聞いた。


「ちなみにさ、レニーとグロリアさんはどっちが強いの? 戦ったらどっちが勝つ?」

「…………、エインズ家の使用人は皆強者揃いです。そのような質問には意味がないかと」

「えー?」


 キャロルは残念そうな声を出す。

 レニーが最後に言った。


「ですが、無論、もし仮に万が一そのようなことがあっても、私は負けるつもりは一切毛頭ありませんが」




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